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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(二年生)
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43.プールDE騒動(3)

「こちらにおわすは、かの有名な赤河(あこう)グループの舵取りをなさっている赤河(あこう)緋王(ひおう)様が嫡子、赤河(あこう)(ほむら)様!貴方がたこそ、(ほむら)様のご不興を買って、無事でいられると思っているのでしょうか!!」


「……はぁあああ!??」


 前回までのあらすじ。

 やって来たプールの持ち主の息子が喧嘩を売って来た。

 ので、同じく金持ちの権力を振りかざしての撃退を試みました。


「何言ってんだ馬鹿ー!!」

「流石お嬢!カッコ良い」

「素晴らしい啖呵です、お嬢様」

「ああ、そうだったここお前のイエスマンしかいなかったわ、畜生ー!!」


 矢面に立たされた当の本人は、めちゃくちゃ嫌がっている。

 最終的に、直接喧嘩を売られたのは私だった気がするけど、スル―だ。

 目には目を、歯には歯を、そして権力には権力だ。

 ゲスい?そんな事は無いよ!多分!


赤河(あこう)グループ?そんな会社は知らんな」

「えっ」

「大方、この私に負けそうになったが為に、有りもしない名前をねつ造でもしたのだろうが、この私の目は騙せんぞ!」

「ええー……」


 何か、自慢げに胸を逸らされてしまった。

 これって、どう解釈すべき?

 もしかして、案外赤河(あこう)グループって、大した事ない?


 いやいや、かぐちゃん所のお父さんはめちゃくちゃ接待してくれてたし…。

 てっきり、金持ちの家の人なら、誰でも皆知ってる、印籠的効果を持つ、どデカい会社…と言うか、グループなんだと思ってたけど、そうでもなかった、って事だろうか。


 ある一部だけに、やたら知られてるとか。

 かぐちゃんの旅館は該当して、(とどろき)医院は該当しない?

 もしそうなら、伯父さん!

 世界的企業だと解釈してた今までの私に謝って!


 …なんて、悪いのは私か。

 今の今まで、赤河(あこう)グループについて調べようともしなかったしな。

 一応関係者の癖に、現状を把握してないなんて、ただの私の怠慢だ。


 そして、良く知りもしない最終手段に縋ると、こうなるんですねぇ。

 すっごく恥ずかしい。


「分かってると思うが、瑞穂(みずほ)

「うん」

「お前より、俺の方が今恥ずかしい思いしてるからな」

「マジごめん」


 何で考えてた事が分かったの、とかそういうツッコミは無しだ。

 とりあえず、家に帰ったら秘蔵のお菓子をプレゼントしよう。


 海よりも深く反省した所で、自らまいた種の回収どうしよう。

 最終手段を使えば、問題なく切り抜けられると思ってたけど、どうやら、間違いだったようだし。


 あれですね。

 傲慢に成長する前に、ここで折られて良かった、と思っておきましょう。

 そうでないと、泣けて来る。

 精神年齢アラサーにもなって、調子に乗ってたようだ。ごめんなさい。


 そう思って、内心ヘコんでいると、突然有真(ありま)さんがハッとした表情になる。

 何事だろうと見ていると、有真(ありま)さんは真っ青な顔色で廉太郎(れんたろう)くんに、何かを耳打ちする。

 やがて聞き終えた廉太郎(れんたろう)くんは、信じられないものを見る様な目で、(ほむら)を見た。

 (ほむら)はそっと目を逸らしている。


 これは、有真(ありま)さんは赤河(あこう)グループの偉大さを知っていた、と言う所だろうか。

 ならば、伯父さんに謝っておこう。

 やっぱり、私の思ってた通り、素晴らしいグループ企業なんですね!!


