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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(二年生)
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42.プールDE騒動(2)

「くっ、何故だ…何故勝てん!」


 えー、謎の勝負を吹っ掛けられてから数時間後。

 廉太郎(れんたろう)くんは、その場に崩れ落ちていた。

 悲壮感漂う表情は、周囲からの同情を誘う。


 あんまり長々と語ってもアレなので、ハイライトで勝負の内容を振り返ろう。


 えーと、まずは一回戦。

 どうして勝負する羽目になったのか、正直付いて行けない私達だったけど、勝負と言われて逃げるのも気分が悪い、と言う事で受ける事になった。

 その内容は、「石拾い」だった。


 石を、適当にプールの中に投げ入れて、多く広い集められた方の勝ち、と言うようなルールだった。

 石と言っても、普通の堅い石じゃなくて、人工のカラフルなヤツだ。

 因みに、どこから出したとか、そう言うツッコミはしちゃ駄目なんだそうだ。

 有香(ありか)ちゃんが言ってた。


 これに手を上げたのが、ちーちゃんとゆーちゃんだった。

 可愛らしいコンビが立候補した理由は、何か楽しそうだから、らしい。

 そんなんで良いのか、と言いつつ、別に勝ち負けにこだわりはなかったから、誰からも反対意見は出ず、そのままゴーサインが出た。


 何故か、逆に廉太郎(れんたろう)くんから文句が出た。

 真面目にやれ、と言う理由だったけど、いや、急に巻き込まれてやる気出せとか流石に難しいです。

 それなりに楽しんでる私が言うのも何なんだけどね。


 で、チビッ子二人に本気を出すのは哀れだから、的な事を言って、廉太郎(れんたろう)くんはハンデとして一人で出てくれる事になった。

 その結果、ハンデとか要らなかったんじゃないか、と言うレベルで二人の圧勝となってしまった。

 私達としては、喜ぶべき結果なんだろうけど、ちょっと涙目の廉太郎(れんたろう)くんを見ていたら、すっごい複雑な気持ちになった。


 で、二回戦。

 その内容は、球入れならぬ、「石入れ」だった。


 さっき使った石を、球入れで使う様な籠に投げ入れると言う競技だ。

 プールの中でやるから良いんだろうけど、プール関係なくないかな?と思ったのは内緒の方向で。

 聞いてみようかなぁ、と思ったら、何処か察した様な顔で、有真(ありま)さんから面倒な事になるから聞かない様にと忠告を受けてしまったし。

 ちょっと残念である。


 これに出る事にしたのは、私と(ほむら)だ。

 競技内容的に、そこまで気にする必要はないだろうけど、先に私達子ども組が出てしまった方が良いだろう、と考えての事だった。


 そして、またまた廉太郎(れんたろう)くんから文句が入る。

 子供だけで出るつもりかと言われても、保護者二人も高校生ですけど。

 どう答えたものかと思っていたら、やっぱりと言うか、廉太郎(れんたろう)くんは、ハンデとして自分が一人で出る、とまたもや言ってのけた。


 その男気は素晴らしいんだけど、君、さっき負けて泣いてなかった?


