66.徘徊、テレビ局!
前回までのあらすじ。
伯父さんに連れられてテレビ局に来たけど、迷子になっちゃったよ。
それで、あまりにも不自然なはぐれっぷりに、ドッキリを疑っていたら、途中で渋谷兄妹のどっちかと遭遇!
これは、本気でドッキリなのか!
はたまた、ただ単純に私が方向音痴だっただけなのか!
……と、まぁふざけるのはこの辺にしておこう。
何か不審な目で見られてるし。
「えーと、本当にただの見学者だよ?怪しくないよ?」
「ホントに?わるい人じゃない?」
「勿論勿論!」
少しだけ警戒を解いてもらえたようだ。
それにしても、マジでどっちだろう、この子。
どっちなのか、見て分からないのかと疑問に思うかもしれない。
だけど、この子の見た目が分かれば、納得してもらえると思う。
短パンゴスロリツインテール。
これだけ聞けば、女の子の美鶴でしょ?と思うかな。
でもこの子達はソックリなのが売りだ。
まだ小学二年生だから、という事もあるのかもしれないけど、いつでも一緒だしいつでも同じ格好をしている。
焔の話によると、高校に入る頃には、そこまで過剰にお揃いって訳ではなくなってるらしいけど、少なくとも今はお揃いだ。
どっちがどっちでしょうか、がクイズとして成り立つレベルだ。
しかもかなりの難易度。
何故なら、外見的特徴で判断がつかないからだ。
身長体重身体つき…。
まだ男女の差があまり大きく出ていないせいだろう。
二卵だろうに、ここまで似ているとは何事だ。
「それで、君の名前は?」
「とうぜん知ってるでしょ?ボク、かわいいからゆーめーだしっ」
守りたい、このドヤ顔。
…じゃない。
どうやら、名乗るつもりはないようだ。
でも、この態度で大体どっちか検討がついた。
私は、その考えを確定すべく、もう二、三質問を投げかける。
「美生くんと美鶴ちゃんって、どっちが可愛いの?」
「はぁ?美鶴にきまってるでしょ。美鶴がせかいでいちばんかわいいんだよっ」
「そう言えばこの間見たテレビで、美生くんモテてたねぇ」
「あたりまえ!美鶴のおにいちゃんなんだから、美生は」
「美鶴ちゃんもモテてたねぇ」
「あたりまえ!でもちょっとたいへんだったよ。へんなお兄さんばっかりで」
…確定。
この子、美生くんだわ。
一応言っておこう。
この双子、話し方もほぼ一緒である。
自分達の可愛さをちゃんと理解していて、あざとさを前面に出して来るタイプ。
大人達に、自分達がどっちか勘違いさせてからかったりという悪戯っ子な一面もあるから、多分意識して話し方も寄せているんだろう。
一人称はボクだし、敬語は敢えて使わない。
必要に応じて使っているのをテレビで見た事があるから、敬語が使えないのではなく、使わない。
これだけ話せば、彼らが相当賢い事が分かるだろう。
だけど、私から言わせてもらえばまだ甘い。
前世の経験が生きているのかもしれないけど、この手の人間観察は得意だ。
外見、動きから判断するのは、私にも無理だ。
でも、これだけ話してもらえば十分。
些細なイントネーションとか、テンションで判断がつく。
テレビでは大抵の人がダマされるみたいだけど。
あっ、こう言う事言うと間違うフラグみたいだね。
そうじゃないんだよ。
えーと、明確に違いを上げるなら…。
美生くんは、美鶴ちゃんに比べて、シスコンなんだよね。
美鶴ちゃんもブラコンっぽくはあるけど、美生くんには及ばない。
美鶴は世界一可愛い、を美生くんは恥ずかしげもなく言い切れるのだ。
美鶴ちゃんは、そこまで成りきれないらしく、照れが残る。
それでも、ボーッと見てたら分からないくらいの違いなんだけどねー。
さて。
美生くんである事は確定した訳だけど…問題は次だ。
当てて良いものか、どうか。
変にプライドを刺激して、敵視されるのは避けたい。
どうだ?どう出る?
