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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(三年生)
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48.委員長と副委員長

 心機一転だけじゃなく、文字通り環境も変わった初日。

 私は気合いを入れて集会に臨んでいた。


 やっぱアレですよね。

 誰も聞かない校長先生の話を聞くとか格好良い。

 マジでリスペクト。


 と言う訳で、長々しい校長の話すら、私は真剣に聞いていた。

 最近買ったセラミック包丁と、昔ながらの包丁の違いとかけて云々、みたいな話をしていた。

 下手なリラクゼーションを受けるより、よっぽど眠くなるって何故でしょう。


 いや、だが私は今日から新生瑞穂(みずほ)になるのだ。

 この程度の眠気には負けんぞぉ。


 そんなこんなで、私は一睡もする事なく、きちんと話を聞き切った。

 鋼の如く、全く違う人と組み合わさる事で力強さがーって、ちょっとだけタメになったような気がしなくもない。

 使いどころに悩むけど。


 そして、安全安心、マイクラスへと舞い戻る。

 マイクラスだけに。

 あっ、つまらないですか、そうですか。


 着席すると、担任の先生がこれからについての話を始める。

 って言っても、こう言う話は毎年大して変わらない。

 行事については、回って来るプリントを見れば良いし。


 そう思うと、段々眠くなって来る。

 やっぱり、さっきまで校長の話で頑張りすぎたかもしれない。

 あっちで寝ておくんだった。


 前世はなー。

 眠くなる事なんて無かったのに。

 身体が子供だからだろうか。

 楽しい時はともかく、つまらない時は果てしなく眠くなる。

 しかも、いつまでも寝れる。

 ああ、若いって良いな!


 いや、今に関してだけ言うと全然良くないんだけど。

 先生の話聞かなきゃなんだけど。


「はいっ!瑞穂(みずほ)さんがいいと思います!」

「ボクもー」

「わたしもー」


 どうしたら起きてられるかな。

 何か今、私の名前が呼ばれる幻聴まで聞こえて来たし。

 さては相当眠いんだな、私。


「そうね、青島(あおしま)さんは責任感も強いし、リーダーシップもあるものね」

「……俺は、誰とでも良い、です」


 羊を数えると眠れるって言うけど、私逆に目が覚めて来るんだよね。

 なら、普通に羊でも数えてみようかな。

 この羊って、英語で眠るの意味のスリープと、羊の意味のシープが、何か似てるよねってだけの理由で言われてる話らしいんだけど、なかなか面白い。

 何で語感が似てるってだけで、それを数えたら寝れるって話になったんだろう。


青島(あおしま)さんはどうかしら?」

「……ひつじ」

青島(あおしま)さん?」

「へっ?」


 ハッと我に返ると、何かクラス中の視線が私に集中している。

 あれっ、私知らない間にそんなカリスマ性を発揮してた?

 いやだな、照れちゃう。


青島(あおしま)さん、ボーッとしてどうしたの?大丈夫?」

「あ、はい!すみませんでした」

「元気なら良いんだけど…」


 ボケてる場合ではなかったようだ。

 何で先生に声かけられてるの、私。

 まだ初日だし、問題解かせようってワケじゃないよね?

 別にまだ小三だし、急に言われても問題無いけどさ。


「それじゃあ、もう一度聞くけど、青島(あおしま)さんはそれで良いかしら?」


 何の話だ。


 急に言われても困っちゃう。

 …まぁ、話を聞いて無かった私が全面的に悪いんですけどね。

 どうしよう。

 羊がどうのとか考えてる場合じゃなかった。

 重要な話だったら困ったぞ。真面目に。


 でも、こんな所で将来に関わる重要な話をするとも思えない。

 何かを確認されてるんだから、適当に頷いておこう。


「えっと、良いと思います!」

「本当に?良かった!もっと手間取るかと思ったんだけど、無事に決まったわね」

「??」


 先生は機嫌良く手を叩く。

 そして、サラサラと黒板に何かを書いていく。

 それを見て、私は固まった。


「副委員長…青島(あおしま)瑞穂(みずほ)……」


「それじゃあ、委員長さん、副委員長さん。他の委員会決めはよろしくね」


 オーマイブッダ!


