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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
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75.悩みは続く

「ねぇ、みずほ。あの鬱陶しいの、何とかしてくんない?超ウザいんですけど」

「顔を合わせると同時になんと辛辣な…!!」


 ある日のお昼休み。

 ご飯を食べ終えると、(ほむら)の様子が心配だった私は、隣のクラスへやって来た。

 ずーっと落ち込んでる(ほむら)だけど、もしかしたら教室では元気にしてるかな?なんていう願望もあったんだけど、どうやら叶わなかったようだ。


 扉に手をかけようとした瞬間、中から急に扉が開いたから、吃驚して目を瞬いていると、先に中から出てこようとしていたさっちゃんが私に気付いて、開口一番になかなかの言葉のパンチをかましてきた。


 これで気のせいだった、と判断する程ドリーマーではないよ、私は。


 半ば溜息をつきながら教室を覗き込むと、元気付けようとしているらしく、ちーちゃんとゆーちゃんが、周りから一生懸命話しかけている。

 効果は薄い様子で、無視…とまではいかないけど、いつもみたいにテンション高く乗ってはいない。

 これは…予想以上に大ダメージを負っているようだ。

 マジで何を気にしてるんだ。


 後ろから、私に気を遣ってついて来てくれた委員長が教室を覗き込んで眉を顰めて、はぁ、と軽く溜息をつく。

 ああ、委員長から見ても心配ですか。ですよね。


 私は、見守るだけというのは、こんなにも辛いものなのかと、精神年齢的にうん十年生きて来て初めて知った、と内心で肩を落とす。

 知らなきゃ良かった、とも思わないものの、知る事が出来て嬉しいような感情でもないから、なんとも言えない、複雑な気持ちだ。


「あれ、いつから?」

「四年生に上がり立ての時はそうでもなかったよ。多分、ここ最近だと思うけど、なんかどんどん悪化して来てるっぽいんだよね。とうとう厭味も流すようになって来ちゃってるし、つまんない上にウザい」

「あ、普通に厭味とか言ってたんだね、さっちゃん…」


 落ち込んでる相手に対して厭味って…流石やでぇ…。

 と、まぁそれはともかくとして、厭味にすら反応しないって、相当に重傷だな。

 も、もしかして、恋煩い!?ドキッ、みたいな事も考えたけど、(ほむら)の落ち込み具合から見て、そうじゃないっぽいんだよね。

 うっとり、って感じじゃない。

 どちらかと言えば、ズーン、ってただひたすらに暗いのだ。


「委員長としての仕事とかは大丈夫?迷惑かけてない?」

「あ、それは平気。テストも成績が下がる訳でもないんだよ。天才ってヤツは皆そうなのかね。厭味なヤツだよ。あはは」

「…天才、ね」


 委員長が、鼻で笑う感じで(ほむら)を見る。

 セリフと雰囲気だけで捉えると、馬鹿じゃねーの、ってめっちゃ下に見てるっぽい感じだけど、委員長の場合違うんだよね。

 大分覚えて来た、委員長の本心の法則から紐解くと、天才って言われる人って、結構周りから期待をかけられたりするけど大丈夫なのかな、心配だな、となる。

 どうだ、我が友は優しかろう。

 顔はめっちゃ怖いけどね。綺麗過ぎて。


「うぅーん…ここで私が出てっても意味ないだろうなぁ…」

「何でよ。赤河(あこう)、みずほにベッタリじゃん。アタシが言うより効きそうだけど?」

「その分、既に家でチャレンジしてるって事なんだよねー」


 仲が良いように見えているのは嬉しい限りだけど、そう簡単に行くんだったら、とっくの昔に(ほむら)は元気を取り戻している。

 悪化の一途を辿っている、という事はそういう事なのだ。


「ああ、そりゃそうか。じゃ、案外よーすけ辺りが元気づけた方が効果あったりしてね。行ってみる?」

「……俺に押しつけるな」


 ぽん、と軽く手を打ったさっちゃんは、チラと委員長に視線を向ける。

 そして、何となくといった様子で提案するが、委員長は嫌そうに目を細めた。

 これは…委員長的には、どういう意図だ?


「そんな心配しなくても、赤河(あこう)って結構単純だし、もうよーすけの事フツーに友達だと思ってるだろうから、声かけてもへーきだと思うよ?」


 ああ、そう言う。

 つまり、そこまで話した事がない自分が行っても平気だろうか、って心配してたという事かな。

 流石幼馴染。良くあれだけの言葉で理解出来るな。

 私は、感心しつつ頷いた。


「……そうか?」

「それは私もそうだと思う。(ほむら)もああ見えて心広いしね」

青島(あおしま)が言うなら、分かった」

「あははー。相変わらずよーすけの中のアタシの評価がサイテー過ぎてウケる」

「いやいや、そこはウケる所じゃなくないですか、さっちゃんさん…?」


 …この幼馴染の仲の良さを、どの位置で理解したら良いのか分からん。

 悪くはない、って思ってれば良いのか?

 ううーん。


「ああ、瑞穂(みずほ)ちゃん!焔くんのテンションが低過ぎてもうイヤー!助けて!!」

「ごめん…俺じゃ力になれないみたいで……」

「二人共…」


 どうやら諦めたらしい、ちーちゃんとゆーちゃんが、しょんぼりとしながら駆け寄って来た。

 私は二人の頭を撫でてあげながら感謝の意を伝える。


 二人は良くやってくれたよ。

 ああ、やってくれたさ。

 ただちょっと…難易度が高かっただけだよ。

 シオリとか言う名前の幼馴染くらいにな……。

 あれは条件が厳し過ぎだったよ。無理だよ。

 主人公どんな超人にしなきゃいけないんだよ。


 ……って、私は何の話をしてるんだ。

 前世にやってたゲームの話をしてどうするんだ。

 我に返れ!!


