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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(四年生)
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69.成長?

瑞穂(みずほ)ちゃん、おはよう!むかえに来たよっ」

「あれ?お、おはよう。どうしたの、ゆーちゃん??」

「ん、今の声悠馬(ゆうま)か?今名前で呼んだ??」


 さーて、新学期だし気合い入れていきますか!

 なんて思いながらランドセルを背負って赤河(あこう)家の方に行ったら、違和感のある呼ばれ方をして、吃驚して振り向いたら、聞き間違えでも何でもなく、そこにはゆーちゃんが立っていた。

 丁度家から出て来た(ほむら)も、驚きからか目を瞬いている。


 そりゃ驚くのも無理ないと思う。

 ゆーちゃんは、私の事をみーちゃん、と呼んでいた。

 そう呼んでくれるのはゆーちゃんだけだし、可愛い可愛いと思っていたのに、突然の呼び名変更。

 なんかちょっとショックだ。


「うんっ。僕も…じゃない、オレも、もう四年生で大人だから、そんな子供っぽい呼び方はしないことにしたんだっ」


 ドヤ顔可愛い…じゃない。

 えぇー…ゆーちゃん、もうみーちゃんって呼んでくれないの?

 なんだか残念だ。

 誰だそんな入れ知恵をしたのは。


「そうだよねー。悠馬(ゆうま)くんだって、もう大人だもんねー」

「ああー!臣兄(おみにい)頭なでないでよっ!子供扱いだー」

「あはは。俺から見たらまだ子供だよ」

「むううー!」

「…あまりからかってやるな、晴臣(はるおみ)


 よしよし、というよりはグシャグシャとゆーちゃんの頭を撫でる(おみ)君。

 これが成長というものか。

 うーん、みーちゃんみーちゃんって、後ろをチョロチョロついてきたり、おててつないでーって、キラキラした目で見てくれる事も、もうないんだろうか。

 くっ、胸が痛い!

 なんて残酷な運命なんだ!!


「痛い!(ほむら)、何で今殴ったの!?」

「何か今、すげー鬱陶しい事考えてる気がした」

「理不尽な理由!」

「合ってるだろ?」

「……」


 とりあえず、そっと目を逸らしておく。

 いやいや、別にやましい所なんて微塵もないですがね?

 私は大人だからね?

 言い争いをせずに、勝ちを譲ってやろうってだけなんですよ。

 だからニヤニヤしてこっちを見るんじゃない、(ほむら)


「こら、(ほむら)!女の子の頭を叩いたらダメなんだぞ!」

「っ…お、俺の呼び方も変えるのか。てか、何で俺だけ呼び捨てなんだよ」

「だって(ほむら)だってオレの事悠馬(ゆうま)って呼ぶじゃん」

「そりゃ、まぁな」

「だったら、ぼ…オレもそう呼ぶんだ!だって大人だから!」

「そうか。…ま、好きにすりゃ良いんじゃねーの?」

「えへへ」


 えへへ、とか何それ可愛い。

 呼び方とかだけ変えても大人って訳じゃないんだけど、そう思ってるゆーちゃんが可愛くて辛い。

 撫でたらダメ?ねぇダメ??

 私は、思わず両手を広げた。


「カモン、ゆーちゃん!」

「?うんっ瑞穂(みずほ)ちゃん!」

「ぎゅー!!」

「あはは、ぎゅーっ」


 ゆーちゃん的に、抱き締めるのはアリだったらしい。

 私は思い切りよしよしする。

 まだ私より小さいゆーちゃんは、抱きしめやすくて良い。

 (ほむら)はねー…小学生のクセに成長早いから。

 私も背は伸びてるけど、追いつける気がしない。悔しい。


「ふふ、くすぐったいよー瑞穂(みずほ)ちゃん」

「あー、悠馬(ゆうま)くんズルイぞ。おにーさんも仲間に入れて欲しいな?」


 何故か、良い笑顔で両手を広げる(おみ)君。

 ちょいちょいお兄さんや。

 撫でてもらう立場みたいに言ってるけど、やるとして逆じゃね?


