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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(二年生)
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35.反省

久々のグダグダ回です。

麻子(あさこ)先生に会った!?マジかよ、瑞穂(みずほ)


 えー、またしても衝撃の事実発覚。

 木下(きのした)さんの正体は、メインヒロインの一人、十村(とむら)麻子(あさこ)さんでした。


 本当は、黙ってようかなーと思ってたんだけど、気が咎めたので(ほむら)に報告。

 結果、目の前であからさまに溜息つかれてます。

 か、哀しくなんかないんだからねっ!勘違いしないでよねっ!


「いや、不良っぽいって聞いてたから、全然イメージが一致しなかったんだよね」

「あー、儚げ系美人とか言ってたっけ?」

「そうそう。麻子(あさこ)ちゃんマジ女神」

「そう言うの要らないから」

(ほむら)が最近冷たい!」


 最近って言うかずっとだろ、とか言われたら立ち直れないので、この辺で、ふざけた話は置いておく。

 そして、真面目に考えてみると、結構戦慄が走る。


 声を掛ける人掛ける人が、皆メインキャラってどう言う事?


 こうして見ると、双子はオアシスだね。

 全然漫画関係ないって話だし。

 でもそれ以外の遭遇率がハンパない。

 運命と言うヤツだろうか。

 避けようとしても遭遇するって何?どゆ事?


「この観察日記(笑)でー」

「(笑)って言わないでよ。本気で書いたんだよそれ」

「家庭環境云々って書いてあるけどさ」

「まさかのスル―!と言うか、何でそれまだ持ってるの!?捨てよう!?」

「やだね。二十年後位に思いっきり笑ってやる」

「鬼!悪魔!イケメン!」

「何で最後褒めるんだよ…」


 取り返そうとしたけど、背丈の問題か、歯が立たなかった。

 畜生。

 私の成長期はいつだ。

 と言うか、普通女子の方が成長早くない?

 何で私、未だに小さいの?

 うーん、でもゆーちゃんよりは大きいし…(ほむら)が異常なのか。

 そう言う事にしておこう。


「もう一回聞くけど、家庭環境云々ってどう言う事だ?」

「黙秘権を行使する!」

「お前に黙秘権は無い。俺の将来に関わるかもしれないし、素直に話せ」

「関わんないよー。そう言う問題じゃなかったし」


 スッと軽く目を逸らす。

 と、(ほむら)が疑わしげに目を合わせようとして来る。

 ちょっ!何で私こんな疑われてるの!?


「本当か?でも、これ見る限り、晴臣(はるおみ)晴雅(はるまさ)もその場にいたんだろ?」

「そうだね」

「なら、俺に話しても良いんじゃないか?今更一人に知られた所で良いだろ」


 うっ。

 痛い所を突かれた。

 ここは、大人の威厳を保つ為にも知られてはならない。

 本音など絶対に!!


「……」

瑞穂(みずほ)。まさかとは思うけどな」

「うん?」

「話すの面倒臭いとか、そう言うどうでも良い理由じゃないよな?」


 …アウトー。


「……も、モチロンダヨ!」


「うわっ、コイツ最悪だ!!やっぱお前に黙秘権なんてねぇ!はーなーせー!」

「いひゃいっ!いひゃいいひゃいっ!」


 あー、ほっぺ抓らないでー!!

 痛いー、伸びるー!

 そして傷付くー!心が傷付くー!


 しばらく、ドタンバタンと取っ組み合いをした。

 途中、お母さんと目が合った。

 助けを求めたら、グッと親指を立てて、頑張って!って励まされた。

 今欲しいのは、励ましではない。


 更に、双子も通りかかった。

 二人は、お父さんから貰った、使用人課題をやっている真っ最中。

 多分、休憩か何かのタイミングだったんだろう。

 助けを求めたら、(おみ)君には笑顔で、楽しそうですねーって言われた。

 あろうことか、(まさ)君にも笑顔で、お二人の問題はお二人で解決出来るはずです、って言われて、助けて貰えなかった。


 み、味方なんていなかったんだ!

 畜生、グレてやるー!


