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二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(六年生)
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138.ジャンルが行方不明な件


「んでここにいるんだァ、九尾(くお)テメェ!!」

「おやおや。まさかキミなどと思考が重なってしまうとは……今日は厄日ですかねぇ」

「るっせェ!!」


 さて。時は放課後。諸々準備を終えて、いざヤの付く人々の対策会議! と思った矢先。

 件の元凶どもが、まさかの全員集合で我らが白鶴(しらつる)学園初等部の校門前で睨み合いを開始していた。

 どんな悪夢ですかねぇ?


「……ほら、やっぱり。遅いぐらいだったろ?」

「みたいだねぇ……」


 げんなりとドヤ感を同居させた、非常に複雑な顔でそう呟く(ほむら)に私は静かに同意する。

 いやいや、まさか昨日の今日で大当たり引いて来るとか思わないじゃない? 仕方なくない?


青島(あおしま)さん。ご無事でしょうか?」

「うわおっ!? ハットリくん?」

「はい」


 窓の外を隠れて伺っていたら、突然後ろから呼びかけられて思わずビビってしまった。

 振り返ったら、目が覚める程の和風イケメンのドアップ。心臓飛び出るかと思ったよ。


「お前、何で普通の格好してるんだ?」

「表が見ての通りでしたので、却ってこの格好の方が気付かれ辛いのではないかと思いまして」

「名字呼びなのも、身バレ避けの為か?」

「はい」

「ハットリくんが賢い!」

「……俺のことは、今だけは佐助(さすけ)でお願いします」

「あ、ハイ」

「お前のが気が回ってないとかヤバくね?」

「確かに」


 ハットリくん、忍者コスプレしてない時の方が有能説あるぞ。

 思わず驚いてしまう私に、不思議そうに首を傾げるハットリくんの姿に、遠目に見ていた同級生の女子がキャーキャー言ってるのが聞こえた。

 やはり、ハットリくんの素顔は危険ですな。……って、今はそれはどうでも良いよ!


「てか、普通に入って来れたんだな。バレなかったのか?」

「まだ俺の正体まではバレていないようでしたので。それと、この学校に奴らが来たのは偶然のようで、まだマチコさん(かのじょ)の正体も明確にはなっていないようです」

「そっか。まぁ、そうじゃなきゃ今頃、校舎内にまで踏み込んで来てるよね」

「一応、そこまで無茶はしないつもりのようでした」


 さりげなくヤの付く集団の横を通り抜けて学内に入って来るだけじゃなくて、ついでに情報収集までして来たらしい。

 あれ、これマジで忍者コスプレはただのコスプレで確定ってことじゃ……?

 いやいや。ハットリくんのアイデンティティを否定することないよね。考えない方向で。


鬼壱組(キイチゴ)は、本当に文字通り総当たりで近辺の小学校を満遍なく回っているようです。狐九組(イチジク)は、何やらあの九尾(くお)とかいう人物の考えに基づいて回っているようです」