流石に直接話すのは今が初めてだし、私は漫画を読んだ事もない。
…漫画の知識が当てになるかはともかくとして。
あー、分かんない。
当てたら怒るタイプ?
それとも、好ましく思うタイプ?
どっちも後々厄介そうだけど、まぁ、もう良いか。
名前呼べないとか、そっちの方が厄介だし。
「美生くんはどこに大人の人がいるか知ってる?」
「え。な、」
美生くんは、驚きからか目をパチパチさせている。
そりゃ驚くのが先だよね。
少なくともテレビで見てる限りは、二人の事区別つく人でも、こんなに確信的に呼びかけたりしてないもんね。
…まぁ、テレビだからすべてが本当とは限らない訳ですが。
演出とかあり得るし。
「なんでボクが美生だっておもうワケ?」
「ん?だって、結構違うよ?」
「…ふーん」
うーん、睨まれるけど、怒られる訳ではない、と。
違うと言われて怒らないって事は、どうしても一緒じゃなきゃ駄目とか、そう言う訳ではないのかな。
依存関係にはない、と判断して良いのか。
…真面目に考えると頭痛くなって来るな。
細かい理屈はスルーしよう。
「それで、知らない?」
「わかんない。ボク、きがついたら一人だったし」
「美生くんも?」
「「も」?」
「うん。私も家族に置いてかれちゃった」
「そうなんだ」
あんまり私の事には興味がないらしい。
淡泊な返事だ。
いや、良いんだけどね。
全然良いんだけどね。
さ、寂しくなんかないんだからねっ!
「じゃあ、探しに行こうか。一緒に行く?」
「おんぶして」
「はい?」
「ボクつかれちゃった。だから、おんぶして?」
両腕を差し出して、コテン、と首を傾げる美生くん。
うおおお、あざとい!
あざとくて可愛い!!
了解した。
私、多分この為に鍛えてた。
「はい、乗ってー」
「え。できるの?」
「ん?勿論。ほら、どうしたの?」
「……」
後ろを向いてしゃがむけど、何故か困惑気味の声が飛んでくる。
あれ、おかしいな。
お願いして来たのそっちじゃないですか。
私は首を傾げながら乗って来るのを待つ。
すると、少ししてから軽い体重が背中にかかった。
「乗ったね?立つよー」
「わわっ」
「よいしょ」
ほぼ背の変わらない私達ですが、全然余裕で立ち上がる。
あっ、良い子の皆は真似しちゃ駄目だよ!?
場合によっては共倒れするからね!
…にしても、美生くん軽いなー。
「じゃあどこから回ろうか?」
「まかせる。ボクわかんないもん」
「了解ー」
何かこの偉そうな感じ、可愛いなぁ。
王子様って言うより、お姫様…女王様?みたい。
だとすると、私下僕になるワケだけど…可愛いから良いか!可愛いは正義!!
「うーん。なかなか見つからないねぇ」
かくれんぼでもしてる気分になって来た。
大人って、本気で隠れると全然見つからないんだね。
だけど、これで逆にドッキリの線が濃厚になって来た。
こんなに見つからないとかあり得ないもんね。
もし、はじめてのお○かいみたいなノリで、怪しげなカメラマンが通りかかったら、しばき倒して事情を聞くつもりだったけど、流石にそれもない。
監視カメラか…或いはもっとガチで盗撮してるか、か。
…全国放送じゃ、ないよね?
