32.独り占め
先日、『大足羽無し』と言うダチョウに似た飛べない鳥の肉確保クエストを受けたんだが、その際幸運にもその鳥の卵も見つける事が出来た。
そして、ダメ元でそれを使ってプリンを作ったのだが、予想外に美味いモノが出来てしまった。日本なら一つ500円以上で売っても良いくらいの出来だ。
この卵は、ダチョウの卵よりは心持ち小さいというサイズでは有るが、当然鶏卵と比較すると圧倒的に大きい訳で、それから作れるプリンの量もかなりの量になったのだが、一日と持たずに消えてしまった。3人の胃袋の中に。
それ程美味かったんだよ。作った者の腕が悪いにもかかわらず、あれだけの味になったって事は、素材の味が圧倒的に良いって事だろう。
まあ、そこら辺は良いんだ。問題は、そのプリンの事を『魔獣のいななき亭』で瞬のヤツが、娘ちゃんに喋ってしまった事にある。
10歳になって、成長期に入った娘ちゃんの食欲は旺盛だ。特に甘い物には目が無い。故に「何で私にも持ってきてくれなかったのよ!!」とお怒りに成られた訳だ。
と言う事で、幼き般若の怒りを静めるアイテムを手に入れる為に、西南西の草原へ『大足羽無し』狩りに来る事になった。
『大足羽無し』の需要は『鎧猪』などと比べれば少ないのだが、少ないなりに常にあるクエストなので直ぐに受ける事がで来た。
場所はゴブリンの『穴』より西寄りで、2本の川に囲まれたエリアが『大足羽無し』の生息地帯になっている。
川幅は30メートル程で、深さも深い所で2~3メートル程度という川を、俺達は『冷凍符』で水面を氷らせて道を作って渡っていく。厚さ50センチ程の氷なので、滑る以外の問題は無い。
当然、『鉄ちゃん』は重量的に無理なので、瞬が乗り込まない状態で川の中を進ませる。そして、この川にもカニ系の魔獣が数種いるのだが、泥臭さが有って食用には適さない。カエル系も同じだ。
なので、その手の魔獣は全て魔石だけ取って放置する事になる。貧乏性の俺的には泥抜きとか出来ないもんかと思ってしまう。血抜きが出来るなら泥抜きの魔法具が有っても良いだろうに。
そんな川を越えて、土手を上がると広い草原が広がっている。日本の市町村の『市』全域ぐらいの面積が有る草原だ。
その草原の所々に、『大足羽無し』が10匹前後の群れを作って地面を啄んだりしている。この『大足羽無し』は『貝喰大鼠』と同様に魔獣では無く、ただの動物だ。
だから、こちらを襲ってきてくれないので、あの手この手で近づくしかない。更に本来の目的で有る卵を得る為に、ヤツらの巣を見つける必要もある。
『大足羽無し』は『貝喰大鼠』と比べ、圧倒的に目が良いので『貝喰大鼠』の様に『符』を付けたミニゴーレムを回り込ませられる程の距離にすら近づけない。
その為、今回は瞬に『鉄ちゃん』に乗ってもらい、十分な距離を取った上で回り込んで、反対側から攻めさせる。
『鉄ちゃん』が地響きを上げながら走ってくるに気付いた『大足羽無し』は、俺達が隠れている方向では無く右手の方向へ逃げ行く。失敗だ。ま、最初から一発で成功なんてしないよ。
と言う事で、気を取り直してサーチ。その後、1時間の間に2回程同様の方法を試みだが、残念ながら失敗。
そして、4回目の挑戦を開始する…つもりだったら、何故かその前に群れがこっちに向かって走ってくる。
「シュン、膝を付いて体勢を作れ、あゆみはシュンの後ろから矢を」
瞬間的にそれだけ指示を出すと、『鉄ちゃん』は右膝を付き心持ち前傾姿勢を取り、もしヤツらか突進してきた際の衝撃に備える。
歩はその後方から、ヤツらに向かってクロスボウを構え、射程に入ったら直ぐに打てるようにする。俺は複数の『符』をいつでも使えるように構えた。
「後ろから何か来るんじゃ無いですか」
