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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(三年生)
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49.部活動は何が良い?

「プリントはもう、全員に渡ったかしら?」

「…はい」

「ちゃんと渡したんで大丈夫でーす!」

「ありがとう。(ひいらぎ)くんと青島(あおしま)さんも、席に着いて?」

「……」

「はーい」


 副委員長って、早速雑務が多い。

 今日もプリント配りさせられた。

 昨日なんて教材運ばされたし。

 その内、遠足のしおりとかまで作らされるかもしれない。


 作業一つ一つは大した事ない。

 んだけど、積み重なって来ると結構面倒臭い。

 小三の時点でこれって、この学園大丈夫ですか?

 前世で小三だった頃の委員長達、こんなに忙しそうじゃなかったんだけど。

 めっちゃ名ばかりだったんだけど。


 私は、外見には笑顔で、内心溜息をつきながら席に戻る。

 能天気な私なので、別に仕事が多い事自体が良い。

 次はもう引き受けないしね?


 ただ、相方と心が通じ合ってない感がちょっと寂しい。

 折角面倒な仕事を一緒にやってるんだから、愚痴の一つも言い合いたい。

 なのに、私は大変だね!って言っても、委員長は無表情。

 話を聞いてるのかすら良く分からない。


 …まぁ、悪い子では無いっぽいし、しばらくこうやって関わっていけば、その内心を開いてくれるだろう。多分?

 と言う訳で、しばしの我慢だ。私。

 雑務頑張るよ!!


「と、言う訳でこれから部活動の内容を先輩達が教えてくれるので、体育館へ移動しましょう。はい、静かに移動して下さいね」


 はっ!例の如く話を聞いていなかった。


 いかんいかん。

 私は、我に返ると、すぐに手元のプリントに視線を落とした。

 そこには、「部活動について」と記されている。


 白鶴(しらつる)学園初等部は、三年生から部活動に入っても良い事になっているらしい。

 別に帰宅部でも構わないけど、部活参加を推奨しているらしい。

 ほうほう、なるほど。

 運動部も文化部も、結構種類が豊富だ。

 これは楽しめそうですな。


「…青島(あおしま)

「ひゅおうっ!?い、委員長?ビックリしたぁ…何?」

「…何、じゃない。……体育館に移動だ。早く」


 急に後ろから声をかけられたから本気で驚いた。

 ちょ、委員長気配無い!

 ってか無表情怖いよ!!怒ってる?怒ってる??


 ジッと見てみても、目自体はつり上がってるけど、それは元々みたいだし、良く分からない。

 怒ってる風にしか見えないけど、雰囲気はピリピリしてない。

 委員長分かりにくいよー。


「……」

「あっ、ごめん。今行くよ」


 慌てて席から立ち上がる。

 気付けば、もう他のクラスメート達の姿が無い。

 肩肘張った会じゃないみたいだし、多分我先にと体育館へ向かったんだろう。

 だとすると、委員長はわざわざ私を待っていてくれた事になる。

 やっぱり、優しい子なんだ。


 ……見た目怖いけど。


「委員長は部活何にするの?」

「……」

「……えーっと」


 当たり障りの無い話題を選んだつもりだったけど、委員長は黙ってしまう。

 無口無表情、ここに極まれり。

 これって、どう捉えたら良いんだろう。

 果たして、聞こえてるのか聞こえて無いのか…。

 聞こえてるとして、どうして返事が無いのか。

 故意か無意識か。


 嫌われてる訳じゃないのは分かってる。

 何せ、委員長は他のクラスメートにすらこれだ。

 デフォルトだ。

 まぁ、世界の全てが俺の敵だ!みたいな中二思考だったら分からないけど。


 …中二って言えば、廉太郎(れんたろう)くん元気かなー。

 関わるとすっごい疲れるんだけど、ごく稀に会いたくなる。

 いや、寧ろ会いたいって言うか、遭いたい。

 この微妙なニュアンスの違い、是非感じて頂きたい。なんつって。


「本」

「え?」

「本が読みたい」


 急に委員長が、ポツリと呟いた。

 抑揚は無いけど、いつもと比べれば、幾分か楽しそうにも聞こえる。

 私は、少ししてからそれが私の質問への答えである可能性に気付く。

 今の今まで考えてくれていた、と言う事だろうか。

 私は貰ったプリントに目をやる。

 本関係だと、文学部…くらいだろうか。


「文学部に入るの?」

「あくまでも希望、だ」


 相変わらず仏頂面だ。

 けど、やっぱり怒ってる訳ではないんだろう。

 それに、考えた通り、本が読みたいと言うのは、私を無視しての言葉ではなく、私の質問に対する答えだったようだ。


 …会話出来てるじゃん、私達!