 三年生から委員会とかあるんかい!

 完全に頭から抜けていた。

 副委員長とかマジめんどくさい!!

 どうせクラス全員、自分以外なら誰でも良いとか思ってるんだろ!?

 畜生め!ボーッとするんじゃなかった!!


 ああ、前世と同じ轍を踏んでしまった。

 かつて私は、人付き合いが面倒と言う理由で、我関せずを貫いていた。

 その結果が、数年連続で委員長…。

 もうあの悪夢は繰り返すまい。

 そう、思っていたのに…ガクッ。


 ……なんて。


 まぁ、決まってしまったものは仕方がない。

 うっかりしてたとは言え、やると言ったのは私だ。

 これを覆すのは、私の美学に反する。

 もしかしたら、意外とやってみたら面白いかもしれないし。

 最初からつまらないと決めつけて避けるのも良くない。


「えっと、よろしくね。委員長」

「……」


 委員長は、何も言わずにコクリと頷く。

 私はもう一度黒板を見る。

 委員長の欄には、「(ひいらぎ)陽介(ようすけ)」と書かれている。

 これまた、漫画の主人公みたいな名前だ。私主観だけど。


 陽介(ようすけ)君。即ち委員長は、無表情な少年だった。

 整った容姿で、どちらかと言えば可愛らしいタイプなんだけど、その鋭過ぎる眼光が、全ての印象を塗り替えている。

 つり上がった目元に、負けず劣らずの冷たい目。


 ひと言で言えば、ドSキャラとか、俺様キャラとか、そんな外見だ。

 あっ、全然ひと言じゃないね、ごめん。


 生真面目そうな感じもするし、きっと委員長は自ら立候補したんだろう。

 そう思って尋ねると、彼は首を横に振った。


「眼鏡」

「え?」

「眼鏡かけてるから推薦された」

「うわっ、何て馬鹿な理由」


 …それで断らなかったと言う事は、見た目に反して相当良い子みたいだ。

 案外、こんな冷たそうな外見を裏切って、ボーッとした子なのかもしれない。

 そう考えてみると、親しみを感じた。

 よし、上手くやっていけそうな気がするぞ!


「さてさてー。この私を推薦してくれちゃった人は、積極的に面倒臭そうな委員会に回して行くからそのつもりでねー」

「えぇー!?」

「ふざけんな青島(あおしま)ー!」

「人に責任押し付けたツケが返って来ないと思うなよ!副委員長サマの命令だ!」

「おーぼーだ!」

「言葉の意味を学んでから帰って来い!」


 反発を強めるクラスメート。

 悪い笑みを浮かべる私。

 さながら民衆と愚王だ。

 ……あっ、それだと私やられちゃう。

 パンがないならお菓子を食べれば良いのに!


「って、自然に私が仕切っちゃってたね。ごめん、委員長。委員長がやる?」

「…任せる」

「了解!聞いたかお前らー!今から私がルールだ!!」

「えぇー!?」


 我関せずに本を開き始めた委員長。

 うーん、騒がしいの嫌いなのかな?

 まぁ、とりあえず任されたし、仕事しますか。


 私の傍若無人な采配に、先生はオロオロしてたけど、この私が、本気で反発を生ませるはずもなく、割とスムーズに委員会は決定した。

 どうだ、素晴らしかろう。

 先生、内申良くしても良いのよ?

 ん?小学校にはなかったっけ?うーん、知らんな!


