表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二軍恋愛-知らない漫画のモブに転生したようです-  作者: 獅象羊
第一章「小学生編」(五年生)
101/152

95.学級委員にゃなりたくない

青島(あおしま)、学級委員に入ってくれないか?」

「よーし、瑞穂(みずほ)。お前、学級委員やるよな? な?」

「は? いや、2人ともどうしたの? 何かちょっと怖いよ」


 どうもこんにちは。皆のアイドル青島(あおしま)瑞穂(みずほ)です!

 ……なんて冗談はさておき。

 今、私は廊下で2人のイケメンから左右壁ドンで迫られています。いやんっ、私、どーなっちゃうのー?


「おい、お前今ふざけたこと考えてるだろ」

「なな、何のことじゃろうのう。最近、とんと耳が遠くなって」

「何処のジジイだ!!」

「ヒドイ! せめてババアって言って!!」

「……どちらも酷いと思うが」


 (ほむら)に、頭をぐわしと握られて叱られつつ、ひとまず反省する。

 真面目に回想をすれば、他クラスの(ほむら)と委員長が、学級委員になることになりそうなので、私もなれ、と言いに来ていたのだ。


「って、何で私まで学級委員やんなきゃいけないのー!? ヤダよ。今年こそは別の委員会やるんだから」

「俺らだけそんな面倒くさいもんやらされて堪るか! お前も道連れにしてやる!!」

「ひでぇ!!」


 (ほむら)と正面切って手を握り合って、グググと力を込め合う。

 負けたら倒れる。真剣勝負である。ファイッ!!


青島(あおしま)が、本当に嫌だと言うのならば仕方がないが、俺は青島(あおしま)ほど学級委員に相応しい人間はいないと思っている」

「え。突然の委員長の高評価。どうしよう、私明日死ぬのかもしれない」


 真剣な表情で委員長に真っすぐ見つめられた私は、とりあえずふざける以外の選択肢が思い浮かばない。

 だって、どうしたら良いの? こんなに真っ直ぐな良い子に、学級委員に向いてると思うよ! なんて言われたら、諸手を挙げて感謝する以外にある?

 でも、そうしてしまえば、私の今度2年間は学級委員で固定になってしまう。

 そ、そそ、それだけは! 深い理由はないけど!


「アホみたいな顔で何言ってんだ、お前」

(ほむら)の毒舌が心地良く思える日が来るとはね……もっと罵って!!」

「どういうことだよ!?」


 いや、(ほむら)に冷たい視線を向けられれば、アイデンティティー保てる気がして。

 あれ、私、調教されている!? そ、そんなバカな!


「てか、そんだけふざけてても微動だにしないとか……お前、マジで化け物に片足ツッコんでないか? てか、既に化け物?」

「突然のディス! そっち方面での罵りはご辞退申し上げるー!!」

「力、強っ!!」


 とおっと気合を入れて押し返したところで、組み合っていた手が解かれる。

 いや、(ほむら)刀柳館(とうりゅうかん)通ってない割りには力あると思うよ。


「それで、難しいのだろうか?」

「委員長のスルースキルが高すぎて辛い」

「? するーすきる……」


 私と(ほむら)の、仁義なき下らないやり取りを一切気にせずに、真面目な雰囲気を崩さずに尋ねて来る委員長が強い。

 若干その辛さに震えつつ、思わず呟いた言葉に反応した委員長は、こてりと首を傾げた。

 何故か舌足らずになる委員長が可愛くて、思わず真顔になる。ここが桃源郷か。別の意味で辛いわ。


「む、難しいって言うか、私も色んな委員会を試してみたいなーって」

「そうか……。俺は、クラスが分かれてしまっても、青島(あおしま)と同じ委員会に所属出来たら良いと思ったんだが……仕方ないな」


 表情は特に変わらないんだけど、委員長のバックに段ボールが見える。

 捨てられた子猫たちが入った段ボールには「ひろってください」の文字。

 ……何故だ! どうして、学級委員になりたくないと言うだけで、こんなに罪悪感が襲い掛かって来るんだ!! ここが修羅の国か!!