 いいねいいね、この調子で行こう!


「何笑ってるんだ?」

「えっ、キモかった!?」

「…別に、どうでも良い」

「うおお、無関心…」

「……」


 ちょっと親しみを覚え過ぎて、距離感間違えちゃった。テヘペロ。

 まぁ、否が応でもしばらく相方でいる訳だし、ゆっくりいきますか。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから、委員長と連れ立って部活勧誘会を見た。

 他の同学年の子達は、もう既に体育館に入っていて、前の方は埋まっていた。

 だから、ちょっと見えにくかったけど、後ろの方から眺める事になった。


 結論から言おう。

 すっごい楽しかった!


 変わり種の部活はなかったけど、どこも新人獲得に真剣なのか、寸劇からプレゼンから、面白い出し物で部活を紹介してくれるのは、見ていてとても心躍った。

 家の方で、色々と習い事が開始されるし、実は私は、部活に入る気は無かった。

 だけど、気が変わるくらい面白かった。


 この空気を一切経験せずに終わるのは寂しい。

 とは言え、本格的なのは出来ないから、和気あいあいとした、ゆっるい文化部のどれかに入る事にした。

 何が良いかな?


 出し物が終わると、ウキウキしながら、私は委員長に感想を言う。

 委員長は時折軽く頷いてくれていた。

 多分、話を聞いてくれているんだろう。

 無表情過ぎて全然分かんないけど、その辺りはスル―だ。


 そして、教室に戻って自分の席に戻る。

 すると、ふと近くの席の女の子が、困惑気味に声を掛けて来た。

 別に、全く話さない、と言う訳でもないけど、そう話をする子でもない。

 どうしたんだろう?と首を傾げていると、女の子は声を潜めて言った。


青島(あおしま)さん、よく(ひいらぎ)くんとお話できるね」

「ん?なんで?」

「だって…コワイでしょう?」

「うーん」


 私は、曖昧に笑って返す。

 精神年齢大人な私から見ても、まぁ委員長は無表情で怖い。

 目つき鋭いしね。

 完全なる子供から見ると、避けるレベルなのかもしれない。


 私は、ふと前世で読んだ少女漫画…いや、女性向け漫画?まぁ、良いか。

 いずれにせよ、漫画を思い出す。


 彼に近付かない方が良いわよ、的な事を言う女の人は、実はその男の人を好きで主人公に牽制して来ていたのだ…と言う、ありがちな話。

 ま、まさかこの子……。


 ……なさそうだ。


 別に、一切の照れもないし、悪意は感じられない。

 恋愛の機微を感じるのは苦手だけど、悪意に関しては得意中の得意だ。

 昔そう言う職場に…あれ、もしかしらブラック企業だった?

 コホン。

 前世の経験が生きて、そう言うのを感じるのは得意なのだ。


 ただ、まだ小学生なのだ。

 もしかして、苦手意識が成長して、その内恋心に…。

 じゅるり。

 お姉さん、そう言うの好きですよ。

 気の強いツンデレも美味しいけど、気の弱い子が怖いお兄さんに恋心とか、もう大好物ですよ。


青島(あおしま)さん?」

「あ、ううん。何でもないよ、心配してくれてありがとう!」

「う、ううんっ」


 あれ、何で頬を染めて逃げて行くの。

 お姉さん、そんなキモかった?

 ごめん!謝るから避けないで!!

 くっ、やはり中身がこれだからいかんのか??


 …はぁ。

 とりあえず、気持ちを切り替えて、部活決めなくちゃ。

 部活、何が良いかな~?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 少し悩んでしまった私は、帰り道、一緒に歩いていたいつものメンバーにも、委員長に聞いたのと同じ質問を投げかけた。


「わたし、剣道やるの!つよくなるわ!」

「ぼく野球!バシバシうつよ!」

「そっか、二人はもう決めたんだね」


 流石、チビっ子二人は決断が早い。

 何だかんだ似た者同士な二人は、ニコニコと部活に対する展望を語り合う。

 と言うか、ちーちゃん剣道って、なんか私が前に適当に言ったアドバイスだったような気がするのは、気のせいだろうか。

 …まぁ良い。決めるのは本人だから。

 私のせいじゃないから。


 ゆーちゃんの野球は、どう言う流れなんだろう。

 特にそんな様子はなかったけど…今日の部活勧誘会に触発されたかな?

