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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(三年生)
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52.友達になりたい

青島(あおしま)、なんかテンションひくくねぇ?」

「たしかに、去年より元気ないよね。…だいじょうぶ、瑞穂(みずほ)ちゃん?」

「うん!全然平気だよっ。ほら、このとー…りっ!!?」

「きゃあ!青島(あおしま)さん!?」

「お、おいおい、大丈夫かよ!?」

「保健室行く?」


 クラスの皆に心配してもらったのが嬉し過ぎて調子に乗りました。

 ごめんなさい、もうしません。

 え?何が起こったのかって?


 勿論、果てないごうも…特別訓練を受けて、慣れはしても、その分すぐさまレベルが上がるせいで、筋肉痛なんだか、最早良く分からない痛みに苦しんでいる所を無理して身体動かそうとしたせいで、何か音が出ちゃいけないようなパーツが、変な…と言うか、ピキッ?みたいな音を出したんだよね。

 一応、グキッ、ではないと言っておこう。

 ぎっくり腰とかではないんだよ。

 肉体年齢的にはまだひとケタだよ。


 気を紛らわせる為にも、ここは楽しい事を考えよう。


 クラスが分かれた時は、寂しいなーと思ったりもしたものだけど、何だかんだ楽しくやっている。

 皆良い子だし。

 偶にケンカ売って来るアホな子もいるけど、アホな子ほど可愛いんだよね。

 うんうん。

 …ん?私はアホの子じゃないよ?類友じゃないよ??


 で、ひとつ気になる事がある。

 特に、こうして休み時間に好き勝手騒いでいる時に、だ。


「……」


 クラス中を巻き込んだこの騒ぎに対して、我関せずに一人読書を続けている強者(つわもの)…こと、委員長こと(ひいらぎ)陽介(ようすけ)くんである。


 あれから、ちょくちょく一緒に先生のパシリをやったりしている。

 流石の私も、クールなタイプの子に対して、すぐに仲良くなれるとは思ってないけど、相性が良ければ、たまたますぐに仲良くなる事ってあるよね?

 だから、私とは言わなくても、誰かしらか友達は出来るだろうって思ってた。


 …たんだけど、哀しい方向に予想は外れてしまい、彼は今独り(ぼっち)だった。


 気を遣って声をかけた子もいたにはいたけど、眼光鋭いし、言葉は少ないし、結局は怖がって離れて行ってしまった。

 それに対しても、悪びれる様子は無いし、そもそもどうでも良さそうだった。

 一人が好きなのかな…?