「それ、結構ヤバくね? 遠目に見ても、あっちの九尾(くお)ってヤツ賢そうだぞ」


 確かに、下手しなくても私の正体に勘付かれそうだ。

 伯父さんの力があれば、あれだけ干渉してもバレないように圧力かけたりも出来たんだろうけど、今私たちに主導権あるからなぁ。

 情報網を敷いて、距離を適度に取ってれば問題なかったけど……まぁ、絡まれてるゆーちゃんを無視出来るはずがないし仕方ないか。


「うーん、困ったなぁ。実際、小学校に来てるってことはマチコさん(かのじょ)狙いってことでしょ? じゃあ、今更相手の目的がどうとか探っても解決にならないよね」

「一応、何で目を付けられたのかくらいは調べといた方が良いんじゃないか?」

「俺も赤河(あこう)くんの意見に賛成です。理由さえ分かれば、興味を失わせることも可能かもしれません」


 2人の意見も尤もだと思うけどー……オタク的見地から言うと、非常に厳しい。

 私は空気が読めるオタクだから分かるけど、あの人たち、マチコさんにクソデカ感情抱いてたよ。

 単なる思春期の初恋とか、そんなんじゃなくて、もっとヤバめで重めだったよ。放っておいたらR18まっしぐらだよ。嫌だよ。

 ……なんて、小学校で言うことじゃないし、私は微妙に濁しながら頷く。


「そうだね。とりあえず、伯父さんが貸してくれた諜報部隊の人を頼ろうか」

「……何でうちの父親はそんなヤベー部隊運用してるんだよ」

「それは言わない約束ー……って、返信早っ!!」


 私が、何気なく2団体についての質問をメールすると、即座に返信が来た。

 有り得ない速度だ。ブラインドタッチどころか、どんな内容の連絡が来るか先に把握してたとしか思えない。

 優秀のひと言で片付けて良い話じゃないと思うけど、片付けよう。伯父さんに関して悩む時間は、ハッキリ言って無駄だもの。仕方ない仕方ない。


「えっと――鬼壱組(キイチゴ)狐九組(イチジク)も、ついでに一緒に居る忍者も、同じルールで動いています。そこの忍者を問い詰めた方が早いですよ……だって」

「え?」

「え?」


 (ほむら)が首を傾げながらハットリくんを見たのは良い。

 何でハットリくんまで困惑気味で首を傾げてるんだ。

 なんて、内心でツッコミを入れてから気付く。いや、そもそもハットリくんは向こうとの因縁はあっても、何で因縁があるかとかは知らないのか。

 だったら、今まで自分で共通点に気付いて居なかったってのもあり得るか。

 そう結論付けると、私はハットリくんに今まで聞いて居なかったことを聞くことにした。


「まだ教えてもらってなかったことあったよね。悪いんだけど、教えて?」

「そのー……実家の行く末にも関わることなので、出来れば回答は差し控えさせて頂きたいのですが……」

「そこを何とか!」

「それってアレだよな? 取って来たってお宝」

「そうだよー」


 ハットリくんが鬼壱組(キイチゴ)から盗んで来て、状況を膠着状態に持ち込んだ例のお宝だ。

 ソレが何なのか分かれば、自ずと分かって来ると思う。というか、分かるから聞けって意味のメールだったよ、今の。

 諜報部隊への厚い信頼感情から、グイグイハットリくんを問い詰める私。

 それでも、流石に話が大きすぎるせいで口を噤むハットリくん。うぬう、強情な。


「――要石(かなめいし)、だってさ」


 さて。どうやって吐かせようかと思った矢先、耳元で囁き声が聞こえて飛び上がる。

 慌てて振り向くと、そこには涼しい顔して双子が立って居た。って、いつの間に!?


「えっ」

「遅ればせながら馳せ参じましてございます、お嬢様」

「うわっ!? どっから出て来たんだよ、晴臣(はるおみ)晴雅(はるまさ)!」

「普通に校門から入って来ましたよー」

「あの中を通って!? マジで!?」

「マジマジ」


 双子がどうやってあのヤの付く集団をスルーして入って来れたかが気になるけど、今はカナメイシとかいうキーアイテムの話だ。

 ハットリくんの顔色が一気に悪くなったことから鑑みるに、どうやら合っているらしい。

 ……いや、双子の情報網もどうなってるの? おかしくない?


「そ、それより、カナメイシって何?」

「その名の通り、要になる石。どうも、彼らの力をコントロールする為のアイテムらしいですね」

「力?」

「はい。どーも、鬼壱組(キイチゴ)は、鬼の。狐九組(イチジク)は狐の。藤林(ふじばやし)家は天狗の血を引いてるようなんですよねー」


 ……あれ? この世界、そんな和風ファンタジー設定の世界でしたっけ??


(ほむら)……」

「知る訳ないだろ俺を見るな」


 思わず真顔で(ほむら)を見ると、(ほむら)も許容量をオーバーしたのか、最早無表情だった。

 いや、前世の記憶持ちが2人も居る時点で、ファンタジーとか有り得ない! なんて言うつもりはないけど……ねぇ?


