68.四年生に向けて
「うーん、今年度も終わりかー。盛りだくさんだったね」
「だなー。来年はもうちょっと落ち着いてると楽なんだけどな」
「ねー」
突然テレビ局に行く事になった事件から数カ月。
今年度が終わろうとしている。
その間は、いつも通りの穏やかな毎日だった。
特筆事項…うん、マジでなかった。
寧ろ、テレビ局行ってからしばらくして、焔が風邪をひいたのが、一番の大事…だったような気がする。
今思い出しても、あの時の焔、マジで可愛かった。
背だけは高くなって来てるけど、まだまだ子供だし。
「ねぇ焔。また風邪ひかない?」
「はぁ!?お前シレッと何言ってんだよ!」
「だって、一緒にいてよ瑞穂ーって、可愛かったんだもん」
「……覚えてないし」
あっ、真っ赤になった。
訂正しよう。
焔、お前はいつでも可愛いよ!!
「その顔すげームカつくんだけど」
「痛い!焔、そのボコデレ直さないと好きな子に嫌われるよ?」
「残念でした。俺に好きな子とかいないし」
「これから出来るかもしれないでしょー!」
痛い、とか言ってるけど、実は全然痛くないんだけどね。
でもさ、女の子の頭をはたくとか、良くないと思うんですよ。
大体、スッパーン!って結構大きな音出てるしね。
あれ、これ訓練の効果で痛くないだけで、普通の子なら痛いんじゃね?
……考えない方向で!!
「お前なんかこうだっ」
「ちょっひょー!ほっへふはははひへー!」
「伸びる伸びる」
ついにはほっぺをつままれてしまった。
私のほっぺは玩具じゃありませんっ!
でも、焔が楽しそうなので良いか、と思ってしまう私は、結構末期かも。
「そういや、今年はアレやらないのか?」
「アレ?」
「来年度対策会議」
「勿論やるよ!」
面倒がってる割に、やるの?って聞いてくれる焔、マジで付き合い良いな。
ヤレヤレって顔してるけど、無視だ。
「瑞穂と!」
「焔のー」
「四年生対策会議ー!ワーパフパフパフーッ!」
若干去年までよりテンションが下がってるような気はするけど、付き合ってくれてるだけで十分ですよ私は。
是非来年度以降も一緒にやってね。
「それで、来年度の注意事項は?」
「ない」
「え?」
「俺から振っといて悪いんだけど、ない」
「イベント何もないの?」
「過去に関わりのあるメインヒロインは、あと一人いるけど、中学生に入ってからだったはずだからな」
と、言う事は少なくともあと三年間は安泰、という訳か。
何も考えないで良いって…楽だね!!
「何それ、超楽!クラス替えも今回はないし…のんびり出来そうだね」
「なんだかんだ、漫画の通りに来てるっちゃ来てるし、来てないっちゃ来てない気もするから、あんま油断も出来ないだろうけどなぁ」
「あ、そうか。結果的に高校で一緒になれば漫画の本筋的には問題ないんだし、場合によっては、違う出会い方で早い登場するパターンもありか」
考えてみれば当然だ。
今までは、一応出会うタイミングが焔の言う通りだったから気にしてなかったけど、正確に言えば、漫画で指定されている出会い方ではないのだ。
特に、麻子ちゃんとか。
だったら、残りのヒロインも早く登場する事はあり得るか。
…そもそも、ゆーちゃんだって、私を通してだけど、漫画より早く焔と知り合う事になってたみたいだし、サブキャラも気にしてた方が良いかな?
