41.プールDE騒動(1)
青い空、白い雲、白いプールサイド!
やって来ました、プールの日です!!
例の如く、西さんが車を回してくれる事になって、皆でワイワイと騒ぎながら、プールへとやって来た。
車で三十分くらいの距離だから、そこそこ遠いかな?
でも、小さいと聞いていた割には、綺麗で清潔感のある入り口だし、そのくらいの時間我慢しただけで来れるプールとしては、全然文句はない。
これで中が汚い、なんて事だったら、まぁ文句はあるけど、大丈夫そうだし。
と言うか、お父さんが紹介してくれる場所に間違いは無い!
受付で、スタッフのお兄さんに入場券を差し出すと、何故か驚いた顔をして、少し待つようにと言われる。
えぇー、何で何で?実は期限切れとか?
いや、お父さんに限ってそんな事あるはずがない。
確信しながら、スタッフのお兄さんを待っていると、やがて笑顔でゴム製のリストバンドを持って来た。
プールとか温泉とかで貰う、お客を管理する為のアレですね。
多分、数が足りなかったか何かだったんだろう。
文句を言われるでも無し。
私は、気にしない事にして更衣室へと駆け込んだ。
「いえーい、プールー!!」
「プールー!!」
ちーちゃんと二人で着替え終えると、すぐさまプールサイドへと向かう。
勿論、走ったら危ないから、早歩きでね。
良い天気だし、物凄く混んでたりするかな、と心配していたけど、そこそこの人しかいない。
確かに、お父さんの言う通り、少し小さいけど、ウォータースライダーまで付いているし、これは楽しめそうだ。
正直な所、私はただプカプカ浮かんでるだけで一日過ごせるし、狭かろうと何の問題もないしね。
「おまたせ!みーちゃん、ちーちゃん!」
「おお、ゆーちゃん!」
ご機嫌で駆け寄って来るのはゆーちゃんだ。
今日は今の所溜息ついてないし、やっぱり誘って正解だったかな。
私は、ニコニコしながら頭を撫でてやる。
あー、可愛いー。
「ホムラくんたちは?」
「あっちの方だよ」
「あっちって…女の人しか見えないけど」
ちーちゃんの問いかけに、ゆーちゃんは指をさして答える。
でも、幾ら目を凝らしても、ゆーちゃんの指す方向には、女の人しか見えない。
キャーキャーって、黄色い声しか聞こえない。
カッコ良い、可愛いって……あっ、察し。
「ゆーちゃんは声掛けられなかったの?」
「?うん。ぼくはべつにいいんだって」
「……そ、そう」
これが、格差社会!!
私は、ゆーちゃんの頭を撫でる手の速度を上げた。
いやだ、泣けちゃう。
ゆーちゃん本人が、特にその意味を理解していないのが幸いだ。
て言うか、ゆーちゃんって、焔の親友キャラだったんだよね?
あんな、小二の内からモテる男を友に持って、良くグレなかったな。
私ならグレるわ。
「むぅぅ…」
「どうしたの、ちーちゃん?」
「…何でもないもん」
ちーちゃんは、女の人の集団と、自分を見比べる。
そして、そっと自分の胸に手を当てて、大仰に顔を顰めた。
あっ、察し。
ここにも格差社会が…恐ろしいな。
因みに私は、貧乳も良いと思うよ。
て言うか、小二で巨乳とか嫌だわ。
私もロリだから、安心なさいな、ちーちゃん。
そんな気持ちを込めて、ちーちゃんの頭も撫でておいた。
「お嬢様」
「あれ、雅君」
「お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」
「もう大丈夫なの?」
「はい」
サラリとクールに言ってのけるのは雅君だ。
いつの間にやら近くにいる辺り、流石だよね。
もう大丈夫って言ってるけど、いや、あの辺のお姉さん呼んでるけど?
「やだぁ、そんな子より、アタシとおしゃべりしましょうよぉ」
「そうよそうよ」
ほらぁ、グラマラス美女が呼んでるよ。
何だあの乳は。けしからん。
しかもヒモパンみたいなの履いてるじゃないか。
泳いだら確実に脱げちゃうよ。けしからん。
「ほ、ホントに良いの?雅君」
「当然です。僕にとって、お嬢様と過ごす時間の方が大切ですので」
「うわぁ…」
そう言う事平然と言ってのける辺り、雅君て凄いよね。
結構軽い感じの臣君が言うと、大した破壊力はないんだけど、真面目そうって言うか堅そうな雅君が言うと、凄い破壊力だ。
思わず照れてしまう。
お姉さんをからかってどうする気!?