「ほらほら、早く話せば楽になるぞ?」

「うわああ、セクハラだー!(ほむら)のセクハラ課長ー!」

「意味分かんねぇよ!何だ課長って。てか、小二相手にセクハラもないだろ」

「同い年だしさ、そこは」

「中身中学生だって言っただろ」

「生まれてからの年齢も加算すれば結構行ってるよ。わぁ、ロリコン!」

「その方式で行くと、お前なんてババァだろ」

「あーあー、聞こえないー!!」


「二人で、一体何をしてますの?」


「あっ」

「あっ」


 しばらく騒いでたら、伯母さんに見つかった。

 私と(ほむら)は顔を見合わせて、頷く。

 そして、素早く頭を下げた。


「「申し訳ありませんでしたー!」」


 でもまぁ、言い訳虚しく、めっちゃ説教食らったけどね。

 赤河(あこう)の息子、青島(あおしま)の娘としての姿勢云々って。

 胎教に悪いですよって、さりげなく逃げようとしたけど、逃げ切れなかった。

 いや、あの、素直にスイマセンでした。


「まったく…。もうすぐに兄、姉になるのですから、少しは落ち着いて下さいな」

「申し訳ありません…」

「反省してます」


「はぁ」


 伯母さんは、疲れたように溜息をつく。

 そりゃそうだ。

 喧嘩を見て、俺も混ざるぞ!ってな旦那や、ガンバ!って親指立ててスル―する義理の妹なんかに囲まれている中で、ちゃんと見咎めて、注意出来るような、こんな普通の人が、疲れないはずない。

 お母さんも見習うべきだよ。

 正直、下の子がどう育つか心配だよ。


「…ですが、貴方達は年齢に比べて大人びていますし、こうして二人でいる時だけでも、子供らしくいられるのは、望ましい事なのかもしれませんわね」


「えっ?」


 伯母さんへの称賛の言葉を考えていたら、ポツリと、伯母さんが呟く。

 傍から見ていると、そんな感じなのだろうか。

 不思議に思って尋ねてみると、伯母さんは笑った。


「私、いつでも子供らしく過ごさせて頂いておりますが…」

「ふふ…もしかすると、無意識なのかしら?」

「??」

「確かに、貴方達は誰といる時も、子供らしく楽しそうにしていますが、それでもやはり、二人だけでいる時の方が、のびのびとしているように…そうですわね、少なくとも(わたくし)の目には、そう見えておりますのよ?」


 そう言うと、伯母さんはヨシヨシと私の頭を撫でる。

 何だかんだ、私達、心配かけちゃってるのかな?


「ただ、それと今の乱闘騒ぎは、全く別の問題ですわ」


 油断した瞬間、キッパリとそう言われ、最終的に結構なお小言を頂く。

 うん。

 伯母さんを怒らせたら駄目ですな。

 理解した。


 満足したらしく、この場を立ち去る伯母さんの背を眺める。

 しばらくその場を、沈黙が支配した。


 やがて(ほむら)がゆっくりと口を開いた。


「これで有耶無耶になった、なんて思ってないだろうな」


 魂は余所から来てるだろうに、遺伝子って怖いね。

 その声のトーン。

 伯母さんそっくりっす。まじパネェっす。


 諦めた私は、ようやく説明を始めた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふーん。それは確かに俺には関係なさそうだな」

「…だから言ったのにー」


 満足げに笑う(ほむら)の一方で、私は肩を落とす。

 中身のないおしゃべりは好きだけど、こう言う詳細説明とか苦手なんだよ!

 恨めしげに見たら、ニヤッと笑われた。

 くうう、やはりナメられている気がする…。


「まぁ、それはともかくとして、これから麻子(あさこ)先生がグレる可能性ってまだあると思うか?」

「断言は出来ないけど、少なくとも、今年すぐにどうこう、って事はないと思う。好きな人も出来たみたいだし」

「好きな人?」

「あっ」


 これは言わないつもりだったんだ!