 とりあえずこんな感じで、クラスは上手くいきそうだ。

 良かったね!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「…良かったな」

「え、何でそんなテンション低いのー?」


 家に帰って初日の事を報告し合う。

 けど、何故か(ほむら)のテンションが異常に低かった。

 流石の双子も、心配そうに(ほむら)を見ている。


「いや…俺もさ、委員長にさせられたんだけど」

「マジ?仲間じゃん。…そんなに委員長イヤって事?」

「違くて…副委員長がさ、キャラ濃いって言うか、毒舌って言うか……はぁ」


 やっぱり(ほむら)って、実は女の子苦手じゃない?

 何故ハーレムを作ろうと思ったんだお前は。

 そんな調子じゃ、ハーレムどころか恋人も怪しいぞ。

 …ん?いや、(ほむら)モテてるし、恋人は作れるか。


「若、それはきっとツンデレですよ」

「適当な事言うなよ、晴臣(はるおみ)

「何か嫌われる心当たりはございますか?」

「ない」


 (ほむら)は、別に初対面から嫌われるようなタイプではない。

 良く言えば人当たりが良い。

 悪く言えばキャラが薄い。

 顔は目立つんだけど、喋ると一般人だ。

 庶民派の金持ちは好かれるよ、良かったね(ほむら)


「…少なくとも今、お前に何か馬鹿にされてるのは分かる」

「えぇ!?馬鹿にはしてないよ!可愛いなって思ってただけだよ!」

「普通に馬鹿にしてるだろ!!」


 以心伝心レベルが上がっているようだ。

 結構な事なんだけど、どうして私には伝わって来ないのか。

 この思い、一方通行。

 私ったらなんてポエマー。


「毒舌って言うと、何て言われたんです?」

「昨年のプールで出会ったあの市村(いちむら)の妹みたいな雰囲気でしょうか?」


 市村(いちむら)の妹と言えば、金持ち巨大病院、(とどろき)医院の子息、廉太郎(れんたろう)君の付き人をしている市村(いちむら)兄妹(きょうだい)の妹、市村(いちむら)有香(ありか)ちゃんの事だ。

 彼女の場合、毒舌と言うより、手段を選ばないと言うか、主人を全然敬ってないのが態度に出てると言うか、なんだけどね。

 身近な毒舌と言えば彼女になる。


 ……いやいや、双子も十分ちょいちょい毒舌家だけどさ。

 本人達にそれは言えないよ。

 何倍かになって返ってくるもん。

 触らぬ双子にたたりなし、だ。


「あんまりクラスメートに馬鹿とか愚かとか言うから、止めに入ったんだ」

「おお、委員長の鑑。エライ!」

「いや、普通だろ。…まぁ、それで返ってきたのがさ……やっぱ無理」


 とんでもない暴言を吐かれた様だ。

 (ほむら)の顔色が真っ青な事から、簡単に推測出来る。

 空気を読んだ(おみ)君は、ポンと(ほむら)の肩に手を置く。


「一人にフラれたからって落ち込んだらダメですよ。世の中に女の子は、それこそ星の数ほど…」

「俺フラれたワケじゃないからな!?告ったワケでもないからな!?」

「告白する前にフラれ…」

「好きでもないから!!」


 うんうん、大分顔色が良くなって来た。

 怒りで真っ赤だけど、十分だ。

 気分が落ち込むと、ロクな事にならないしね。

 良くやったぞ、(おみ)君。褒めてつかわそう。


「因みになんて子?」

「えーっと、木原(きはら)木原(きはら)明佳(さやか)

「知ってる子じゃないんだよね?」

「うん、まぁな」


 漫画のキャラでもないのに毒舌とか。

 何そのナチュラル素材。怖いわ。


 でも、考えてもみれば、うちの委員長も結構キャラ立ってるもんな。

 双子だって同じだ。

 もしかすると、私達の周囲には、漫画のキャラだけじゃなく、注意すべき人物がたくさんいるのかもしれない。


 …そう考えるとちょっと怖いのでスル―だ!


「とりあえず、頑張って生き延びようぜ(ほむら)!」

「はぁ…気が重い」

「エイエイオー!」


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