 だからと言って、耳打ちした内容が、想像通りとも限らない。

 ここで全然違う内容だったら、恥なんてもんじゃない。

 さて、どう聞きだしたものか。

 そう思って悩んでいると、ズバッと鋭い声が響いた。


赤河(あこう)グループとこじれて、彼らの持つ医薬工場が抑えられてしまえば面倒な事になりますが、如何なさいますか?坊ちゃま」

「くっ…だ、だがここで敵に背を向ける訳には…」


 悔しげな廉太郎(れんたろう)くん。

 医療業界については、まったく詳しくないし、全然分からないけど、何となく想像は出来る。

 彼らの病院で使う重要な薬か、或いは多くの薬を出荷する工場は、赤河(あこう)グループの持ち物なんだろう。

 それで、どうして廉太郎(れんたろう)くんは赤河(あこう)グループを知らなかったのか…。

 不思議に思ったのが伝わったのか、有真(ありま)さんが申し訳なさげに説明してくれた。


「あーっと、坊ちゃまは、世間知らずな訳ではなく、(とどろき)院長の主催するパーティーに参加している企業の方しか御存知ないだけでして…いやはや、申し訳ない」

「失礼を言うな、有真(ありま)ァ!僕…じゃない、私はきちんと、我が医院と関わりのある企業や代表の名は頭に入れているぞ!」

「その通りです。坊ちゃまは、更にその先の繋がりまでは把握されていないだけです」

有香(ありか)ァ!!」


 …なるほど、納得した。

 と言うか、想像より偉いな、廉太郎(れんたろう)くん。

 私、全然そう言うの知らないんですけど。

 思わず(ほむら)を見たら、(ほむら)も首を横に振っていた。おお、同志よ。


「あぁ、多分そろそろ教わる事になると思いますよぉ?」

「どう言う事?(おみ)君」

「本当は、中学生くらいから会社について教えるつもりだったけど、お二人は賢いから、そろそろその辺りについての勉強を始めても良さそうだって、この間旦那様と桐吾(とうご)様が話してるの聞きましたから」

「僕もそう聞いています。正確に言えば、三年に上がったら、との事らしいです」

「へぇ…」


 知らない所で、着々と跡取り養成プログラムがスタートしているようだ。

 勿論、前世とは違う事をやってみたい、と言うくらいが私の将来に対する希望だから、お父さんの跡を継いで、(ほむら)のサポートをする事に文句はない。

 寧ろ、楽しみなくらいなんだけどね。


「し、しかし、確かに間接的とは言え、我が医院の礎となっているグループに対して、礼を欠いた行動をしてしまったようだ。その事については謝罪しておこう」

「え?いや、こっちこそ煩くしてスイマセンでした…」


 尊大な態度は相変わらずだけど、どうやら謝ってくれたようだ。

 それに面喰った(ほむら)は、目を何度も瞬いている。


 いや、それにしても印籠はやっぱり効果絶大なようだ。

 これからも、しっかり企業研究して、ここぞと言う時の切り札として使わせてもらう事にしようかな。

 なんて、黒い事を考えていたら、「だが」と廉太郎(れんたろう)くんは目を吊り上げた。


「ここで勝負を投げ出す事は出来ない。何故ならば雷帝たるこの私の辞書に、敗北の二文字は無いのだからな…!」


 要するに、負けたまま終わるのは嫌、と言う事らしい。

 何としても戦いを継続したいのだろうか。

 でも、これ以上やってたら、他のお客様に迷惑だ。

 その辺、プールの持ち主の息子としては良いんだろうか。

 …良くないんだろうなぁ。

 有真(ありま)さん、めっちゃ顔真っ青だし。


有真(ありま)有香(ありか)!」

「は、はいっ?」

「……」


「貴様らに、この私の頭脳となる権利をやろう。さぁ、存分にその力を示すが良い!」


 何となく、廉太郎(れんたろう)くんの言いたい事が分かって来た。

 つまり、どうしても負けたままでは終わりたくないから、何か良いアイディアを自分の代わりに出せ、と言う事のようだ。


 二人共、それぞれの困った顔をしていたけど、しばらくして、有香(ありか)さんが溜息をつきながら、口を開いた。


「貴方さまのお父様に報告すれば、我々はとても困った事になりますので、引かざるを得なくなります。しかし、本当によろしいでしょうか?」

「俺は別に構いませんけど…どう言う事ですか?」


 ここから脅しにかかる?どうやって?

 (ほむら)が眉を寄せながら尋ね返す。

 すると、有香(ありか)ちゃんは、無表情にとんでもない事を言い出した。


「ここでその権力を使えば、なるほど、確かにこの場で貴方がたの労力は減るのかも知れません。しかし…その代わりに見ず知らずの多くの患者が苦しむ事になるのですが、貴方がたはそれでよろしいのですね」


「はぁあああ!??」

「えええええ!!?」


 そう言う話、ここで持ち出して来る!?

 マジで!?

