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00.プロローグ

「ばぶー」

「見てくださいな、貴方!瑞穂(みずほ)ちゃんが笑ったわ」

「はい。とても可愛らしいですね、美紗子(みさこ)さん」

「目元なんて貴方にソックリですわ。将来はお姫様みたいになるのでしょうね」

「おや。それを言うのであれば、美紗子(みさこ)さんに似ているから、ではありませんか」

「嫌ですわ、桐吾(とうご)さんたら。うふふ」


 ……砂吐くわ!!


 どこの世界にテンプレにばぶー、なんて発言する赤ん坊がいるんだ!

 頼むから、まずはそこに突っ込みをいれてくれ!!

 明らかにおかしいだろう、そうだろう。

 え?何、この場合間違ってるのは私?私なの?

 私が知らないだけで、赤ん坊ってマジでばぶー、って言うの?そうなの??


「あら。瑞穂(みずほ)ちゃん?どうしたの、不満げな顔をして」

「オムツではありませんか?」

「おかしいですわね。先程替えたばかりなのですけれど…」

「本当ですね。では、お腹が空いたのでは?」

「それも、オムツを替えた後にあげたばかりですわ」

「困りましたね…」


 …………。


 いや、心配をかけたい訳じゃないんです。

 すいませんでした。

 もう二度と生意気言わないので哀しまないでください。

 何か、お二人に哀しげな顔をされると、胸が痛いんですよ。マジで。

 ああああ、罪悪感!

 何で私が罪悪感なんて感じないといけないか分からないけど罪悪感!

 とりあえず笑おう、そうしよう。


「まぁ、桐吾(とうご)さん!瑞穂(みずほ)ちゃんが笑ってくれましたわ!」

「そうですね。もしかすると、ベッドが嫌だったのかもしれませんね」

「まぁまぁ!ママが抱っこして差し上げますから、もっと笑ってくださいね」


 もっと笑えって、どういう冗談ですかマザー。

 いや、もう良いや。

 適当におべっかだ。愛想笑いだ。

 ほっぺが引きつっててもご愛嬌って奴だ。


 ……えーと、皆さんどうもはじめまして。

 今までのやり取りでお気づきでしょうか。


 私、転生者です。


 おい。今、何コイツ、頭の痛い奴だなって思った奴。前に出ろ。

 このプニップニのクリームパンみたいな腕で殴ってやる。覚悟しろよ。

 私だって、こんなバカバカしい事を宣言したくはなかった。本気で。

 ただ、前世で読んでたラノベよろしく、気付いたら赤ん坊だったのだから、もう私は転生者である、という結論を下すしかなかったのだ。

 それに、気付いてから既に数日が経過している。

 夢にしちゃ長い。長すぎる。

 転生したのだ、という結論を導き出すには十分だ。お釣りが来る。


 ただし、哀しい事に、私は、前世の私の終わりを知らない。

 思い出せない、と言った方が正しいのか、思い出そうとすると、靄がかかったみたいに、頭に激痛が走る。

 その度に顔が我慢出来ない程歪んで、このニューお母さんに心配をかけるので、もう思い出そうとすらしていない。

 ヘタレ?仕方あるまい。

 まぁ、そんな訳で、死んだのかどうかはサッパリ不明だ。

 もしかすると、黒スーツ着て戦うサバイバル漫画よろしく、コピーされた的なノリで、私の本体は、今も地元でピンピンしているかもしれない。

 でも、私にそれを知る術はないのだから、私は転生したのだ、と言って良い。

 良いったら良い。


 あと、神様みたいな存在もいなかった。

 ちょっとどころか、物凄く期待したのに。

 お前は神に選ばれた存在で、世界を救うのだ。

 さぁ、神の祝福を授けよう!とか言って、中二病大歓喜なチート能力の一つや二つ頂けるのかなーって期待したのに。


 神は死んだ。

 いや、いなかった。


 捨てる神あれば拾う神ありとか言うけど、私を捨てる神も拾う神もいなかった。

 実際のところ、下手に神様みたいなのが出て来て、死亡フラグビンビンになっても困っちゃうので、別に良いと言えば良いのだが。

 ガッカリはガッカリだ。物凄く。


 因みに、言葉で分かる通り、私はどうやら日本人だ。

 ファンタジー世界に誕生して、前世の知識をフル稼働で無双、は出来ない。

 私は女なので、乙女ゲームの悪役令嬢に転生してたら、是非ともヒロインを完璧にイジめ抜いて、立派に恋のキューピットをやりたかったけど、それもまた不可能だという事が分かる。