 何も思わないで、ツルッと言ってしまった。

 反射的に自分の顔面を殴る。

 痛い。反省した。

 でも、過去は変えられないんだよな。

 私は、シラーッとした顔で誤魔化しに出る。


「いや、何でもない」

「お前、目の前でそんな激しい反省してるの見せられて、はいそうですかって、スルー出来ると思うのか?」

「思わない」

「ついでだし、言っちまえよ」

「うう…可哀想な麻子(あさこ)ちゃん…」

「可哀想なのはお前の頭だろ」


 私は、泣く泣く状況を説明した。

 即ち、何かうっとりとした表情で、(おみ)君を見つめる麻子(あさこ)ちゃんの構図を。


「…は、晴臣(はるおみ)ぃ!?……勘違いじゃなくて?」

「ない。断言出来るね。何しろ、(まさ)君が渋い顔して忠告してるの聞いちゃったし」

「仲悪いって言ってなかったっけ?」

「と言うか、相性が悪い?(おみ)君、今の麻子(あさこ)ちゃんみたいな人嫌いみたいだしー」

「えぇー」


 (ほむら)が顔を顰める。

 差し詰め、出会った当初からしばらく向けられていた、(おみ)君からの敵意に満ちた爽やかな笑顔を思い返しているのだろう。

 正直、あれはキツかった。

 (まさ)君みたいに、分かりやすく睨まれてる位の方が楽だった。


「いや、ないな。晴臣(はるおみ)はない」

「見た目は超お似合いだけどね。美男美女フー!」

「見た目はなー。…と言うか、麻子(あさこ)先生って、どうしてそう無茶っぽい相手に惚れるんだ?」

「うーん。何か燃えるんじゃない?逆境とかに」

「とんだマゾじゃねーか」

「…」


 恐ろしい。

 麻子(あさこ)ちゃんの様子を思い返すと、笑い飛ばせない。

 冷たくされてもうっとりしてたし…いやまさか。


「ま、まぁ、麻子(あさこ)先生が、フリーの晴臣(はるおみ)好きな内は、俺の婚約者がどーのって流れは発生しないだろうし、親父を好きになる事もないだろうし、もう気にしなくて大丈夫っぽいな」

「えー?案外、原作の流れよろしく、全然振り向いてくれない(おみ)君に身を引く事を決意した直後辺りに(ほむら)と知り合ってどーの、って流れとかあるかもよ?」

「おい、リアルな想像はやめろ。その通りになりそうで怖いだろ!」


 ハーレムが怖い、と言うよりも、かぐちゃんのフラグが立った状態で、自分に女の人の影が増える事が怖いんだろう。

 (ほむら)は、若干青い顔で溜息をつく。


「あと、折角だから、ちょっと思った事を聞いて欲しいんだけど」

「?何だ」

「私、これでも今回は、ちゃんと作戦通り、伯父さんの毒牙から麻子(あさこ)ちゃんを守るべく、色々考えてたんだよ」

「ああ」

「けどさ、想定と全然違くて、こんなに早く知り合ったでしょ?」

「そうだな」


「もしかして私達…どう転んでも原作キャラに関わっていくんじゃ…」


「……」

「……」


 要するに、避けようとしたり、故意に介入しようとしたりすると、それではつまらない、とばかりに誰かの手が入るのでは、と言う事を言いたいワケである。

 私達の頬を、冷や汗が伝う。


「おい。その想像はヤバい。やめとけ」

「いや、でもイベントを事前に知っとくのは良いと思うけど、意図的に関わろうとするの結構面倒くさ…」

「結局そう言う理由なのかよ!?」


 流石(ほむら)

 人に出来ない鋭い突っ込み!そこに痺れるし、憧れるよ!!

 そう言ったら、冷めた目で見られた。

 えっ、面白くなかった?

 えっ、ジェネレーションギャップ??


「ま、まぁ確かに、あんまり肩肘張って構えてる意味はないのかもな…」

「そうそう。緩く行こうぜ!」


 楽しく生きよう!と言う目標からすると、解決しないだろう問題に怯えているのは、多分結構な障害になる。


「緩く…はともかく。うーん……お前はそんなんだしなぁ。分かった。俺だけでも一応警戒しとく」

「だって、疲れない?」

「あんまり俺が疲れてるっぽかったら言ってくれ」


 要するにそれって、今まで通りじゃない?

 まぁ、確かに記憶力の良い(ほむら)が構えてる方が良いんだろうけど。

 ほら、私、その辺ゆっるいから。


「了解。とりあえず、現状維持って事だね」

「だな」

「あっ、今年は他にイベントないんだよね?」

「ああ。麻子(あさこ)先生のだけだ」


 じゃあ、のんびりベイビー誕生を全裸待機だけだね。

 よっしゃ!

 楽しくなりそうだぜぇぇ!!


「…お前がそうして能天気に笑ってるの見てるだけで、結構気が抜けるしな」


「え?何か言った?」

「別に。茶でも飲みに降りようぜー」

「おうっす!」


 こうして、特に大きな事が起こる訳でもなく。

 毎日は平穏に過ぎて行くのです。

 フラグじゃないよ!?


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