 手段選ばな過ぎでしょ!?


 …すいません、取り乱しました。

 と言うか、ヤバくない?

 コイツ…イカれてやがる…ゴクリ。


 脅し方が堂々としたもの過ぎてドン引きだ。

 一切の躊躇なく言い切る辺り。

 もしかして、裏の世界の女とか?とさえ思わせる。


「ちょ…お嬢さん。そりゃないでしょ…」

「神経を疑いますね」


 流石の双子もドン引きらしい。

 二人とも、似たような表情で顔を引き攣らせている。

 こう言う所見ると、双子だね。

 …いや、ホッコリしてる場合じゃないけど。


「我が主がそれをお望みでしたので」


 シレッとした顔で答える有香(ありか)ちゃん。

 ちょ、怖ぇぇぇ!!

 実の兄すらドン引いた顔してるじゃないですか、有香(ありか)ちゃん!?


「ふふふ、良くやったぞ有香(ありか)!と言う訳だ。残念だったな、貴様等。子供の世界に大人の出る幕は無いと言う事だ…」


 いや、格好良く言ってるけど、最初に大人出そうとしたの君ですから。

 いい加減に呆れて来た。

 切り抜けるには、もう素直に謝って、適当に去るべきだろうか。

 そう思いはじめた時、受付にいたお兄さんが駆けて来た。


市村(いちむら)さん!見回り変わってくれてありがとうございましたー!あれ?」


 彼は、私達を見ると途端に笑顔になる。


「貴方がたは!こんな何時間もいて下さるなんて、このプールを余程気に入ってくれたんですね?(とどろき)院長に良い報告が出来そうで嬉しいです!」


「なん…だと……!?」


 お兄さんの言葉で、パッと廉太郎(れんたろう)くんの顔色が悪くなる。

 なんと、無表情女王有香(ありか)ちゃんまでも、真っ青な顔色をしている。


「え?えーと、彼らがここに来ている事って、院長は御存知なんですか…?」


 恐る恐る、と言った表情で有真(ありま)さんがお兄さんに尋ねる。

 すると、お兄さんはキョトン、と言った表情で頷いた。


「当然じゃないですか。彼らは、院長自らお招きしたVIPですよ。ですからそのリストバンドを付けて…あれ?言ってませんでしたっけ?」


 一瞬、(とどろき)医院グループの空気が凍った。

 ですよね…。

 まさか、トップの招いた客に喧嘩売るとか、あり得ないですよね。

 確かに最初は、プールで騒ぐな、と言う注意ではあった訳だけれど、途中から、完全に私怨になってたもんね…。


 彼らにとっては、私の印籠より効果が大きかったらしい。

 すっかり元気をなくした廉太郎(れんたろう)くんは、それでも負け惜しみを言いながら、二人を引き連れて去って行った。


「くそっ、貴様等、これで済むと思うなよ!?」

「…さようなら」

「ご迷惑をおかけしましたー!」


「えーと、オレ、何か余計な事言っちゃいました…?」


 困惑気味のお兄さんに、適当に事情を説明すると、お兄さんも納得してその場を立ち去って行った。

 残された私達の間に漂うのは、微妙な空気。


「…あと、どうする?」

「俺、すげー疲れた。帰りたい」

「若にさんせー」

「僕も出来れば、帰りたいです」

「じゃあ、帰ろうか…?」


「みんなー!これおもしろいよー!」

「うぉーたーすらいだーって言うんだって!!」


「あ、二人共…」


 途中から完全にログアウトしていた二人が合流する。

 キラキラした笑顔は、心を真っさらにしてくれる気がした。


 よし、決めたぞ。

 もうひと遊びして、今日の事は忘れる!!


「分かった!私、もうひと泳ぎして来る!!」

「ええ!?タフだなぁ、瑞穂(みずほ)…」

「お嬢が言うなら、いっちょお付き合いしますか」

「お嬢様の仰せのままに」

「じゃあ行こう!!」

「わーい!!」


 今日の教訓。


 面白そうだからって、変な人に付き合わない!!


 …はー、つかれたー。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「あ~そ~ぼ~」もしくは「楽しそうだから僕も混ぜてよ~」たったそれだけを言えばいいのに。プライドが邪魔して勝負にかこつけてしか相手と付き合えないメンドクサイ子供。 フィクションとして楽しむ分…
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