「多分ですよぉ」
瞬が同意した瞬間に、歩は射程に入った『大足羽無し』に向かって矢を放つ。その矢は一匹の胸元に深々と刺さり、数秒を空けて前転するように転がって後列の2匹を巻き込む。
その間にも矢は放たれ、3匹が同様に土煙を上げて転がっていく。
「虎!」
4匹に矢を命中させた歩が叫ぶ。俺もその直後ソレが見えた。ソレは全長2.5メートル程の『虎』だった。初めて目にするヤツでは有るが、図鑑で知識だけはある。
『白雷虎』、雷属性の魔術を使う魔獣で、南の草原地帯の更に先にある森林地帯に棲息しているはずのヤツだ。
『白雷虎』を認識した瞬間、俺は瞬の乗る『鉄ちゃん』の前に出て、『障壁符』を構える。
「あれは雷魔術を使うぞ、前に出るな!」
細かな言い回しをする時間が無いので、それだけを言って前方を注視する。
12匹程いた『大足羽無し』は、俺達の存在に気付いた段階で、左右2つのグループに分かれて俺達の横を抜けようとする。
そして、その分離した間から現れた『白雷虎』も俺達の存在に気づく。その時点で距離にして60メートル以上有ったのだが、ヤツと目が合ったのが分かった。
そして、ヤツは左右に分かれた『大足羽無し』は無視して、俺達の方へ真っ直ぐ突っ込んでくる。
「吸ってくださいぃ」
後方で瞬が歩に吸血を求めているらいし声が聞こえている。俺はその声を聞きながら、板に貼り付けた『加重符』3枚を前方にばら撒く。
その3枚の板が地面に落下した時、『白雷虎』の口元に光が生まれた。それを知覚した瞬間には『障壁符』を起動し魔術障壁を展開。
そして『雷球』が立て続けに4発障壁に着弾して霧散する。4発目が消えた時にはヤツは15メートル前にいた。
ヤツの速度は時速で40近く出ている。故に15メートルと言う距離は一瞬で無くなる。だから見えた瞬間先ほどばら撒いた『加重符』を全て起動する。
ヤツは俺が撒いた3枚の『加重符』のほぼ中央を通ろうとして、突然の加重に地面へと突っ伏しながら滑って来る。
『加重符』の効果範囲は半径5メートル程だ、突っ伏しながら滑ったヤツは、ギリギリでそのエリアを抜けてしまう。横じゃ無くて縦に撒くべきだった、と後悔しても遅い。
そんな暇があれば別の『符』を撒く。普段、瞬間的に直ぐ使えるように板に貼り付けて腰に下げた、『炸裂符』2枚を引きちぎり投げると同時に起動。
爆風は障壁で防ぐ。そして、それと同時に新しい『障壁符』を取り出し左手に貼って、前の符の効果が消える前に起動しておく。
爆風で発生した土煙で視界が半分近く失われているが、ヤツの姿はなんとか見える。ヤツは衝撃で打撃は受けてはいるようだが、傷は無いようで白い毛皮には血の跡は無く土埃の汚れだけが見て取れた。
彼我の距離は5メートル程、ヤツは衝撃で軽い脳震とうでも受けたのか、頭をしきりに振っている。
それを見て、新たな『符』を取り、投げようとすると、吸血ブースとした歩が短剣を構えて俺の横を抜けて『白雷虎』へ向かう。
「放電があるぞ!」
その言葉の全てが彼女に届く前に、構えていた剣は『白雷虎』の首へと突き立てられていた。だが、その剣の刺さり具合は浅く、5センチも刺さっていないようだった。
「はじめさん、ブーストを」
彼女はバックステップで『白雷虎』から離れながら、普段から鎧の裏に貼り付けてある『付与(速)』『付与(力)』『付与(硬)』の3枚の起動を求めてくる。
俺がそれを起動したと同時に、後方から『鉄ちゃん』が『白雷虎』に向かって行く。
「駄目だ、感電するぞ」
『鉄ちゃん』は鉄製なので電気をすこぶる通す。コックピット(?)内にはクッション素材は貼られてはいるものの、感電は免れない。相性最悪なんだよ。アレとは。
「大丈夫ですぅ」