「いやー、うちの(ほむら)がごめんね」

「友達だし、気にしなくて良いよ」


 ゆーちゃんが良い子過ぎて泣ける。

 何だニコッて。

 誰だ、ゆーちゃんがイケメンじゃないって言ったヤツは。

 ゆーちゃんは精神的イケメンなんだよ!!

 思わず抱きついてしまった私を許してください。


「…どうする?俺が行ってみるか?無駄だとは思うが」

「やってみなきゃ分かんないっしょ。ね、みずほ」

「うん…お願いしても良い?」

「…了解」


 コクンと頷いた委員長は、スタスタと(ほむら)の方へ歩み寄って行く。

 うーん、やっぱり話し掛けられれば答えるんだよな、一応。

 だからこそ、余計に解決策が見つけにくいって言うかなんだけど。


「本当に(ほむら)くんってバカよね!」

「え、急にどうしたの、ちーちゃん!?」


 ぷんすか、とでも言う感じでほっぺを膨らませて怒るちーちゃん。

 あら、可愛い。

 普段ならよしよししてる所だけど、グッと抑える。

 私だって空気は読めますよ。ええ。

 え?ゆーちゃんに抱きついたのはどこの誰かって?

 さぁ?誰ですかね。私は知りませんよ。


「悩んでるなら、スナオに言えば手伝ってあげるのに。ぜーんぜん言わないんだもん。カッコつけてるだけよ、あんなの」

「カッコつけ、ね。あはは……何かそれっぽい…」


 悩んでる内容は分からないけど、ちーちゃんの言う事に一理ある気もする。

 悩んでる内容が、他人から見たら取るに足らないような事で、そんな事で悩んでる自分自身が情けない、とか?

 超思ってそう。


「でもねー、男なんて格好付けてないと生きられない生き物みたいなもんでしょ。それを言ったらかわいそーなんじゃないの?ねぇ、風間(かざま)クン」

「えっ、オレ!?う、うーん。良く分かんないけど、悩んでる事は…なかなか言い出せないかな。恥ずかしいし…」

「何よそれ。グダグダ悩んでる方が恥ずかしいじゃない!」

「でもなぁ…」


 ちーちゃんの勢いに、ゆーちゃんタジタジ。

 こう言う所って、女子強いよね。

 見ててホッコリする。

 て言うか、さっちゃんが何か悟ってるみたいな事言ってるんだけど、さっちゃんは普通に小学四年生だよね!?

 転生して来たとか、前世の記憶があるとかじゃないよね!?

 何か凄い大人なんですけど…。


「男のプライド…沽券ってヤツなんじゃない?」

「むぅー…明佳(さやか)ちゃんの言う事、私よく良く分かんない」

小田原(おだわら)サンはそれでいーと思うよ?」

「そうなの?」

「え、何で?」


 ニッと怪しげに笑うさっちゃんに、思わず顔が引きつりそうになる。

 でも思わず理由を聞いてしまうのは何故だろう。


「だって、小田原(おだわら)サンの発言の影響って大きいんだもん。見てて凄く面白い」

「??」

「うわぁ……」

「面白がってないで止めてくれよ…」


 あっ…(察し)というヤツである。

 ちーちゃんの発言って、純粋なせいか時々蜂の一刺しみたいな威力を持つから。

 それを食らった人が、このクラスにもいるんだろう。

 ゆーちゃんも顔が引きつってる辺り、目撃したか食らったかしたんだろう。

 ご愁傷様です。


 私も勿論食らった事あるよ。

 そう、あれは美術室まで遊びに来てくれた日の事…。

 私の絵を見てひと言。


 すっごい下手だn(ry


 今思い出しても泣ける。

 忘れよう。


「あ、お帰りよーすけ」

「…やはり、無理だった」

「そっかぁ…」


 意味も無く黒歴史と言うか、辛い歴史と言うかを掘り起こしていたら、委員長が申し訳なさそうに帰って来た。

 傍から見れば、俺にこんなつまらない仕事を押しつけるんじゃねぇ!みたいな顔だけど、いえいえ、あれは申し訳なさそうな顔ですよ。

 でも、何と言うか予想の出来た結末だ。

 仕方あるまい。

 やっぱり、時間が解決してくれるのを待つ?

 うーん…難しい。


「あー、まだしばらくアレが続くのか。マジで鬱陶しいんだけど」

「…我慢しろ、明佳(さやか)

「出来る限り、早めに対処してよねーみずほ」

「私に出来るようなら、勿論頑張るけどね」


 私も習い事に忙しい身だ。

 時間がまったくない、と言う訳でもないけれど、(ほむら)の習い事もちょくちょく増えて来ている中で、ダラダラした時間は貴重だ。

 真剣に向き合えそうなタイミングは意外と少ない。


「私も頑張るから、悠馬(ゆうま)明佳(さやか)ちゃんも、クラスメートとして頑張ろうね!」

「うん。俺も、早く(ほむら)には元気になって欲しいから」

「ま、ほどほどにね」

「三人とも、お願いね」


 そう言うと、丁度チャイムが鳴ったから自分の教室へと戻る。

 戻りがてら、委員長がもう一度申し訳なさそうに謝って来てくれたから、気にしなくて良いよと返す。


 うーむ。

 結構周りの皆に心配をかけているな。

 ここはひとつ、何とかしないといけないぞ!

 と、分かっているのに解決法は思いつかず。

 はぁ…難しい問題だなぁ。


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