58.カオスDEプール(2)
更衣室に入った所で、ある意味因縁の相手である、市村有香さんと出くわした。
はい、もうこれフラグー。
寧ろ男子組とか、もう遭遇してるかも、はい、乙ー。
という具合に、テンションがダダ下がった。
ああいうキャラは嫌いじゃない。
嫌いじゃないけど、二年連続でいざこざを巻き起こすとか、それもうアウト。
普通の家ならともかく、うちはちょっと特殊だから、何か別の意味で怒られたりするんじゃないだろうか、との危惧がぬぐい去れない。
ああ、面倒だ。
純粋に楽しみたかった。
そんな事を思いつつ、ジッと有香ちゃんを見ていると、向こうの方が先に目線を逸らした。
こっちの保護者に、事の顛末が筒抜けだったのなら、向こうもそうだった可能性がある。
…そりゃ無視するわ。
そう思ったけど、有香ちゃんはそんな子じゃなかったらしい。
「…去年、あんな事になったのにまた来るなんて、余程時間を余らせるのがお上手なのですね。青島家のお嬢様は」
要するに、来てんじゃねぇよこの暇人が!と言う事か。
久々のこの敬語毒舌。
結構来るものがある。
…あっ、新たな扉は開いてないよ?
「だれ?」
「あ、そっか。さっちゃんと麻子ちゃんは初めてか」
因みに、さっちゃんとは、焔のクラスの副委員長で、委員長の…陽介くんの友達の、木原明佳さんの事だ。
こっちの方が、可愛いよね?
江戸在住のさっちゃんさんと、奇しくも同じメガネキャラだけど、他意はない。
何の事か?
分からないならスルーしてください。
「こちら、このプールを経営している轟医院のご子息の廉太郎くんの世話係をしてらっしゃる、市村有香さんです。有香さん、こちらの二人は、眼鏡をかけてる子が木原明佳さん、背の高い人が十村麻子さんです」
「はいはーい!わたしは、小田原千歳でーす!」
「ちーちゃんは去年自己紹介したでしょー?」
「あれ、そうだっけ?」
人差し指を口元に当てて、ぴょこん、と首を傾げるちーちゃんマジ天使。
はぁぁぁ、あまりの可愛さに卒倒してしまいそうだ。
ここが天国か。
「ご紹介に預かりました、市村有香と申します。以後、お見知り置きを」
「あ、私は十村麻子です。本日はお世話になります。よろしくお願いします」
「アタシが明佳だよ。よろしくねー、絶壁のおねーさん」
「ぜっぺ……!!」
ニヤリと、悪役か!と言う笑顔を浮かべて爆弾を投下するさっちゃん。
基本的に、我関せずスタイルの有香ちゃんも、流石に看過できないセリフだったらしく、ピクリと口元を引き攣らせている。
ちーちゃん辺りは、意味が分からない、と言う風に首を傾げているけど、まぁ、そりゃ伝わるよね。
私は、反射的に有香ちゃんの胸部に目線を走らせてしまう。
有香ちゃんは、どちらかと言うとスレンダーだ。
真っ黒い、ワンピースタイプの水着を着用している。
あっ、スクール水着じゃないよ?
でも最近のスクール水着って、お洒落なのもあるから、一概には言えないか。
…まぁ、お洒落スクール水着は置いておいて。
ともかく、ワンピースタイプは、身体のラインが出る。
大人になって来ると、逆に恥ずかしくて着れないんだけど、そんな心配ないくらい、綺麗なラインだし、可愛い。
…まぁ、まだ子供っちゃ子供なんだけど、そこはスルーで。
そんな胸部は、不自然な盛り上がりを見せる。
男子は気付かないかもしれない。
けど、このラインは…察して欲しい。
「あれ、アタシ何か間違えた?」
「間違えたって言うか、正々堂々と正面から爆弾投げつけに行った感じだね」
「しょうがないじゃん。アタシさ、クールぶってるの見ると、崩してやりたくなるんだもん。無性に」
「結構ヤバい趣味だね」
さっちゃん。
見た目通りの、マッドな女の子らしい。
焔が泣いたのも理解出来る。
あれ?泣いてはいなかったっけ。…どっちでも良いや。
「お話はそれだけでしょうか。それならば、私は失礼させて頂きます」
「じゃーねー。Aのおねーさん」
「……」
最後に、ギンッとさっちゃんを睨んで、コロスコロスコロスコロスコロ(ry
みたいな、呪詛的な何かを呟きながら、そこはかとなく恐ろしい雰囲気を醸し出しながら、有香ちゃんはプールの方へ向かって行った。
え、これさっちゃん大丈夫なの?
聞く所によると、お嬢様とかじゃないらしいけど、大丈夫なの??
心配になってさっちゃんを見ると、さっちゃんは意地悪く笑っていた。
「心配ご無用だよ。あのテの人のイジリ方は完璧だから」
「えーっと、程ほどにね…」
まさか、私がツッコミと言うか、に回る日が来るとは思わなんだ…。
ちょっと遠い目をしていると、服の裾を引かれる。
誰かと思うと、頬を膨らませたちーちゃんだった。
「早くプール行こうよ。わたし、もう着がえ終わっちゃったよ」
「あ、話に夢中になり過ぎてたね。ごめんごめん。すぐ着替えるよ」
ちーちゃんは、服っぽいタイプの水着だ。
上は赤いチェックのキャミソールで、下は同じ柄のフリルのスカート。
大人が着たらケバい事この上ない色合いだけど、ちーちゃんには良く似合う。
眼福である。
…ロリコンじゃないよ!!