「一応、めぼしいキャラクターだけは押さえておきたいかな」
「そうだな。知り合うのは避けられなくても、面倒事は回避出来る可能性も上がるだろうし。えーと…気にした方が良いキャラクターは、と…」
焔は軽く目を閉じて思考を巡らせる。
漫画の内容を思い出しているのだろう。
最後に読んだのは、もう何年も前だろうに、良く思い出せるなぁ。
「とりあえず、まずは最後のヒロインな」
「うん」
目を開いた焔は、紙に何かを書きつける。
そこには、誰かの名前が書いてある。
これがヒロインの名前か。
「安月、雫…?」
「そう。雫は俺みたいな感じで、グループ企業のトップの娘。金持ちのお嬢様だから、態度もそれなり。偉そうで高飛車。女王様。女子に嫌われるタイプ」
「私とは違う、純正お嬢様だね!!」
「何でそこで喜ぶんだよ…」
「悪役令嬢は様式美だよ」
悪役令嬢どころかメインヒロインだけど。
…ごめんなさい、まだ会わぬ雫ちゃん…。
「で、本筋では中学の頃に、家同士の繋がりの為に婚約するって言う、まぁなんて言うか…一番正統派な婚約をする相手だ」
「伯父さんの一存じゃないって事だね」
「だから…もしこのまま時間が進めば、他の奴らはスルー出来たけど、雫とは婚約する、みたいな展開もあり得ると思っておいた方が良いかもな」
「そっかぁ…ご祝儀、幾ら欲しい?」
「何でそんな具体的な心配してるんだよ!?俺の心配しろよ!!」
「えぇ…だって、美人と結婚出来るなら良くない?しかもお嬢様だし」
「…何かすげームカつくんだけど」
「今のどこで!?」
結構真面目に焔の心配した結果のひと言だったんだけどな…。
怒られたからちょっと自重しよう。
「まぁ、かぐやよりは上手くやっていけそうなキャラだけどな」
「え?結構キツそうに聞こえたけど?」
「ファンからチョロインって言われてたキャラなんだよ」
「うわ、チョロいの?」
「とりあえず褒めときゃ、あからさまに機嫌が直るんだ」
「なんというチョロイン」
普段は偉そうで、お嬢様で?
それでいてチョロイン。
何それ可愛い。
物凄く会ってみたい。
「実際にどうかは知らねーぞ?で、他のキャラか…」
焔は、さっき書いた紙に、他に何人かの名前を書いて行く。
男の子の名前もあるから、サブキャラなんだろう。
「後藤了輔…磯辺高奈」
「了輔は、まだ出てないって事で書いといた。かぐやの幼馴染で…番頭だか板長だかの息子だ。所謂、ライバルキャラってヤツだな」
「ギャルゲーだったらかぐちゃんのルートで出る感じなんだね」
って言うか、そもそもこの漫画、めっちゃギャルゲーっぽいけどね。
何でメインヒロインそんないっぱいいるのさ。
タイトルがハレハレな時点で仕方ないんだろうけど。うん。
「漫画だったから、普通に登場してたけどな。白鶴に入学するって言って聞かないかぐやのお目付け役としてやって来る訳なんだが…まぁ、かぐやよりお目付け役が必要そうなヤツだな。強いて言うなら馬鹿」
「何それ可哀想」
「すげー良いヤツではある。で、次高奈」
「雰囲気からすると……雫ちゃん関係だな!」
「良く分かったな」
良く分かったって言うか…いや、分かるよね!
メインヒロインみんなに、ライバルキャラが設定されてる感じっぽいし。
かぐちゃんが、今言った了輔くん。
麻子ちゃんは、報われない思いを抱いてるって意味で、伯父さん。
この間の美鶴ちゃんは、双子の兄の美生くん。ブラコンっぽかったし。
そうすると、後に残るのはちーちゃんと雫ちゃんになる。
けど、ちーちゃんの周囲にそういった影はない。
強いて言うのなら、親友キャラのゆーちゃんだろうか。
となると、残るメインヒロインは雫ちゃんしかいない。
至って普通の推測だ。
「もしかして、私の事馬鹿だと思ってる?」
「了輔ほどじゃない」
「ああっ、了輔くんが分からないから怒って良いのか分からない!!」
とりあえず、登場すらしていない了輔くんは怒って良いと思う。
ドンマイ!!