なんちゃって。
「おいおいマサ。そう邪険にしてやるなって。可哀想じゃないか」
「鬱陶しいのは本当だ」
「いやぁ、弟がゴメンね」
爽やかな笑顔で、臣君が女の人の集団を抜けて来る。
さりげないボディータッチとリップサービスで道を開いて来る辺り、ちょっと尊敬してしまう。
何だあれ。手慣れてやがる。
「じゃあ、お兄さんは遊んでくれるのかしら?」
「うーん、そうしたいのは山々なんだけど…今日は、お姫様のエスコートをしないといけないから。また今度誘ってよ」
「わっ」
私の後ろから抱きつく形で臣君がかぶさって来る。
何だ、お姫様って。
お姫様と言えばちーちゃんだろう。
そんな気持ちを込めて、ジトッと見上げると、相変わらず爽やかな笑みを浮かべていた。
ウインクがサマになる男とか、ちょっと腹立つのは私だけだろうか。
ほら、グラマラスお姉さんがメロメロな様子で許しちゃったじゃないか。
いっそお姉さんの波に置いてきたかったと思う私は酷い人間だろうか。
「お、おい…俺を、置いてくなよ…!!」
やっと、と言うような表情で這い出て来たのは焔だ。
普段目立たないけど、ちょいちょい前世のコミュ障引きずってる焔にとって、お姉さん達の中にいるのは、結構キツかったようだ。
顔色がそこそこ悪い。
哀れ、焔。
一人なら、そこまでは絡まれなかっただろうに、双子といたばかりに…。
「どんまい、焔」
「ちょ、何で俺急に憐れまれなきゃならないんだよ」
ポン、と肩に手を置いたら、焔が口を尖らせた。
いやいや、ここは憐れまざるを得ないでしょう。
早く女慣れしろよ、焔。
…いや、それもつまらないな。
やっぱり女慣れしないで、いつまでもそのままでいてね、焔。
「…今度は馬鹿にされてる気がするぞ、瑞穂」
「気のせいじゃない?」
可愛く思ってるだけだし。
私、嘘ツカナーイ。
「おい、そこの愚民共!何を群がっている。邪魔だ、散れ!」
「はぁ?」
さて、結構お姉さん達に時間を削られてしまったし、早く遊ぼう、と思った瞬間偉そうを通り越して、ちょっと痛い命令が飛んで来た。
とは言っても、まだ声変わりしてなさそうな、可愛い男の子の声。
何と言うアンバランス。
私は、目を瞬きながら声のした方向を見る。
他の皆も、一斉にそちらを見ていた。
「ふん。この私のプールで女を侍らせるとは、とんだ愚か者もいたものだな」
「いや、皆さんウチの坊ちゃまが申し訳ありませんー」
中二病でも患っているのか、何かちょっと片手で片目を抑えるようなポーズで、ドヤァ!ってな表情で舌打ちをする男の子。
小学校中学年から高学年くらいの外見だ。
イケメンというよりはキツメンな感じの男の子だ。
そんな彼の左右には、良く似た外見の、男の人と女の人。
男の人は、人が良さそうな顔で、背は高そうだけど、その分背中が曲がっていて印象としてはヘコヘコした人、と言った感じだ。
年齢は、多分双子くらいの年齢かな?
女の人は、絶対零度、的な表現が相応しい感じに無表情。
背は、そこまで高くないけど、態度は大きそうだ。
男の人とは反対に、胸を若干反って、自信満々な様子で立っている。
年齢は、男の人より下、男の子より上って感じだろうか。
「頭を下げるな、有真ァ!なめられるぞ!!」
「いやいや、すいませんすいません……」
「歯をくいしばれ、有真ァ!!」
「ふぐぅっ!!」
「…馬鹿兄」
見た目通り気が弱いのか優しいのか、男の人が頭を下げる。
多分、偉そうな男の子のフォローをしているんだろう。
けど、そんな態度が癇に障るのか、男の子は男の人に怒鳴り散らしている。
女の人は見下したような冷たい目で二人のやり取りを見ている。
ねぇ、止めなくて良いの…??