私も、サカサカと着替えを終えてしまう。
と言うか、服の下に着て来てたから、脱ぐだけだ。
効果音を付けるのなら、スポーン!だ。
私の水着は、水色ベースの、水玉模様のワンピース。
子供用特有の短めのスカートが縫いつけられている。
くくく、可愛かろう。
なんちゃって。
「着替え終わった?それじゃあ、いきましょうか」
「うんっ!いこういこう!」
「うわぁ…」
「?あら、どうかしたの、瑞穂ちゃん?」
キョトンとする麻子ちゃんを見て、私は固まってしまう。
えーっと、確か有香ちゃんは私の五つ上だから、中学二年生だよね。
で、麻子ちゃんは七つ上だから高校一年生。
……胸囲の格差社会とはこの事か。
思わず絶望しそうになった。
他の人の事とは言え、何だか切ないよ!!
麻子ちゃん胸おっきいなーとは普段から思ってたけど、あれでもなお、着痩せしていただと!?
そっと自分の胸を触る。
小学三年生にしてはある方だと思うけど、どうだろう。
い、いや!巨乳より美乳だよね!綺麗に育てよ、お前等!!
「何か落ち込む事でもあったの?」
すいません。
真面目に心配してもらって申し訳ありません。
すっごくしょっぱい心配です。
「アンタのせいでしょ、おっぱいお化け」
「おっぱいお化け!?えっと、私の事かしら??」
「他にいないでしょ。皆ツルペタなんだから」
「しょ、小学生のみんなより、私の方が大きいのは普通でしょう?」
「さっきの絶壁を見てそんな事言えるの?流石、スタイル勝ち組は違…」
「さっちゃん、ストーップ!これ以上やると虚しい!主に私が!!」
私のライフはもうゼロよ!
私が自分のスタイルとか外見とか、気にしてないと思った?
残念でした!かなり気にしてるんだよ、これでも!!
「ここからが面白いのに…」
「それ面白いのさっちゃんだけだから!」
「その…明佳ちゃんが楽しいのなら、私は別に」
「麻子ちゃんが大人!でも良くない!イジメ良くない!」
「イジメてないよ。イジってるだけ」
「その論理で果たして何人が引き籠ったのか!?とにかく駄目!!」
「ちぇー」
渋々ながら、何とか引きさがってくれたさっちゃん。
私は、ホッと胸を撫で下ろす。
そこに、更に不機嫌そうになったちーちゃんの鋭い一喝が響いた。
「もうー!いつまでやってるの!?ケンカはめっ!ですよ!!」
めちゃくちゃそわそわしてて、視線はプールの方向に釘付け。
説教したんじゃないよ。
もう完全に、ただ早くプールに行きたいだけだよ。
そんなちーちゃんが……可愛いです。
「と言うか、さっちゃんスクール水着で良いの…?」
「ん。楽だし」
「さいですか…」
ああ…しょっぱなの更衣室だけでここまで披露するとは。
今日のプール、無事で済みそうにないな。
……ハリウッドの主人公っぽい予感だ。うん。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ーその一方で男子更衣室もまた…。
「ふははは!待ちわびたぞ、我が終生の好敵手、焔よ!」
「うわっ、出た!!あんた、何で今年もいるんですか!?」
「貴様らとこの私は、宿命の輪廻に絡め取られ、幾度も剣を交えるが運命…再び出会うのも、必然と言うものであろう!」
「あーっ、カッコ良い事言うお兄さんだ!えっと、よーすけさん!」
「ほう。そこのチビ助は分かっておるではないか。よかろう!望むのであれば、我が下僕としてやろう!!」
「えぇー、なんかヤダ」
「何だと!?」
「うちの坊っちゃんがすいません!今年もチケットあげたから、友達と遊んで来るように、との轟院長の仰せでして…」
「うわー。そんな主じゃ仕えたくないな、俺。旦那様に拾ってもらえて、本当に良かったな、マサ!」
「…実は五十歩百歩…いや、そうだな。本当に良かった」
「……友達か、赤河?」
「違うから!!」
「我らは好敵手よ!」
「……息が合っているように見えるが」
「違うから!絶対違うから!!」
「違うのか」
「如何にも!拳を交わしたあの日より、我らの道が交わる事はなくなったのだ」
「……風間は分かるか?アイツらの言う事」
「ボク、よく分かんない。あ、でも前もいっしょに遊んでたよ、あの二人」
「なら、友達じゃないのか?」
「友達じゃないの?」
「?」
「?」
「今年も私と、血沸き肉躍る死闘を繰り広げよ、炎獄の戦士、焔よ!」
「何か知らない間にだっせー二つ名付けられてる!?やめろ、俺を巻き込むな!」
…カオスな空間になっていたそうだ。
哀れ、焔。
作者は目が悪いので、プールに行くと輪郭しか見えません。
胸の大きさなんて、相当近付かないと分かりませんし、水着の柄も分かりません。
……惜しい事をしているような…。