 しかーし!まだ希望は残っている。


 日本を舞台にした漫画、或いはゲームに生まれた可能性だ。

 地名は、聞こえて来た所によると、普通に現実に存在する地名だった。

 でも、だからと言って、ここが私の知る漫画やゲームの世界ではない、と確定する訳ではない。

 ヘビーなオタクじゃなかった私は、セリフを暗記とか、どのルートに入るには好感度がどの位必要で、それをチェックするにはどのセリフがー、とか、そういうのはサッパリ分からない。

 でも、漫画やゲームのキャラクターに、リアルで会いたい、と思う。

 折角生まれ変わったのに、何かごく普通の世界でした、では面白くない。

 数値とかサッパリでも、流れ位は覚えている。

 主人公とか、ヒロインでは困るけど、その他のキャラクターの立ち位置なら、物語が面白くなるように、精一杯かき回してみせよう。


 何しろ前世は面白くない人生だった。

 友達はいたけど、何だか壁を作ってしまって、作ってしまった以上壊せなくて、気軽にノックすらせずに突撃隣のお昼ご飯!みたいな事が出来なかった。

 思った事を思ったまま…まぁ、ある程度は伏せたとしても、言い合いをする事も出来なかった。

 喧嘩だって出来なかった。

 殴り合って、お前強くなったな。お前こそ。

 みたいな青春的なやり取りだって出来なかった。

 …殴り合い、というのは冗談としても、心と心でぶつかりあえなかったのは、本当に残念に思っている。

 それって友達なの?って悩んだりもして、でも結局言えなくて。

 恋人は……まぁ、そっちは別に良いか。


 面白くない。そんなの全然面白くない。

 記憶にあるより先の人生があったとして、そこでは友達と巡り合えたのだとしても、「今」の私は、そんな人生を歩んでいない。

 変わろう!と決意した所で、人間はそう簡単には変われない。

 でも、私の場合、きっとほんの少しのキッカケがなかっただけだ。

 だから、今回のキッカケがあれば違った道を歩んで行けるはず。

 普通なら、ちゃんと学校卒業して就職して、周りからの評価もそこそこあって、

そこそこの人生を歩みながら、面白くない、なんて文句を言うのは我儘だと言われるかもしれない。


 だけど、私はキッカケ…チャンスを得た。

 神様はいなかったけど、偶然、奇跡と言えるチャンスが私を拾い上げた。


 その上で、二度目の人生が、私の知る漫画やゲームだったら、より面白い。

 まぁ、これ以上の我儘は言わないけど。


 いるかどうか分からない神様。

 私、二度目の人生、精一杯生き抜いてみせます。

 後悔なんて、きっと多分、また何度でもするんだろう。

 だけど、恥じる事のない人生にしたい。

 もし、神様が見ているのだとしたら、楽しんでもらえるような人生にしたい。

 私が、私らしくあると、誇りを持って言えるような人生にしたい。


 だから……。


瑞穂(みずほ)ちゃーん!あら、寝てしまいましたの?瑞穂(みずほ)ちゃーん」

「あまり頬をつついたら可哀想ですよ、美紗子(みさこ)さん」

「だってぇ…可愛いのですもの」

「ふふ。私からすれば、そんな貴女が可愛いですよ。美紗子(みさこ)さん」

「あ、貴方ったら。もう、瑞穂(みずほ)ちゃんの前ですよ?」


 両親よ!

 頼むから第一歩ですっ転びそうなその会話をやめてくれ!頼む!

 砂吐いた上、決意揺らぐ!!


 ……えー、とまぁ。

 こんな感じで、私こと青島(あおしま)瑞穂(みずほ)としての、第二の人生が始まったのです。

 ん?てか、青島(あおしま)瑞穂(みずほ)って名前聞き覚えないなー。

 やっぱ、女性主人公のテッパン、悪役令嬢…じゃないのか。

 残念無念……また明日!

 笑えねぇ…。


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