「貴様ら、名を名乗れ」
「はい?」
「日本語も分からんのか?その耳は飾りか?それとも暑さで脳みそが溶けたのか?それはご愁傷様だな」
「えーと、有香…。説明してあげてくれる?」
フンッと鼻を鳴らす男の子の横で、男の人が申し訳なさそうに眉を下げながら、女の人に説明するよう促す。
ポカーンとしている私達にとってはありがたい指示です。
言われた本人は、スッゴイ迷惑そうな顔してるけど、スル―だ。
「こちらの方は、轟廉太郎様。このプールを管理している、轟医院のご子息であらせられます。そして廉太郎様は、本日は避暑の為に、このプールへいらっしゃいましたが、ご自身よりおモテになっている皆様をご覧になって、大変憤りを覚えた為に、文句を言いにわざわざいらした、と言う訳でございます」
えっ、その説明で良いの?
私達のポカーン、は継続中だ。
お姉さん、様子からしてその男の子…レンタローくんに仕えてるんじゃないの?
めっちゃ馬鹿にしてない?普通なの?
驚きながら見ていたら、別に普通な事じゃなかったらしく、レンタローくんが、烈火の如く怒り出した。そりゃそうだ。
「有香ァ!お前、何と言う説明をしているのだ。僕は…じゃない、私はそのような事を言いに来たのではないぞ!」
「この通り、廉太郎様は大変単純でいらっしゃるので、適当に謝って頂ければ、ご機嫌も戻られるかと」
「無視するな、貴様!」
ぷんすか、と怒るレンタローくん。
完全スルーのアリカ?さん。
えっ、これどう対応すべき?
私は、そっと焔に口を寄せて、相談し始める。
「主要キャラ?」
「漫画では見た事ない。けど、俺アイツ見た事ある気がする」
「え?現実で?」
「そう。轟医院って、CMやってるだろ?それで」
焔の言葉に軽く頷く。
そう言えば、手広くやってる病院ってイメージがある。
そうか、そこの息子か。
「瑞穂は見た事あるか?」
「流し見してて、全然覚えてない」
「真ん中が轟廉太郎。で、多分だけど、隣の男の方が、付き人の…確か、市村有真で、女の方が、その妹の有香…だったはず」
「何でそこまで知ってるの?」
「字幕付きでCMに出てるんだよ」
「うわぁ…何そのCM。今度見よう」
ついでに漢字まで教えてもらう。
なるほどなるほど。
しかし焔の記憶力は流石ですな。羨ましい。
「おい、貴様等!そこでコソコソ何をやっている!」
「え?別に何もしてませんよ?ねぇ」
「ああ、そうだよな。何もしてませんよ、轟さん」
二人で、シレーッと嘘をつく。
この辺りは、息ぴったりだ。
「ねー、ミズホちゃん。わたし、つかれてきちゃった…」
「ん?んー、そうだね。早く泳ぎたいねぇ」
「とりあえずどうします、お嬢?謝っときます?」
「だが、先程の騒動は僕達のせいじゃないぞ」
「いやいや、俺達がイケメン過ぎたせいだから、俺達のせいでしょ」
「…晴臣、そう言う事シレッとした顔で言うなよ…」
「みーちゃんは、ぼくがまもってあげるからね!!」
「ぼ、僕を無視するなぁ!!」
そんな事言われても…。
私達みたいな自由人に対して、ずっと偉そうには喋れないと思います。
一応、私は聞く方向でいるんだけどね?
え、嘘じゃないですよ?
だって、何かこの人、可愛いし。
「そちらがその気ならば、もう容赦はするまい…有真!」
「えぇー?やるんですかぁ?お客様に迷惑ですし、やめましょうよ…」
「フンッ、臆病風に吹かれたか、有真よ。私達の使命を忘れたか!」
「このプールの平穏を守る事です」
「…今乱してるのは、俺達のような気がー…」
「黙れ、有真!」
「痛い!坊っちゃん、殴るのはナシですってばぁ!!」
「……馬鹿兄」
「もう、無視して遊びに行っちゃいます?」
「臣君。それは可哀想でしょ…」
私達の自由会話もそうだけど、廉太郎くん達も、放置してると、どんどん会話が進んで行ってしまって、回収不可能になってしまう。
ここは、早めに回収を試みるべきだろう。
…無理かもだけど。
「私は今ここに、水龍の加護を得る為の謝肉祭を…」
「我々とプールに関する勝負をして、貴方達が負けた場合、速やかにお帰り頂きたい、と言う提案です」
「遮るな、有香!」
「……」
「痛い!お兄ちゃんを盾にしないで、有香!」
「……勝負??」
何だか、変な展開になってしまった所で、以下次回!!
長くなりそうだったので切りました。




