表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
89/152

84.帰宅と変化

 『つきの都』の滞在を終えた私達は、来た時と同じように、バスに乗って帰って来た。

 かぐちゃんは、またしても別れがたく、結構粘着質に別れの挨拶をしてくれたけど、予想よりは早く解放してもらえた。

 と言うのも、大体了輔(りょうすけ)君のお陰なんだけど。


「ほら、かぐや。瑞穂(みずほ)のメーワクになるだろ。ちゃんと見送ろうぜ」

「りょ、了輔(りょうすけ)に言われるまでもなく、分かっておりますわ。瑞穂(みずほ)様、私も色々と頑張りますので、お身体にお気を付けてくださいませ!」

「うん。ありがとねー!」


 と言った感じだった。

 いやー、感動のお別れだよね。

 それにしても、今回はちょっと楽だったね。

 大体了輔(りょうすけ)君のお陰。

 重要なので何度でも言おう。

 大体了輔(りょうすけ)君のお陰。

 ハイ、ここテストに出るよー。


 そんな風にふざけたことを考えつつ、家へと帰って来た訳です。

 ここで私は、青島(あおしま)家に戻るところを、普通に赤河(あこう)家の扉を開いた。

 え?将来仕えるかもしれない家に対して不敬だ?

 いやいや、ここは従姉妹としての振舞いだから許されるよ。

 そんなもんだよ。

 文句のあるヤツ、伯父さんの前に突き出すぞこの野郎!


「ただいま!!」

「おー、お帰り」


 バン!と勢い良く扉を開いて、家に入る。

 すると、(ほむら)の声が耳に入って来た。

 私は、お前ん家じゃねーだろ!というツッコミが来ると覚悟していたから、あれおかしいな?と思ったけど、とりあえずスルーする。


「会いたかったよー、(ほむら)ァー!!」

「おっと」


 ガバーッと勢い良く抱きつく。

 いつもなら、くっつくなー、とか激しい突っ込みと共に引きはがされる。

 なのに、おかしなことに、(ほむら)は嫌がらない。

 それどころか、良い子良い子とばかりに頭を撫でて来た。


「そうだな。俺も会いたかったよ瑞穂(みずほ)

「ファッ!?」


 挙句の果てに、イケメンオーラ全開で、女の子の一人や二人や複数人簡単に落とせちゃいそうな甘い笑みを浮かべている。

 ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って!

 誰このイケメン!?

 私は、この世の終わりみたいな絶望的な表情を浮かべた。と思う。

 小学四年生が何でこんな色気たっぷりな声しとるんだ!!


「ほ、ほほほ、(ほむら)!?一体全体何をどうしてどうなったの!?」

「お前テンパり過ぎ。旅行に行って頭でもおかしくなったか?」

「ああっ、ちょっといつも通り!って、ちっがーう!!」


 ノリツッコミなんて私のやることじゃない!

 テンパり過ぎて何を言っているのかやっているのか、ワケが分からなくなって来たよ。


 いやいや、ここは一つお茶でも飲んで落ち着こうではないか。

 出かける前まで、(ほむら)めちゃめちゃ落ち込んでたよね。

 こじらせまくって、一緒に旅行行かない、とすら言い出したよね。

 あんなに負のオーラ全開だったのに…どうしてこうなった!?


 私を優しく抱き締めるイケメンは、私の知る(ほむら)じゃないぞ!

 (ほむら)はあれだよ。

 チェリーボーイだから。

 従姉で精神的おばさんな私なんかにすら照れるなんていう純情ボーイだから。

 こ、こんな余裕な笑みを浮かべるような男じゃないから!!


「ほら、お茶でも飲んで落ち着けよ」

「わぁい、ありがとう!って、だからちっがーう!!」


 スマートに私をソファーに座らせて、手際良く湯呑を渡してくれる(ほむら)

 一応飲むけど。飲みますけど!!

 ……あ、美味しい。

 流石はハイスペックイケメン。

 ……だから違う!!私まで流されてどうするんだ!?