「高奈は、雫の世話役だな。結構年上で、晴臣たちより上だったはず」
「お父さんとか…有真さんたちみたいな感じか」
「メイドって言うより、出来る執事って感じだったから、そうだな」
クールなお姉さんは好きですか?なんつって。
高飛車お嬢様と、それをスマートにフォローする女性執事。
何それどんな漫画だ。
「…おい、念の為の確認であって、来年度会えるとは限らないんだぞ?」
「え、分かってるよ?」
「そんなに目を輝かせて言われても説得力ねーぞ」
いやいや、死んだ目より良いでしょ。
獲れたてピチピチ、生きた魚のお目目ですよ。
やっぱり新鮮な魚の方が美味しそうに見える…って、何の話だ私。
「ま、まぁとりあえず把握したよ!他の注意事項はない?」
「んー…漫画の話じゃないけど、気になってる事はある」
「なになに?」
「お前、なんかイケメンホイホイし過ぎじゃね?」
「ん?」
「いや、美人もか。…なんかさ、お前が友達だって言って連れて来る奴らさ、美形多くないか?不自然だろ」
「……そりゃ確かに」
てっきり漫画の主人公である焔の側にいるからなんだと思ってたけど…あれ?
言われて初めて気付いてしまった。
委員長とか、私が引っ張ってったよね。
その幼馴染のさっちゃんも美人さんだし…いや、さっちゃんは焔が先だし!!
廉太郎くん…中二だけど、イケメンだったよな。
有真さんと有香さんも素敵だったし。
「漫画のキャラじゃないイケメンと美女が友達に多いのは認める。けど、殆ど焔と被ってるし、私がホイホイし過ぎてるとは限らないんじゃないの!」
「確かに、陽介と明佳…轟医院一行は俺と共通の知り合いと言って良い。けどな、お前忘れてるだろ」
「何を?」
「どう考えても晴臣と晴雅は俺がホイホイしたようには見えないだろ!」
「!!」
何と言う事でしょう。
目から鱗。灯台もと暗し。
言われなければ気付かなかった。
「あと、お前が行ってる道場の息子な。晴臣に自慢げにお前の写真見せつけられた時に、偶々目に入ったんだけど、アイツも普通にイケメンだろ!」
「!!?」
「お前、あまりに一緒にい過ぎて、感覚麻痺してるんじゃねーの?」
「た、確かに…」
吃驚するぐらい普通の顔をしているゆーちゃんが可哀想になるくらいイケメンと美少女、あるいは美女の知り合いが多い。
しかも、私の方が焔より多くホイホイしてる!!
「ええー!?だって私、モブでしょ!何で!?」
「寧ろ、モブだからじゃねぇ?モブの中のイケメンと美人をホイホイするとか」
「マジで!?どうしよう、私そこまで美人でもないのに!浮いちゃう!!」
「心配するのそこかよ!」
まぁ、そこまで深刻に悩んでは無いけど。
…深刻に悩むべきは、漫画に登場しない人達の事だ。
モブですらない皆と仲良くなる事は、何か影響はあるのだろうか。
ここは、漫画に極めて良く似た世界で、本筋に引き寄せられるようにして、時折イベントっぽい事が起こる。
でも、だからと言って漫画である訳ではない。
だから、考え過ぎても未来の事なんて分かるはずがない。
けど、中途半端に情報があるから、気にせずにはいられない。
知らなければ良いと、事はそう単純じゃない。
知らなかったでは済まされない事態が起こった時、それこそ、後悔してもしきれなくなるのは御免だ。
得られる限りの情報は得ておくべきだ。
それが、何よりの武器になる。
「うーん…ここまで来ると、私がこうして記憶を持って転生した事にも、何か意味があるって見た方が良いかな?モブじゃなくて」
「意味ねぇ…神様に何か期待されてるってか?ファンタジー世界でもないのに?」
「ただの偶然で片付けるには、ちょっと気になる程度だよ。…今考えるには情報が少な過ぎるし、後回しにしておこう」
「そんなんで良いのかよ」
「考えても分からない事に時間を浪費する気はないってだけだよ」
三年間。
しばらく行動の指針が存在しない。
でもそれは、何も起こらないと言う訳ではないかもしれない。
悪い予感とかは特にないけど…平和に過ごせると良いな。
「とりあえず頑張りましょー!」
「おう」
四年生編か、もしくは五年生編で、百話の大台に乗ります。
そこで、百話に至るまでのおよそ一カ月。
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