 そんなツッコミは何のその。

 廉太郎(れんたろう)くんは、嬉々として勝負に臨んだ。

 いっそ接待勝負しようかと思ったけど、意外と勝負事には真面目な(ほむら)が、手を抜くのは相手に失礼だからちゃんとやろう、と言い出したから、普通にやった。


 途中までは良い勝負だった。

 だった、んだけど、さっきの石拾いで体力を消耗していたせいか、廉太郎(れんたろう)くんの動きが、途中から鈍くなった。

 結果、私と(ほむら)の圧勝に終わってしまった。


 因みに、三本勝負だとしたら、ここで勝負が決まった事になる。


 でも、誰も三本勝負などと言った覚えは無い、と言う素晴らしい屁理屈が発動して、三本目の試合が行われる事に決まった。

 幾ら金持ちのお坊ちゃんとは言え、いや、寧ろ金持ちのお坊ちゃんなんだから、自分の言葉と態度には責任を持つべきだ。

 そう思って、屁理屈は理屈じゃない、と言う説明をブチかまして、流石に勝負から身を引こう、と私は考えた。


 んだけど、ちーちゃんと言う名の天使が、楽しいから別に良いよ、と言った事で素直に応じる結果になった。

 メロメロして頷いた。

 後悔はしていない。


 まったく泣いてない泣きの三回戦。

 これは、五十メートル自由形に決定した。


 何でいきなり本格的なんだよ、と思ったけどスル―した。

 下手にツッコミを入れると、面倒な事になるのだと、私は既に学んでいた。


 一応説明すると、勝敗の決め方は、二人のタイムの平均が、より短い方が勝つ、と言うルールになっている。

 私達の代表は双子。

 で、(とどろき)医院チームは、何故か廉太郎(れんたろう)くんと有真(ありま)さんだった。


 いや、有真(ありま)さんは分かるけど、廉太郎(れんたろう)くん出過ぎ!


 我慢出来ずに、心の中でツッコミを入れた。

 すると、まさか私に泳がせるつもりですか?的な冷たい視線を有香(ありか)ちゃんから頂いてしまった。

 有香(ありか)ちゃんは、心でも読めるんだろうか。

 何それ怖い。


 色々言いたい事はあるけれど、とりあえず廉太郎(れんたろう)くん本人は満足そうだったのでスルーして試合の行方を見守った。


 その結果、まぁ見事に双子の圧勝だった。

 本人達曰く、赤河(あこう)家にお仕えするには、水泳技術にも長けないといけない、との事だった。

 これでもまだまだお父さんや西(にし)さんには及ばないって…二人どんだけなの!?


 と、まぁその気もなかったのに、私達は三連勝してしまった。

 しかも、結果的に圧勝だ。

 人数的な問題を無視するにしても、相手側、と言うか廉太郎(れんたろう)くんの作戦ミスが、この結果を招いたような気がするんだけど、本人はそうは思っていないらしく、冒頭のセリフに繋がったワケだ。


 いやいや、何故勝てない、じゃないから。

 理由結構分かりやすいから。


 チラ、と視線を動かすと、皆大体一様に、似た表情をしているのが見えた。

 デスヨネー。

 私は思わず肩を落とす。

 遠目に見てる分には面白いキャラなんだけどね、廉太郎(れんたろう)くん。

 絡まれると疲れると言うか、何と言うか…お腹いっぱいな気分になってしまう。


「く、クク…こうなれば、私の秘められし真の力を解放せざるを得ないな…」

「いや、そう言うのあるんなら、最初から出してくださいよ」

「何だと、貴様…」


 あっ、思わず本音が漏れちゃったテヘペロ。


 なんて冗談は通じないよね。

 めっちゃ睨まれてるし。

 助けて誰か!って、目を逸らすとは何事か!!

 天使達は……飽きて別の遊び始めてるし。可愛いから許そう。


「私に意見するとは、生意気な娘だ…名を聞いておこうか」

「何と言う今更感…」


 そう言えば、彼らの名前は一方的に知った訳だけれど、私達の名前を、彼らは知らないんだったね。

 と言うか、睨みながら名前を聞くとか、どう言う状況なんだコレ。


瑞穂(みずほ)です。青島(あおしま)瑞穂(みずほ)