 ふふ、いがぐり頭のゆーちゃん。

 可愛いだろうなぁ…ザ・日本人!って感じで。


 おっと、いかんいかん。

 こう言う所がキモいんだろうな、私。

 自重しよう。


(ほむら)は決まった?」

「うーん、決まってると言えばそうだし、微妙な所だな」

「煮え切らないね」


 (ほむら)にしては珍しい。

 結構、即断即決な印象があったけど。

 ん?割とグダグダだって?

 いやいや、決める時は決める男ですよ。


「二人は無部だったよね?」

「時間が惜しいので」

「まぁねー」

「もし入るとしたら何だった?」


 ついでに、参考にしてやろうと双子にも問いかける。

 すると、少し考えてから答えてくれた。


「僕は、家庭科部ですね」

「家庭科!?何で!?」

「運動と比較すると、僕は家事の方が苦手なので」

「な、何と言う真面目回答…」


 部活って、そう言うのじゃないと思うんだけど…。

 ん?本来はそう言う物なのか?

 楽しむ物って解釈は、私の解釈だし、(まさ)君が良いなら、それで良いのか。

 何か腑に落ちないけど、もしもの話だし、別に良いか。


(おみ)君は?」

「俺はー…ゲーム同好会ですかね。あ、高等部にはあるんですよ」

「ゲーム!?」


 これまた意外な回答だ。

 私は思わず目を丸くしてしまう。

 すると、すかさず(おみ)君が解説してくれる。


「ゲームって言っても、お嬢の考えてるようなテレビゲームじゃないですよ」

「違うの?」

「はい。トランプなんかのカードゲームとか、チェスなんかのボードゲームとか、そう言うゲームを色々やろうって同好会なんです」

「あぁー」


 納得した。

 それなら、スマートではらぐ…計算に強い(おみ)君にはピッタリだろう。

 ち、ちちち、違うよ!?

 まさか、(おみ)君を腹黒だなんて、思ってないんだからね!


 と、それはさておき、部活なー。

 やってみたい事が多過ぎて、逆に悩んでしまう。

 あんまり忙しいのもあれだし…。


 私は、思わずもう一度(ほむら)に尋ねた。


(ほむら)は、どうして煮え切らないの?」

「ん?んー…」


 (ほむら)は、一瞬渋い顔をして、それからそっと私の耳元に寄って、小さく答えた。


「テニス部に入りたいんだけど」

「え?何か問題ある?忙しいとか…」

「…赤河(あこう)(ほむら)が入ってたんだ」

「ああ…」


 自分が入りたいと思う部活が、コントロールされているが如く、漫画の主人公と同じだから迷ってたのか。

 なるほど、理解。


「あんまり頑張ってどうこうしようとしても、なるようにしかならないし、別に良いんじゃない?」

「簡単に言うけど、何かあったら大変な思いするの俺なんだぞ…?」

「テニス部に入ってるせいで、不利益被るの?」


「………モテる」


「イケメン爆ぜろ」

「おい、こっちは真剣にだなぁ…」


 おっと、反射的にディスっちまったぜ。

 いや、だって悩みが贅沢過ぎるよ。何だコイツ。男の敵。

 ジトッと睨みつけていたら、流石に(ほむら)は黙った。


「じゃあ、ダサいプレイすれば?」

「やるなら負けたくない」

「そんなプライド捨てちまえー!!」


「えっ、みーちゃん急にどうしたの!?」

「こらー、ホムラくん!ミズホちゃんになに言ったの?」


「悪いの俺!?」


 その後、壮絶な口喧嘩の末、一週間の部活見学をしてから決める事を、ようやく思いついて、折り合いが付いた。

 そして私達は、思い思いに部活を見学。

 結局、(ほむら)はテニス部。

 私は美術部で決定した。


 何はともあれ、やる事が急に増えている。

 うっかり変な失敗をしないように、注意しなければ!


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