(ほむら)どうしたの?旅行に行く前まで、すっごい落ち込んでたでしょ?」

「そうか。やっぱそう見えてたか。…恥ずかしいな」

「はい、嘘乙!私の知る(ほむら)は、そんな余裕な態度じゃないですから!貴様、誰だ!私はそんなイケメンに育てた覚えはないぞ!」

「お前に育てられた覚えはねーよ」


 ポンッと頭を叩かれる。

 けど違う!

 そんな優しげな笑顔で叩かないで!

 あの心底ウゼェ!って顔で叩いて!

 いや、叩かれるのはイヤだけど!!


「っつーか、言ってること支離滅裂過ぎんだろ瑞穂(みずほ)…。お前、真面目に頭でも打って来たんじゃないのか?」

「寧ろ頭打ったの(ほむら)でしょー!どうしたの、そんなにカッコ良くなってー!」

「何だその文句は…。お前さ、俺の事貶したいのか?褒めたいのか?」

「ドッチモー!!」

「…そういうところはいつも通りだな、お前」


 そう、このリアクションは何かCMで聞き覚えのある…って、私のバカ!

 何でこういうパスを貰うとボケずにはいられないの!


「カッコ良くなったかは分かんないけど」

(ほむら)?」

「俺なりに、決着つけたんだよ。気にすんな、バーカ」

「ううぅぅ……」


 だから何で頭撫でるのー!

 何で一人だけスッキリした顔してるのー!

 私はスッキリしてないんですけど!?

 全然してないんですけど!!?


「ほら、アホみたいに笑って報告しろ。どうせ色々やらかして来たんだろ?」

(ほむら)の中の私像がヒド過ぎる件について!!」


 くそう。

 こやつ、詳細は説明しないつもりだな…。

 もうここは、私は大人になって、スルーしてあげるのが良いかもしれない。

 まぁね!悪化してないからね!快方に向かってるからね!

 私に不満はありませんよ。

 ええ、ありませんともさ!


「ただいま戻りましたよーっと」

「お嬢様、荷物を片付けて参りました」

晴臣(はるおみ)晴雅(はるまさ)。おかえりー」


 仕方ないので、旅行中に起きた出来事を説明しようとした時、双子が来た。

 ここは、漫画の話も含まれるし、後回しにしようと思って双子の方を向く。

 すると、双子が妙に怪訝そうな表情をしていることに気付いた。

 視線の先には(ほむら)

 …あ、やっぱり気になるよね。


「若、何かありました?お兄さんに話してくれますよね?ん?」

「おい!何でガンつけて来るんだよ!?」

「いやいや、だっておかしいでしょ。この世の終わりみたいに落ち込んでた若が、旅行から戻ってきたらすっかり元気どころか、前以上に元気だなんて。何かあったに決まってますって」

「はぁ?何もねーし」


 こればかりは(おみ)君に同感だ。

 絶対何かあったよ、(ほむら)

 イベントか?恋愛イベントなのか?

 くぅ…スルーを決めたとは言え、気になる!!


(ほむら)様。お言葉ですが、僕も理由を伺いたく存じます」

「は?晴雅(はるまさ)まで?珍しいな…そんな気になるものか?」

「はい。(ほむら)様の心境の変化は、旦那様にも強い影響を及ぼしますが…僕としては、お嬢様への影響を心配しておりますので、出来れば知っておきたいのです」

「…そんなにか?」

「ええ。恐らく、(ほむら)様のお考え以上に」

「……そうか!」


 あれ、ごめんちょっと、何で(ほむら)嬉しそうなの?

 私に影響力があってそんな嬉しいの?

 残念だったな!そんな良いものじゃないですから!