「ねー、(ほむら)

「また何か馬鹿なこと言うなら、いい加減無視するぞ」

「ええっ、そんな!! 見捨てないでよ、(ほむら)! いや、ほむほむ!!」

「マジでそのふざけたあだ名で呼ぶんじゃねーよ!」

「あてっ!!」


 スパーン、とはたかれる。

 よし、いつもの流れでちょっと落ち着いたぞ。ついでに深呼吸だ。ひっひっふーひっひっふー。


「呼吸法が間違ってる!」

「なんて的確なツッコミ!!」


 考えていることにまでツッコミを入れるとは、流石のひと言である。


「それはともかく……悪いけど、やっぱり私今年は……」

「あ、みずほ。さっき担任が、あたしたちに学級委員やって欲しいって言ってたから、良いよーって答えといたからヨロシク」

「え?」

「じゃ」

「……え??」


 あれ、今颯爽とさっちゃんが通り過ぎて行ったような気がするんだけど。

 あれ、おかしいな。今、休み時間だよね。

 どうして委員会について担任が言及することがあるの??


「あっ、瑞穂(みずほ)ちゃん。今さっき、明佳(さやか)ちゃんが先生と、瑞穂(みずほ)ちゃんが学級委員長になるって話してたけど、本当に? 今年はオレと体育委員やるって言ったなかった?」

「えっ、あれ、ゆーちゃん? あれ、これ、現実かな??」


 ……何と、知らない間にマジで委員会が決定されていたようだ。

 これ、モラハラとかパワハラとかいうものじゃない? 平気なの?


「ふーん、何だ。俺らが頑張んなくても良かったんだな」

「ちょっと待って(ほむら)、何そのニヤニヤ笑いは」


 完全に表情が、「日頃の行いのせいだ」と言っている。

 何と言うことだ! 私ほどの優等生を捕まえて、まるで問題児を見るかのように見るなんて!

 むすーっと半眼で睨みつけたら、また叩かれた。くそうっ。頭部のニューロンが死滅したらどうしてくれるんだ。


「……すまない、青島(あおしま)

「え、さっちゃんのこと? 全然気にしないでよ。さっちゃんて、ほら、マイペースなところあるし」

「いや、違う」


 ニヤニヤと楽しそうな(ほむら)とは真逆に、委員長は酷く申し訳なさそうな顔をしていた。

 幼馴染の蛮行に、胸を痛めているのだろうかと思ったら、どうやら違うらしい。なんぞ?


青島(あおしま)は、学級委員になりたくないと言っていたのに、明佳(さやか)のせいで無理やり所属することになったと聞いて……俺は、喜んでしまった」

「あ、うん」


 面と向かって言われると、だから照れるんだってば。

 というかそれ以上に、委員長。何でそんなアンニュイ顔怖いの。照れを上回っちゃうよ、恐怖だよ。

 最近折角、表情が穏やかになってファンも増えて来たって言うのに。


「……俺は、友だちの意志を尊重することも出来ないらしい」

「いや、それそんな気にすることじゃなくね?」


 (ほむら)が見かねて口を出すと、委員長は少しだけホッとしたようだ。


「そうだろうか?」

「ああ。しかも相手は瑞穂(みずほ)だから、別に何の問題もないって」

「それは私に失礼じゃないかね!?」


 私が思わず言い返すと、委員長の表情が暗くなる。

 ああっ、しまった! これは孔明の罠だ!

 私が言い返せば言い返す程、善意の委員長が落ち込んでしまうという悪循環の罠。

 (ほむら)……なんて恐ろしい子。


陽介(ようすけ)くんは悪くないとオレも思うよ。でも、残念だなぁ……今年は折角同じクラスになれたのに」

「ゆーちゃんは、ほら。しばらく隣の席だから良いじゃん?」

「んー……そうなんだけどさぁ」


 不満顔のゆーちゃんも、とっても平凡で可愛い。胸がキュンキュンする。

 ほっこりしていると、少しだけ気を取り直したらしい委員長は、薄く微笑んだ。


「ありがとう、皆。皆といると、こうした感情の波も普通のことなんだと分かるよ」

「相変わらず重苦しいなぁ、(ひいらぎ)は。そんな何でもかんでも真面目に考えなくても良いんだよ」

「そうなのか……赤河(あこう)は賢いな」

「……マジで頭の良いヤツに言われたくないわ」

「というか、そんなに色々考えてたら疲れない?」


 まぁ、類は友を呼ぶって言うか、私の周辺結構考え過ぎる系の人が多いけどね。

 とりあえず、小首を傾げるゆーちゃんは可愛い。


「ま、なっちゃったらしいものは仕方がない。委員長、今年もよろしくね!」

「ああ」

(ほむら)もね」

「おう」


 こうして、私は今年も学級委員に所属することになったのでした。


「あ。因みにあたしが副委員長だから」

「ナンダッテー!?」

「ほ、(ほむら)死ぬなー!!」

 

不定期更新中ですー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