「ひま」
「え?」
「ボク、ひまになっちゃった。なにかはなしてよ」
「何かって言われても…」
「ひぃーまぁー!!」
「わーわー!暴れないで!分かったから!」
おおう、危なかった。
鍛えていなかったら共倒れになってる所だった。
…もう少し鍛えておいた方が良いかな。
お姉ちゃん、おんぶして!って、瑞貴が言ってこないとも限らないし。
「それでねー、焔がねー…………で、焔が……を、……なんだよー」
「ふーん」
とりあえず、外さなそうな焔話題を振る。
付き合いが長い分、話題には事欠かないからな。
良かったね、焔!
人気子役が焔の話を聞いてくれてるよ!!
「さっきからその人のはなしばっかりだね」
「嫌だった?」
「ううん。でもフツーさ、じぶんのじまんばなしとかするものじゃないの?」
「えー、自慢ー?うーん……ああ、この間とうとう足で折り紙を作れるように…」
「ぷっ、なにそれ」
あ、ウケた。
焔よ。
私の足技の前に屈したようだな。
焔の話題は封印しよう。ウケなかったし。
「キミ、へんな人だね」
「いやいや、普通だよ普通」
「そうかな?」
「うん」
美生くんは、突然ぎゅうと首に抱きついて来る。
突然どうした。ホームシックか。
…いや、美鶴シックか!
「キミさ、そのホムラって人のことがスキなの?」
「え?うん」
「ふーん。こいびと?」
「違うよ。大切な…家族だよ」
親友って言うのも難しいけど、相棒じゃ足りない。
弟みたいな時もあるし、兄みたいな時もある。
うん。家族って言うのが相応しいかな。
「でも、突然どうしたの?」
「べつに。ボクには、美鶴しかいないから」
友達、いないって事なのかな?
芸能界って大変なところなんだなーって解釈で良いのかな。
今日悩んでばっかだ。
はー…人間って難しいね。
「じゃあ、大切にしてあげないとね。美鶴ちゃん」
「なに言ってんの。あたりまえでしょっ」
あ。元気になった。
って言うか、選択ミスか。
…でもまぁ、元気になったなら良いか。
「美生!」
「えっ、あっ!美鶴!!」
と、突然似た声が響いた。
声のした方に目をやると、美生くんソックリな女の子。
私は、すぐさま美生くんを床に下ろしてあげる。
すると、美生くんは一目散に美鶴ちゃんの方に駆けて行った。
「美生…美生っ!」
「美鶴!」
兄妹、感動の再会だ。
くっ、思わず涙腺が緩む!!
とか何とか思っていたら、美鶴ちゃんの後ろの方から焔がやって来た。
あ、美鶴ちゃんと一緒だったんだ。
「瑞穂!お前は親父達と一緒じゃなかったのか?」
「うん。そっちも?」
「ああ。つーかどうなってるんだ?何かテレビ局のクセに誰もいないんだけど」
「いやぁ、いるっぽいよ。ほら」
「は?どこに………うわ」
私が指したのは、天井だ。
様々な配線が渡ってゴチャゴチャしているそこに、カメラのレンズが煌めく。
「素晴らしい!これぞ今度のCMに相応しい!」
「約束ですよ、監督。協力したんですから、うちの子の活躍を別のDVDに…」
「こら、そこの大人どもー!!!」
結論として、やっぱりドッキリだったようだ。
作った表情の多い双子の、自然な表情が撮りたかった、とか。
でも、ここまで大規模にテレビ局を借り切るには、スポンサーが足りなくて、丁度今日来た伯父さんを説き伏せて、決行に至った、と。
ないわー、マジないわー。
子役にやるドッキリじゃないわー。
可哀想だわー。
「そういや、フラグ立ったか?建築士」
「そっちこそ。ヒロインと二人きりじゃん」
「いや、俺は特になかったな」
「そう。私も特になかったと思うよ」
「……」
「……」
「じゃあ何で美生からクリスマスプレゼント届くんだよ!?」
「じゃあ何で美鶴ちゃんからクリスマスプレゼント届くの!?」
「……」
「……」
一応、無事にくぐり抜けたと見て良いのかな?
良いよね?
良しとしよう。