 でも、そうなって来ると気になってしまうのが私である。

 余計なお節介なのは分かっている。

 それでも、もしこれが、彼の本意でないのなら、寂しいじゃないか。


 周囲の人全てに手を伸ばす事が叶わなかろうと、視界に入った人は全て救う。

 綺麗事ではない。

 何しろこれは、自己中な考え方だ。

 要するに、見える所だけでも平和に保ちたい、と言う事だから。


 ……オーケー。

 何か真面目っぽい事考えたら疲れたからスルーしよう。

 理由とか何でも良いわ。

 彼がぼっちを貫くのならば、声をかけるのは私しかいない。


 ただ、本当に委員長が一人好きで、マジで声をかけられるだけで迷惑、とか言う感じだったら、すぐに撤退だ。

 私、何だかんだ言って、そこまでメンタル強く無い。

 あれ?どうして(ほむら)が爆笑する姿が想像出来るんだろう。

 すげー腹立つな。

 私だって女の子だもん。ぷんぷん。


青島(あおしま)さん」

「……うーん」

青島(あおしま)さん!」

「へっ!?あ、へいっ!どうしたんですか、先生!!」


 声をかけられてハッとすると、先生が呆れたように私を見ている。

 あれっ、休み時間どうした。

 慌てて時計を見ると、既に休み時間は終わっていた。

 アウチ。

 ちょっと考え事が過ぎたか。


「どうしたんですか、は私のセリフよ。ぼうっとしてるみたいだったけど、どうかしたの?大丈夫?」

「はっ!すこぶる元気でありますっ」

「そ、そう。それなら、号令よろしくね」

「はーい」


 私、考え事する時、状況確認するクセ付けないとマズイな。

 学習しなさすぎでしょ。

 何回明後日の方向に行くんだ、私。


 とりあえず、お昼休みに委員長に突撃しよう、そうしよう。


青島(あおしま)さん!」

「わー!ごめんなさい!!きりーつ!!」


 ……学習能力が…。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「…ふむぅ」


 大体一時間くらいあるお昼休み。

 三十分くらいで、遅い子もご飯を食べ終わって、皆教室の外に行く。

 大人しい子は、自分の席で絵を描いたり、それこそ本を読んだりしているけど、活発な子が多いクラスなのか、うちのクラスからは殆どの人がいなくなる。

 私も、日によってはグラウンドに出て、皆と何かしらかの遊びに興じるけれど、実は自分の席で大人しくしている事も多い。

 何かと勉強も増えて来てしまったしね。

 私、本当に三年生なんだろうか。


 話を戻そう。

 とりあえず、そんなこんなで、現在お昼休みである。

 周囲をそれとなく見回しても、確認出来る人は、私を含めて四人しかいない。

 大人し組のいつもの面子(めんつ)だ。

 女子ばっかりなのは、別に女子の方が大人しいから、と言う訳ではなくて、単に割り振りの問題だろう。

 他のクラスで、私は男子ばっかり大人しい所があるのを見た事がある。


 それで、私は委員長に声をかけようと思っている訳ですが。

 これだけ人がいなくて、しかも誰もおしゃべりをしていないとなると、非常に声をかけ辛い、と言うのも事実だった。


 何しろ、会話内容は筒抜け。

 フラれてしまったら立ち直れない。

 席が隣だったら、一度はやってみたい青春的行動みたいに、手紙のやり取りをする事も可能だったろう。

 でも、残念ながら、そこそこ席は離れている。

 遠いと言う訳ではないけど、手紙を誰にも気付かれずにやり取るにしては、少しばかり遠い。


 くっ!

 空気読まずに声かけても良いけど、それで委員長の迷惑になったらマズイし。

 幾ら話しかけたい理由自体が自己中心的なものだからと言っても、流石にそこまで自己中になりたくない。


 うーん、と唸っていると、ふと委員長が何の予備動作もなく立ち上がった。

 そして、そのまま教室の外へ出て行ってしまう。


 ……トイレか!


 これは丁度良いかもしれない。

 タイミングが合えば声をかけられる。

 まぁ、トイレを出た直後に捕まるのは嫌だろうから、そこは避けるけど。


 とにかく、様子を窺って悪い事はないだろう。

 私、これから隠密になります!!

 レッツストーキング!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……で、何の用だ?」

「ん?」

「……ずっと、俺の事見てただろ」


 ……トイレじゃなかったようだ。


 委員長は、不機嫌そうに眉を寄せて、ジロリと私を睨んでいる。

 教室を出て、迷い無くサクサク歩く委員長について行った先は、何故か人気(ひとけ)のない裏庭。

 中庭とはちょっと違くて、用具入れとか、そう言うものしかない。

 校舎の構造上、わざわざ来ようとしなければ見えない位置にある。

 けど、イジメとか暴力の温床になっちゃマズイから、と言う理由で監視カメラが付いているそうなので、安全安心だ。


 とは言え、監視カメラは音声までは拾わない。

 だから、内緒の話をする時には最適だ。


 ケンカになる…とまでは思わないけど、ちょっとばかり不穏な空気だ。

 わざわざ此処に来たって事は、何かしらか思う所があるんだよね。

 ケンカ売ってるとでも思ったかな?

 買っちゃう?買っちゃうの??


「実は、委員長友達いないのかなーって気になって」


 仕方あるまい。

 ここは、直球一本勝負を選ばざるを得ない。

 え?もっと探りを入れろ?

 いやいや、探りとかそんなの社会人になってからで良いよ。

 嫌だよ、そんな殺伐とした空気を小学生の身空で味わうのは。


「…友達?」


 委員長は、怪訝そうに目を細める。

 怖いな、委員長。

 怒らせてる?苛立たせてる?のは私だけど、委員長はデフォが怖い顔だ。

 そりゃ友達も出来ないわ。

 作ろうとしてないのかもしれないけどさ。


「……一応、いる」

「え、本当?でも、いつも一人だよね」

「……他のクラス」


 委員長の眉間のしわが深くなる。

 あっ、ごめん。

 面倒臭いですよね、そうですよね。

 って言うか、いるのか。

 そりゃいるよね、ちょっと安心だ。


 もうこれ、親戚のおばちゃん的な感覚かもしれない。

 私から見れば、皆子供みたいなものだし、小学校生活を楽しんで欲しいと思って余計な世話を焼いちゃうのは仕方ない……いや、おばちゃんじゃないけどね!?


「…何で、そんな事気にするんだ?」

「だって相棒だし」

「……?」

「君、委員長。私、副委員長。相棒の事心配するのは当然でしょ!」

「……」


 もっと不機嫌そうになった。

 いやー、怖いー。

 眼鏡を通しても、視線の先から凍りつきそうだよ。

 それにしては私が能天気でいるのは、あれだ。

 悪意を感じないからだ。

 良い子っぽい、って印象は未だに変わってない。


「クラスの皆の事、嫌い?」

「……別に」

「そっかぁ。じゃあ、友達は作る気ない?」

「…………」


 だって、ホラ。

 こんなにバリバリ余計な世話を焼いてるのに、不機嫌そうにはなるけど、怒ったり、この場から離れようとしたりしないもん。

 良い子じゃなかったら何さ。

 言っとくけど、今の私、結構なウザさだって自覚あるからね。

 自慢じゃないけど。えへん。


「あっ、私が友達に立候補しても良い?」

「……お前が?」

「駄目かな?」

「……」


 委員長は、しばらく何かを考えているかのように黙り込む。

 そして、予鈴が鳴ると、教室に向けて歩き出して、ポツリと呟いた。


「お前がしたいなら、別に。好きにすれば良い」

「本当に?やったー、ありがとう!」

「……」


 うーん。

 まだ壁を感じる。

 でも、まぁこれが第一歩って事で良いよね!


 私の夢に向けて、委員長。

 君にも満面の笑みを浮かべてもらうぜ!

 ふはーはっはっは!!


 なんちゃって。


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