俺の忠告に対しての返事は、俺の後ろから聞こえてきた。どうやら乗らずにコントロールする方を選んだようだ。
俺と瞬のそんなやり取りの間に、歩はその異常なまでのスピードを使って、何度かヤツの首筋に攻撃を加えたようで、首からの出血が多くなったいたが、放電を警戒する為、今ひとつ強い一撃が放てずにいた。
そんな中に、『鉄ちゃん』が突っ込み、ヤツにつかみ掛かる。離れての制御なので、搭乗時程の的確さは無いが、身体全体で押さえ込む形でヤツを動けなくする。
ヤツは何度も放電を繰り返し、『鉄ちゃん』を攻撃するが効果があるわけも無く、白く輝く放電のタイミングを見た歩の短剣が首筋に深々と刺さった事でそれも出なくなる。
そして、更に2回程首筋に短剣を刺してとどめを刺す。ヤツが完全に死んだのが分かって、やっと息をつく。
「何でこんなのがここに居るんですかぁ、確か別の場所でしょぉ、これぇ」
「南の森のはずです」
「まともな魔術を使う魔獣は初めてだな」
「ですねぇ。やっぱり魔術を使われると怖いですよぉ」
魔術を向けられたのはこれが初めてだった。想定なんてしてなかっただけに、あまり効率の良い戦いだったとは思えない出来だったな。
でも、ケガすら無く対処出来たと言う点は良いと思う。現時点で、あのランク1匹だけなら対処可能だと分かった訳だ。
そして俺達は、『白雷虎』の内臓を抜き、魔石を取り出す。更に矢で死にかけていた『大足羽無し』もとどめを刺して、こちらは内蔵だけ取り出し全部リヤカーに積む。
『大足羽無し』4匹と『白雷虎』1匹。リヤカーは満タンどころか山積みだが、ロープでグルグル巻きにして固定した。
普通ならこれで帰る所なんだが、今日のメインの目的は『卵の採取』なので、まだ帰るわけにはいかない。
ただ、この後の巣探しは『大足羽無し』狩りと違って無駄な時間が掛からないので、ただひたすら探し回れば良いだけだ。
周囲の警戒をここに来た時よりも厳にしながら、ローラー作戦で探していく。『大足羽無し』が巣を作る場所の条件など知っていれば良かったのだが、図鑑にもその辺りは無かったので、ひたすら地道に探す事になる。
それでも2時間と経たずに巣を見つけ、4つの卵を確保する事がで来た。大量だ。
その後は、来たコースを通って街まで帰り、冒険者協会に行く前に家によって卵だけ置いておいた。
そして、冒険者協会の外部にある、大型の品専用受付に今回の戦利品を持ち込むと、職員は『白雷虎』に驚き、更にそれが西南西の草原に出たと聞いて更に驚いていた。
その後、外部受付で受け取った書類を、ソアラさんの受付に持って行った際その話をした。
「やはり、全体的に魔獣の数や生息域に変化が出ています。『穴』の未知魔獣による変化の可能性はありますが、確証はありません。今後もこんな事があるという前提で、気を付けて活動してください」
聞けば、他にも似たような事は起こっているようで、幾つか報告が上がっているらしい。ただ、頻繁とまでは行かなく、極端な警戒を必要とする状態では無いとの事。
ま、それでも、そう言う状態だという事を広報しておいて欲しかったよ。心構えが違うからさ。その事を言うと、「申し訳ありません、今日から広報しておきます」と謝罪されたが、俺たち的には、遅いよって感じだ。死ななかったからソレで済んだんだよ。全く。
ちなみに、『白雷虎』の魔石は3等級の5センチクラスで、売れば結構な金になる品だったが、『符』製作用の材料に使わせてもらう事になった。
これだけのサイズの魔石なら、『符』300枚以上に使えるので、当分魔石の購入をする必要がなくなる。かなりありがたい。
そして、まだ夕方にも成らない時間だが、俺達は家に帰り、とっとと『プリン作製』に取りかかった。
