ゲームの世界に転生した少年の独白
突然だが、『アリストテレスの魔法使い』という恋愛ゲームをご存知だろうか。
「広大な海の上にある二つの大陸から成り立つ世界。本土と呼ばれる大陸は円環状の形をしており、12の国が存在する。大陸の名をトーラスニア。トーラスニアの外側にある海は赤く、気流が荒いため、航海は不可能と言われている。その赤い海の向こうには魔の国が在り、大陸全土に散らばり暴れる魔物は魔の国から流れてきたと言い伝えられていた。そして、もう一つの大陸は、トーラスニアの空白部分である中心に位置するどこの国にも属さない中立地となっている。その名も学園都市アリストテレス。国ではなく都市として栄える学園が舞台になる、君と世界を紡ぐ剣と魔法の学園物RPG」というのが概要である。
武術、学術、魔術を学ぶための巨大学園は大陸各地から入学者が殺到するほどの名門で、卒業するだけでステータスとなるほどの有名な教育機関として名を馳せている。
そんな、アリストテレス学園に入学することになったとある少年、名を、リルムという。
年齢は16歳。平均よりも低めの身長に、幼さを残す成長途中の中性的な外見。一見すれば少女と見紛うほどで、まあ、所謂可愛いという顔立ちの、所謂男の娘が主人公だ。
リルムは学園で様々なことを学び、あらゆる問題に直面し、個性あふれる仲間たちと出会い、成長していく。
物語は、学園パートと冒険者パートに分かれていて、ルートによっては魔王復活やら討伐隊の隊長に任命されるやらと世界の危機に直面したりもする、なかなかにボリューム溢れる内容となっている。
まあ、その他にもちょっとした日常イベントや、ジャンルに恋愛ゲームというのがあることからもちろん様々なキャラクターとの恋愛パートも楽しむことができる。
まあ、その。恋愛は恋愛でも、『男同士の恋愛』なのだが。
つまり、アリストテレスの魔法使いというゲームは、所謂ボーイズラブゲームというジャンルに属するゲームなのである。
で、なぜ今そんな、生きていくうえで全く必要のない説明をしているかというと、それには深くもなんともない長い話があるから割り合いして、端的に言おうと思う。
俺こと、語り部。
ジルドレイク・パギンスタ(16)は、世のお腐れ様乙女たちが愛して止まないボーイズラブゲーム『アリストテレスの魔法使い』の世界に転生していることに気が付いてしまったのである。たった今。
きっかけは、アリストテレス入学式にたまたま隣の席になった可愛らしい少年、もうここまで言えばわかるだろうと思うが敢えて言おう。この男の娘、主人公のリルムだった。主人公とは梅雨知らず(当たり前だ。知るわけないだろうボーイズラブゲームの主人公だなんて)自己紹介をし、握手をした瞬間、雷に打たれたような衝撃とともに頭の中を知らない記憶が駆け巡り、なるほど、と受け入れてしまったのだった。そう、あっさりと受け入れてしまったのだ。悩むとかそんなことなく!
ショックである。
何がショックって、そりゃよりにもよってホモゲーの世界に転生したこともそうだが、何より一番ショックなのは、そのリルム少年を見て思ってしまったのだ。
可愛い、と。
おいおいおいおいおい。
まてまてまてまて。
その事実までをも記憶とともに受け入れてしまった俺の理性が最大にツッコミを入れている。
まて。おいまて。こいつは男だぞ。確かに可愛いが…ぶっちゃけ好みだが…こいつは男だぞ。
受け入れてしまった記憶にある前世と呼ぶべき世界での常識でも、男はねぇわと言っている。俺はホモじゃない。
ない、のに。そう思うのに、胸のドキドキが止まらない。なんだこれ。これが、恋…?やめてくれよ!俺はホモじゃないよ!
生まれて16年。酸いも甘いもまだまだ体験しきれていない青二才の俺であるが、当たり前だけど男に恋したことなどない。
そんな、まるっきりのドノーマルな俺は、男の娘に胸キュンしてしまったのですがどうしたらいいのでしょうか?
ふわっとした登場人物の設定。
ジルドレイク・パギンスタ(16)
本作の主人公。
書いてはないけど、一応騎士科を選択希望。次点で魔法科。
身長は平均的だが、騎士を目指すだけあって体格はいい。脳筋。あまり物事を深くはかんがえないが、男はないと思ってる。しかし、男の娘に一目惚れしたため現在進行形で悩み中。ちなみに、このことがきっかけで前世の記憶らしきものを思い出した。前世でも多分男。
リルム・アーネット(16)
ゲームでの主人公。男の娘。ルートによって様々な才能を発揮する、大器晩成型。現時点での選択学科は不明。
もしかしたら続きを書くかもしれないけれど、未定です。