「つまり……佐助(さすけ)くんって、妖怪だったの?」

「……いえ。末裔というだけで、俺は先祖返りではありませんから……」


 死にそうな顔で、それだけを答えるハットリくん。

 いや、ウチの双子がゴメン……。必死に隠してたし、こんな風にアッサリとバラされるような背景設定じゃないよね。

 本来もっとこう……凄まじい暴露シーンになる予定だったんじゃないの? いや、まぁ十分衝撃は受けてるけどね。ジャンル違いですものね。


「どーもその先祖返りってヤツは、妖怪の血の影響がスゴイらしいんですよね。分かりやすく、妖術みたいのを使えたり、異様に傷の治りが早かったりと、色々特徴はあるそうなんですが、今回の件に一番強く関わってるのが、(つがい)を強く求めるってところですね」


 物凄く嫌な予感がする。

 私、あの九尾(くお)さんとかいう胡散臭いお兄さんにそう呼ばれてませんでしたかね?


「お察しの通りですよ、お嬢。どうもお嬢は、彼らから特に強く執着されるような稀有な血の持ち主のようです」

「理由分かっても対処出来ないヤツだった!!」


 (おみ)くんが、ヤレヤレと肩を竦める。

 私は愕然としながら頭を抱えた。

 というか、ツガイって、どっちかって言うと大人の女性向けの漫画とか小説に良く出て来る設定じゃない?

 何でこんな、ほのぼのスクールハーレム漫画の世界に出て来るんですか? 解釈違いですよ。


「じゃあ、佐助(さすけ)が妙に瑞穂(みずほ)に懐いてるのって……」


 恐る恐る、といった様子で(ほむら)がハットリくんにそう言葉をかける。

 すると、ハットリくんは千切れそうな勢いで首を左右に振り出した。必死である。


「そ、そそそ、そんなまさか!! 俺は、そんな血の影響なんてまったく……!!」

「僕らが調べた限り、お嬢様の血は大層強いようで、殆ど先祖返りの影響がない者にまで影響が出ておりましたよ」


 そんな可哀想なハットリくんに、更に可哀想な言葉がかけられた。

 (まさ)くんの淡々とした解説が進むごとに、ハットリくんの顔色はどんどん悪くなっていく。

 なんてことだ。顔が土のようだ。


「えっ?」

「本来、(つがい)というのは男女1組に限られるようですが、お嬢様はとりわけ妖怪の雄を引き寄せる魅力をお持ちのようで……」

「クソチートだ!! 要らない!! 全力で要らない!!!」


 思わず私も悲鳴を上げた。

 どんなエロ同人……いや、この場合私がヒロイン(笑)な訳だから、それどんなティーンズラブとでも言えば良いのかな?

 うわあああ、最悪過ぎる……神様! 何でこんなクソチートを私に!?

 ……ああ、私神様転生じゃなかったな、そう言えば。


「何ソレ怖……。お前等、どうやって調べたんだよ??」

「なーに、お嬢の血をちょちょっと少し持ってってニオイを撒き散らしてみただけですよー」

「……お前等のが怖いわ」


 ほら見ろ(ほむら)もドン引いてるじゃないか。

 神様どうかやめてください。え? (ほむら)が引いてるのはその設定についてじゃないって?

 いやいや、どう見てもそうだから。だから、クソチートをどうか削除してくださいお願いします。


「なんて、迷走してる場合じゃないか。……ね、(おみ)くん(まさ)くんは、どうしたら良いと思う?」


 一つ溜息をつくと、私は双子に視線を向けた。

 すると、何だかとっても良い笑顔を返される。え、何?


「お嬢は反省出来る良い子ですねぇ! それじゃ、お兄さんたちも張り切りますか!」

「ああ、そうだな。……お嬢様、ここは一つ正面突破といきましょう」


 何か、あんまり(まさ)くんから提案されたとは思えないような単語が聞こえたような。

 そう首を捻っていると、更にトンデモ爆弾が投下される。


「んじゃ、早速正体バラしてからのお話し合いにいきますか! 気合入れて行きましょーね、お嬢!」

「ええええええ!!??」


 自ら身バレ!? ちょっ、どうなっちゃうのソレー!!??


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