 (ほむら)が落ち込むと、漏れなく私も落ち込むとか、処理落ち必至な面倒事になるから喜ぶようなことじゃないでしょ。


「って言っても、本当に何もなかったからなぁ。…強いて言うなら、麻子(あさこ)さんの話聞いて、ちょっと考え方の方向転換が出来たくらいか…」

麻子(あさこ)ちゃんの!?」

「……十村(とむら)麻子(あさこ)の……」


 あっ、今度は(おみ)君から負のオーラが出て来た。

 そう言えば、少し前というか結構前というか、何か色々あったよね、二人。

 なんという板挟み!

 でも私、麻子(あさこ)ちゃんの味方だから。


「だからごめん、(ほむら)。私、(ほむら)の恋路応援出来そうにないや…」

「お前の耳、もしかして腐ってるのか?全然そういう話じゃないからな?」


 あっ、(ほむら)が笑顔でキレてる。

 良かったー。

 ちゃんと(ほむら)だー。


「…お前、失礼な納得の仕方してないか?」

「き、きき、キノセイダヨ!」

「はぁ…お前って女は……」


 何か、今までとちょっと変わった様な気もするけど、でも、やっぱり(ほむら)とのやり取りは変わらない。

 これがないと、今の私の人生って感じがしないよね!


「ま、とにかくそれだけだよ」

「分かりました。僕もここで納得しておきましょう。……お嬢様に悪影響がある訳ではなさそうなので」

「…晴雅(はるまさ)、お前今小声で怖いこと言わなかったか?おい、瑞穂(みずほ)に悪影響出たらどうする気だったんだ。……いや、やっぱ良い。言わなくて良い」


 (まさ)君のセ○ムっぷりが板に付き過ぎてて怖いよ!

 いや、ありがたいんだけどね。


「俺もこれ以上突っ込みませんけど…若。あんまりあの人と会わない方が良いと思いますよ?存在自体悪影響だし」

「…それ、晴臣(はるおみ)にとってだけだろ…。それに、俺は何かない限り、あんまり麻子(あさこ)さんと会う機会は少ないよ」

「ま、そーでしょーけどね」


 (おみ)君、麻子(あさこ)ちゃんのこと嫌い過ぎィィ!

 この二人の間の断崖絶壁を、私はどう埋めたら良いんだろう。

 …うん、分かんないよね!

 とりあえず、麻子(あさこ)ちゃんガンバ!


「何でも良いけど、お前らも部屋に戻って休んだらどうだ?移動時間ばっかで疲れてるだろ?」

「僕はお嬢様がお休みになるまでお付き合い致します」

「俺もー」

「よし、瑞穂(みずほ)。お前早急に部屋戻れ」

「ええ、酷い!これからお土産話が(ほむら)には待っているのに!」


 何と言うことでしょう。

 何を話すでもなく、部屋に戻れと言われてしまいました。

 ガッデム!

 私のこの内に宿る、あり余るほどのお土産話をどうしたら良いのか!

 ショックを受ける私に、(ほむら)は笑って言った。


「部屋まで付き添ってってやるから。話ならそこで良いだろ?」


 ………何このイケメーーン!!


 お持ち帰りされちゃうよ、これ。

 送り狼パターンだよ、これ。

 全世界の美少女たちに告ぐ!

 ここに天然美少女キラーがいるぞぉぉぉ!!


 …あ、私は美少女じゃないからノーカンな。

 従姉ですから。


「うん!じゃあ私の部屋で話すー!」

「おし、さっさと行くぞ」

「あっ、こら若!抜け駆けはズルイですよー!」

「そういうんじゃないから、休んで来いよ」

「俺も行きますから」

「それならば僕も」

「結局一緒じゃねーか!」


 何か分からないけど、最終的に皆一緒に私の部屋に集まった。

 これ、場所が変わっただけで、何も変わってないよね。

 まぁ私は、楽しいから良いんだけどね!


 にしても、旅行から帰って来たら、暗い雰囲気がなくなってたなんて。

 旅行サイコー!!

 もしまた(ほむら)が落ち込んだら、旅行に行くとしよう。


 勿論、今度は一緒にね!!

焔くんは元からイケメンですよ、瑞穂さん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