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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
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76.波乱フラグ?

瑞穂(みずほ)よ。本当にすまんな…」

「ねーさま!」

「あねうえ!」

「え、突然何で謝られてるんですか??」


 夏休みに突入しました。

 現状を説明すると…まだ(ほむら)の元気がありません。

 見守ると決めた以上口出しは無用かなー、と思いつつ、事あるごとに声をかけてはいるんだけど、どうやら無駄らしく、声をかけた瞬間は返事をしてくれるけど、その後劇的に元気になる、という事もなく、今日まで来ている。


 私まで落ち込んでいても仕方ないな、と思い直して、とりあえず毎日を元気に生きている訳だけれど、まぁ物足りない物足りない。

 一年以上続いたら流石に怒ろうかなぁ、と思いはじめた今日この頃。


 急に伯父さんがしょんぼりした感じで謝って来た。

 動揺する私に、天使達が突撃して来るのを軽く抱き止めつつ、視線は伯父さんに釘付けだ。

 勿論、伯父さんがイケメンだからじゃないよ。

 伯父さんは確かにイケメン…イケてるオジ様だけど、そうじゃなくて、あの何をやるにしても楽しそうで自身に満ち溢れてるゴーイングマイウェイの権化こと、赤河(あこう)家当主の緋王(ひおう)様とは思えない程しょんぼりしているからだ。


 一体何の天変地異だと思って、反射的に一瞬外を確認した私、悪くないと思う。

 伯父さんの後ろに立つお父さんも、何かちょっと納得したように頷いてたし。

 私、悪くない。


 伯父さんが謝るって、何の冗談だ。

 もしかして私、何かマズイ事でもしでかしてただろうか。

 思い出せないんだけど。

 首を傾げていると、お父さんが見かねてフォローに入ってくれた。


「失礼ながら緋王(ひおう)様。それでは何の事を仰っているか、瑞穂(みずほ)には分からないかと思われますので、もう少し丁寧な説明をお願い申し上げます」

「む、そうか。…いや、そうだな。本当にすまん……」

「い、いえ…」


 本当に、何でこんなにヘコんでいるんだろうか。

 ちょっと怖いわ。

 何、実は赤河(あこう)グループ存続の危機とか?

 いや、それだったらお父さんの顔色も悪いよね。

 と言うか、お父さんが報告して来るか。

 それに、赤河(あこう)グループが潰れた程度で、うちが路頭に迷う気がしないし。

 見ろようちのお父さんを!天才だぞ!!


「ねーさま、おんまさんやってー」

「あねうえ、あにうえ、ゲンキないの。おじうえもガッカリ」

「はい、仄火(ほのか)様後でお馬さんやりましょうね。…で。瑞貴(みずき)、それ本当?」

「はいっ」

「おんまさんー!!」

「よしよし、ちょっと待っててくださいねー」


 あらやだ、うちの弟天才じゃない?

 うちの家系は天才か。そうか。

 あっ、仄火(ほのか)ちゃんをディスってるんじゃないよ。

 仄火(ほのか)ちゃんには、溢れ出るお嬢様オーラという素晴らしい才能があるから。

 かーわいいんですよ、これが。


 しまった、また話が逸れてしまった。

 瑞貴(みずき)の話の内容の方が重要だよね。

 若干二歳程度の子供の話をどこまで信じるか、という問題はあるけど、うちの弟天才ですから。

 ありのまま信じて良いだろう。

 つまり、(ほむら)が元気ないのがとうとう伯父さんにも伝染した、と。


 ……(ほむら)ぁぁ!!流石に怒るぞ!!


「いえ、瑞穂(みずほ)。正確にはそうではありません」

「え?」

緋王(ひおう)様は、(ほむら)様にすげなくされた事に対して、消沈しておいでなのです」


 はい、お父さんの訂正が入りました。

 これは、お父さんに心を読まれた事への突っ込みを入れるべきか。

 それとも、伯父さんのメンタルの弱さに突っ込みを入れるべきか。


「ええと…本当ですか?旦那様」

「うう…瑞穂(みずほ)までそっけいない…」

「え!?」

緋王(ひおう)様。瑞穂(みずほ)はいつも旦那様、と呼んでおりますよ」

「俺、伯父さんだよ?」

「存じておりますが、娘は、私の立場を慮っているのです」

瑞穂(みずほ)!もう許すどころかお願いだ!伯父さんって呼んで!?」

「ええええ!?」


 伯父さんご乱心!!

 私は思わず目を回してしまう。

 いやいや、私これどう対処したら良いの!?