「ふむ…よかろう、ミズホ!貴様に、この私と勝負する栄誉を与えてやる」

「え、お断りします」

「な、何だと…!?」


 ガーン、じゃないから。

 いい加減疲れたから。

 私も、ノリとネタで生きてるみたいな所あるけど、限度があるから。


 溜息混じりに即答すると、ヨロヨロと後ずさりする廉太郎(れんたろう)くん。

 まるで、スポットライトでも当たっているかのような動きに、思わず笑ってしまいそうになる。

 舞台役者か。


「断れば、後悔する事になるぞ」

「しないのでご安心ください」

「くっ…」


 悔しげに歯ぎしりする廉太郎(れんたろう)くん。

 歯ぎしりって身体に良くないらしいけど、大丈夫なんだろうか。

 明後日の方向に心配してしまう。


「覚悟は良いのだな!?」

「えっと、どうぞー」


「…ねぇ若。ああ言うのを三下って言うんですよー」

「ちょ、おま…本人目の前にして言う事じゃないだろ」

「あれ、若ったら三下の意味知ってるの?スゴイですねぇ」

「俺の事も馬鹿にしてる?」

「いえいえ、ソンケーしてますよぅ」

「…晴臣(はるおみ)。静かにしておけ」

「はいはーい」


「くそっ、本当に覚悟しろよ!?」


 分かりやすい地団太。

 あれっ、何かデジャヴ。

 うーん…あっ、昔の(ほむら)……。


「…おい、瑞穂(みずほ)。お前、また余計な事考えてないか?」

「あの頃の(ほむら)は可愛かったなー、と」

「今は俺の事は良いから…!!」

「照れるな照れるな」

「照れてねぇから!」


「無視するなー!!」


 わぁ、ごめんなさい!

 ちょっと今、素で忘れてました。

 めんご!


「良かろう…ならば、食らうが良い!」


 スッと目を細めて、手を前に突き出す廉太郎(れんたろう)くん。

 さながら、ファンタジー世界の魔法の詠唱みたいな動きだ。

 その洗練された動きから、かなり慣れている事が伺える。


 ……業が、随分と深いみたいですね……。


「我が守り手たる清廉で高潔な光の使徒よ、我が声に応え、我を害する巨悪を…」


「要するに坊ちゃまは、お父さんに言いつけるぞ、と仰せです」


「……」

「……」


 大仰に何を言うのかと思えば、アッサリと有香(ありか)さんに遮られた挙句、言いたかった事って、そう言う事ですか!?

 思わずボーゼンとしてしまう私、悪くないですよね?


 何だお父さんに言いつけるぞ、って。

 子供か!子供だ。


「子供の喧嘩に、親が出てくるのですか?」

「すいません、皆さん…。(とどろき)院長は、かなりの親馬鹿でして…」


 (まさ)君の問いに、申し訳なさそうに答える有真(ありま)さん。

 うわっ、金持ちメンドくせぇ。


 私は、若干眉を寄せて溜息をつく。

 こうなれば、もう最終手段を取るしかない。

 信じてるよ、伯父さん!!


「そっちこそ、覚悟は良いんですか?」

「何…だと?」

「は?おい、瑞穂(みずほ)。何言って…」


 スッと、文句を言って来そうな(ほむら)を制する。

 大丈夫、私を信じて、とばかりに頷いてみせれば、(ほむら)は渋々黙った。

 理解が早くて助かりますな。


 そうして、訝しげに私を見る廉太郎(れんたろう)くんと目を合わせる。

 この切り札は、出来れば使いたくなかった。

 だけど、使わざるを得ない。

 と言うか、使った方が楽な気がする。


 食らえ、これが私の印籠だ!!


「この方をどなたと心得ているんですか!?」

「は、俺??」

「こちらにおわすは、かの有名な赤河(あこう)グループの舵取りをなさっている赤河(あこう)緋王(ひおう)様が嫡子、赤河(あこう)(ほむら)様!貴方がたこそ、(ほむら)様のご不興を買って、無事でいられると思っているのでしょうか!!」


「……はぁあああ!??」


 矢面に立たされた(ほむら)は、目を白黒させて、口をパクパクさせている。

 哀れな…まぁ、私のせいなんですがね?

 え?ゲスい?知らんな。


 むしゃくしゃしてやった。

 後悔はしていない。


「何言ってんだ馬鹿ー!!」

「流石お嬢!カッコ良い」

「素晴らしい啖呵です、お嬢様」

「ああ、そうだったここお前のイエスマンしかいなかったわ、畜生ー!!」


まだ終わりませんでした。

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