臣兄(おみにい)はダメー。雅兄(まさにい)なら良いよ」

「…僕か?」

「え、何で俺はダメなの?」

「んー。何となく」

「…日ごろの行いだな」


 サラッと頷く(まさ)君ひどす。

 でもまぁ、(おみ)君は日ごろからスキンシップ過多だしね。

 仕方ないのかな。


「えぇー。じゃあ若は?」

(ほむら)もダメー」

「俺は要らないから。つーか、抱きつぶすなよ瑞穂(みずほ)ー」

「力加減くらい分かってらぁ!」


 と言うか、マジで(ほむら)はツンデレだなー。

 抱き締められなくても良いーとか言ってるけど、いざ抱き締められると嬉しそうなのを、お姉さんは知っているんですよ、くふふ。


「痛い!だからどうして(ほむら)の愛は激しいの!」

「愛じゃねぇ!って言うか、やっぱ余計な事考えてやがったな!」

「ああ!ダメだよ、(ほむら)瑞穂(みずほ)ちゃん、大丈夫?」

「うう…ゆーちゃんは優しいねぇ…」

「何でちょっとババァみたいな言い方してんだよ…」

「お嬢うまーい!」

「確かに、お上手ですね」


 …何故褒める!!

 誰か突っ込んで!!

 ボケですから。今のボケですから!


「めーん!!」

「いたっ!」

「うわっ、な、何だ!?」

「おっとキャーッチ」

「むっ」

「え、なになに??」


 可愛い声が響いたと思ったら、ゆーちゃんと(ほむら)が頭を抱えた。

 ふっと見ると、細長く丸められた広告を剣のように構えたちーちゃんと、それを受け止めている(おみ)君が視界に入って来る。


「ちょっと!大人しく叩かれなさいよ、晴臣(はるおみ)さん!」

「イヤだよ、理由もなく叩かれるなんて。…お嬢ならいつでも歓迎ですけどね!」

「…気持ち悪いぞ、晴臣(はるおみ)

「えぇー、本音なのにぃ」


 豊かな黒髪をポニーテールにして。

 振るう剣は広告でも、大分堂に入ったその動きは、まるで歴戦の剣士だ。

 ひと言でまとめると、ちーちゃんマジ美人。

 あれ、なんかおかしい?


「おはよう、ちーちゃん!突然どうしたの?」

「あっ、瑞穂(みずほ)ちゃん!大丈夫だった?」

「ん、何が?」

悠馬(ゆうま)なんかを抱き締める羽目になるなんて、朝から大変だったわね。でも、もう大丈夫よ!わたしが瑞穂(みずほ)ちゃんを守るんだから!」

「んん??」


 何故か使命感に燃えるちーちゃん。

 えーと、春休みの間に、二人に何かあったのかな??

 違う方向に成長を遂げちゃった感があるんだけど…。


千歳(ちとせ)がいなくても、オレが守るんだ!余計なお世話だよ、千歳(ちとせ)

「ふんっ。泣き虫悠馬(ゆうま)に何が出来るのよ」

「な、なんだとぉっ!?」


 ぷぅ、と頬を膨らませて怒っているゆーちゃんには悪いけど、マジ天使。

 二人とも一気に大人になった?ってちょっと寂しくなっちゃったけど、いやいややっぱりまだまだ子供ですな。

 うん、二人には悪いけど一安心。


「話し方より先に、ちょっとは落ち着けよお前ら」

「ふんだっ。いつでも一緒にいられる(ほむら)くんには分からないわよ」

「そうだよ、ズルイよ。家まで一緒なんて…」

「訂正しとくけどな、俺らは別に同じ家って訳じゃないんだからな?」

「まぁほぼどっちかの家に入り浸ってるけどねー」

「そうですねー俺達もお邪魔させてもらってますけど」

「そこで対抗するな、恥ずかしい」


 ちーちゃんは、不満そうに眉を顰めて私の腕に抱きついて来る。

 もうこういう所が、ほんっとうに天使!!

 泣きそう。


瑞穂(みずほ)ちゃんは寂しくない?わたしは寂しいよ…クラスも別だし……」

「ふふふー」

「もうっ、なんで嬉しそうなの!?」

「だって、嬉しいんだもん。ちーちゃんが私と一緒にいたいって思ってくれてる事がすごーく嬉しい!ありがとうね、ちーちゃん。大好きだよ」

「……むぅぅ、瑞穂(みずほ)ちゃんが一番ズルイッ。でもスキ!!」

「ははは。くるしゅうないぞ」


 髪の毛が崩れない様に優しく撫でてあげる。

 そうすると、顔を赤くして、嬉しそうにはにかんでくれるちーちゃん。

 皆さん、ここに天使がいます。

 でも絶対に連れて行ったらダメですよ!!