「ひ、お、う、さ、ま?」

「ひぃっ」


 そう思ってたら、地を這うような修羅の…お父さんの声が。

 流石の伯父さんも、マジ怒のお父さんは怖いらしく、黙った。

 ただ、膝を抱えて廊下の隅でのの字を書き始めたんだけど…良いんだろうか。


「とーさま、おうまさんっ!!」

「すごいすごい!」

「いや、そういうつもりでしゃがんだ訳じゃないと思うんだけど…」


 追い打ちをかけるように、仄火(ほのか)ちゃんが伯父さんの背中に飛び乗って行ったんだけれども…大丈夫だろうか。

 横で囃し立ててるマイブラザーよ。

 ヤバそうなら止めて差し上げなさいね。

 私はスルーするよ。


「折角まとまって取れた夏休みを、緋王(ひおう)様は楽しみにしてらっしゃった」

「あ、はい」


 ふと、お父さんがしんみり語り出す。

 何の話って…こうなった経緯って事ですよね。

 私はとうとう頭を叩かれ始めた伯父さんからそっと視線を逸らす。

 それから、お父さんに向き直った。


緋王(ひおう)様が、ご家族と過ごされる時間を何よりも大切にしてらっしゃる事を、瑞穂(みずほ)は理解していますよね?」

「勿論です。とても嬉しい事です」

「私もそう思うのですが…それが上手く(ほむら)様に伝わっていないようでしてね。…いえ、(ほむら)様も分かってはいらっしゃるのでしょうが、悩みが深すぎるのやも…」


 そう言うと、お父さんは(ほむら)の部屋の方向を見て溜息をつく。

 うん。何となく話は見えて来たかな?


「つまり、夏休みに家族で旅行に行こうと誘ったら、断られたんですね?」

「その通りです」


 伯父さん…。

 息子に誘いを断られたからって、そこまでヘコむのか…。

 ちょっと今まで以上に親しみを感じるわ。

 何その可愛い感じ。

 普通金持ちって、もっと冷たいものじゃない?

 ……金持ちっぽい独特センスの持ち主ではあるけどさ。


瑞穂(みずほ)!」

「わっ、はい!」


 そんな事を思っていたら、唐突に復活した伯父さんが、ガバと肩を掴んで来た。

 ちょっと怖いわ。

 何だこの勢い。目とかマジだし。


瑞穂(みずほ)は一緒に行ってくれるよな!?習い事が多かろうと宿題が多かろうと、問題などないよな!?」

「そ、そうですね。過剰に課題を抱えてる訳ではありませんし」

「家族で行く旅行の方が家で一人いるより良いよな!?」

「そりゃそうですね。一人なんてつまらないですし」

「良かった…!!」


 何か本気で嬉しそうだ。

 泣きそう…ってか、あれ、伯父さん泣いてない??

 そんなショックだったの!?

 いや、私も(ほむら)につれなくされて傷付いてる面子の一人だとは思ってたけど、伯父さん…貴方には勝てませんぜ…。

 …勝てなくて良いけど。


「それじゃあ、明日から旅行だぞう!(ほむら)なんか知るか!!俺達だけで楽しんでやるぞー!」

「とーさま、おうまさんもっとーっ」

「みじゅきは、あねうえといたい!」


 足に張り付いて来る瑞貴(みずき)の頭を撫で回しながら、伯父さんの変な所に入ったテンションに、本気でドン引く。

 あのテンションで来られたら、通常状態でも思わず断っちゃってたかもしれないね、(ほむら)の性格なら。


「あ、そうだ。父様、それで旅行先はどちらなんでしょうか?」

「ああ、言っていませんでしたね」


 お父さんは、若干苦笑気味に答えてくれる。


「つきの都ですよ」


 …………。


 ああ、これさ…通常状態でも思わず断っちゃってたかもな。

 うん。


 (ほむら)、お前まさか…かぐちゃんを避けたくて断ったんじゃなかろうな!?

 もしそうならズルイ!!

 ちょっと私も避けたいかもしれない!!

 やっぱり今からでも断って……。


「あねうえ、みじゅきねー、たのしみですっ」

「うん。私もすっごく楽しみ!!」


 無理だね!!

 天使をガッカリさせるとか、マジムリ!!

 ふっ…仕方あるまい。

 大人な私に感謝しろよ、(ほむら)


 しっかりきっちりかぐちゃんに…。

 (ほむら)がイケメンになってるよってプッシュして来てあげるからね。

 待ってろよー!!


Q:焔くんは行き先を知ってて断ったんですか?

A:濡れ衣だ!!

それどころじゃないので、行き先云々気付いてないです。

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