 特にロリコンの方。


「お、オレは!?瑞穂(みずほ)ちゃん、オレは!?」

「ん?うん。ゆーちゃんも大好きだよ!」

「っ!えへへっ、オレもスキ!!」

「えぇ!わたしのがもっとスキだもん!!」


 私、生まれ変われて良かった!!

 この世界が漫画だろうが何だろうが知った事か。

 二度目の人生幸せ計画は、無事に進行中だ。

 神様相手でも、絶対に譲らないからな!!


「…晴臣(はるおみ)、邪魔しに行かないのか?」

「やだなぁ、若。どうして俺がそんな事するんですか?」

「いや、だって俺とアイツが話してると、いつも割り込んで来るだろ?」

「あれは若と話してるからですよ、勿論」

「?良く分かんねぇけど…ま、邪魔しないなら良いんだけどな」

「…本当にお嬢様に呆れられるような事はするなよ、晴臣(はるおみ)

「分かってるに決まってるだろ、マサ」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「それじゃあ、今年も一年よろしくお願いします!」


 さてさて。全校集会も終わって、今年度の委員会決めに突入だ。

 いや、去年は雑用係…じゃない、クラス委員頑張った。

 だから今年は、私はやらんぞ!!


「まずは学級委員会ね。えーと、委員長に立候補したい人は…」

「……はい」

「あら、(ひいらぎ)くん!去年は推薦だったけど、立候補するの?」

「そうでなければ手は上げません」

「そ、それもそうね。他にやりたい人は?」


 ありゃ。

 委員長、去年は別にやりたくてやってた訳じゃなかったけど、今年は自分から立候補していくスタイルか。

 流石は委員長。

 生粋の委員長だな。

 …意味分かんないな。あだ名変えようかな。


「……副委員長への立候補はいるか?」


 おっと、残念ながらそんなにアグレッシブな子はいなかったようだ。

 うん。分かってる。

 だから皆、私を見るんじゃない!

 今年は楽そうなのをやるって決めてるんだよ、こっちは!

 嫌だよ、もう面倒なのは!

 雑用もそれはそれで楽しいんだけどさ。


「いないなら、俺は青島(あおしま)を推薦する。どうだ?」


 うおおおお!!

 顔を伏せていても無駄だったか!!

 まさか、委員長自ら私にラブコールとは。

 なんたることだ。

 私の穏やかな四年生計画が、早くも危機を迎えている。


「エート…出来れば違うのがやりたいんだけど…」

「…………」

「……ダメですか?」


 思わず敬語が出ちゃった。

 委員長、春休みの間に随分目力に磨きがかかったね!

 魔王も目が合っただけで寒気を感じるレベルに進化したよ。

 これは最早大魔王だな。


「……分かった。青島(あおしま)は、俺と一緒にはやりたくないんだな」

「ん?」

「……お前とならばスムーズに仕事をこなせると思ったんだが、仕方ない」

「え、ちょ、ちょっと委員長??」

「……他にやっても良いと言うヤツは…」

「分かった!やる!やるからそんな哀しそうな顔しないで!!」


 何か委員長がめちゃくちゃ寂しそうに言うんだもん!!

 何あの捨てられた子猫ちゃんみたいな空気は!

 ズルイよ!ギャップだよ!


「……本当か?」

「うん。委員長の事が嫌な訳じゃないよ!寧ろほら、友達だし好きだよ?」

「……そうか」


 ああ…お花が飛んでる幻が見える…。

 もう、これは委員長と知り合った以上仕方ない流れなんだよね。

 分かったよ、委員長。

 地獄の果てまで友達として付き合って行こうじゃないか。

 任せろ!

 今年も八つ当たりでスムーズに委員会を埋めてやるよ!!


「おら、お前ら!今年も私が決めてやるからありがたく思えよ!」

「うわぁ、青島(あおしま)の八つ当たりだ!」

「今年はオレ達なにも言ってないぞ!?」

「横ぼうだー!」

「漢字を書けるようになってから帰って来い!じゃあそんなお前は国語係だ!」

「えぇー!?」


 …こんな感じで、今年度も始まりました。

 うーん、平穏無事に行くと良いな!


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