卵を割って、泡立たないようにして掻き混ぜる。綺麗に白身と黄身が混ざったら、大量の砂糖と牛乳(?)を入れて同じように泡立てないように掻き混ぜる。
砂糖の量は、日本で作った時の2/3程度にしている。以前何度か作って、ここの材料ならこれで十分だと分かっている。この卵でもそれで問題ない。
そして、それを目の細かいふるいで濾す。そして、砂糖を煮詰めて作ったカラメルソースを少し入れた容器にそれを入れる。
後は、その容器ごと湯煎して、固まっていたら『冷凍符』で作った氷の入った冷蔵庫で冷やして出来上がりだ。ゼラチンもバニラエッセンスなどの香料も何も入れないシンプルなプリン。
少し遅めの時間に『魔獣のいななき亭』へと夕食を食べに行き、その際、娘ちゃんにプリンを献上して、お怒りを解いてもらった。ついでに、おばちゃんと、おっちゃんの分も持って行って渡しておいた。
ただ、誤算だったのは、たまたまお湯もらいに来たシルビアさんに見つかり、「私も!!!」と詰め寄られ、家まで来て2個もせしめられた事だ。
彼女は、ヴォルツさんの分と2つ、と言っていたが、翌日一人の時にそれとなくヴォルツさんに聞いた所、「何の話だ?」と返された辺り、間違いなく全部一人で食べたと思われる。
結局取って来た4つの『大足羽無し』の卵は4日の内に全てプリンに化け、俺達や娘ちゃん、シルビアさん、更にご近所さんの胃袋に消えてしまった。それと同時に大量の砂糖も消費したけどね…結構使うんだよ。
ちなみに、ヴォルツさんの口には一口たりとも入る事はなかったと思う。多分……
春先から、『白雷虎』の件は別として、それ以外は特にこれと言った事も無く、平凡な日々がありがたい事に続いている。
最近は、俺達以外にもリヤカー持ちが増えて、街中だけで無く外でもリヤカーを引いている冒険者とすれ違う事も出て来た。
ここら辺は俺達の影響らしく、最初はゴーレムマスターがいるパーティーが真似し始め、その後、一般のパーティーも人力で引く組が出て来たようだ。
最初の手間は掛かるが、魔獣をそのまま持ち帰れる事による価格の高さが認知され初めて、次第にやるのもが出て来たようだ。
何度か、リヤカーの制作依頼が来たのだが、そっちに手を出すと職人達との問題が出る可能性があるので、断っていた。職人達を怒らせるとろくな事には成らないからね。
そこら辺の事があって、1/3回復薬も、ヴォルツさん達にしか売っていない。自分たちで使う分には文句は言わないだろう。さすがに。
そして、夏の雰囲気が近づいてきた頃、『雷槍符』『尖凸符』『尖凸陣符』『反重力符』と言う4つの『符』を完成させた。
『雷槍符』は直径25センチの範囲で、高さ1メートルぐらいの放電を30秒間発生させる。『火炎符』の雷版といった所。
『尖凸符』は貼り付けた所の材質で出来た1メートル程の先が尖った杭を発生させる。『凸符』の先を尖らせたヤツね。
『尖凸陣符』は『尖凸符』の杭を20センチ程の小さなモノにして、その分半径1メートルの範囲にビッシリとそれが発生する。地面なら針の山ってヤツになる。
『反重力符』は、『加重符』の反対で、半径5メートル範囲で-4Gつまり反重力状態が発生する。しかも、『符』の上面方向に発生するので、壁などに付ければ横方向の力が発生する。
地面に置いて使えば、-3Gの力で、上に向かって落ちていく事になる。横に貼れば、斜め下に向かって落ちる事になる訳だ。ただ、効果範囲が半径5メートルという事は上方向も5メートルな訳で、それ以上に落ちる事は無いわけだ。
『火壁符』に続きこれで5つの『符』が出来た事になる。こっちの使い道も色々と試していかなきゃ成らない。やる事が多い。良い事だけどね。
そんな新『符』をテストしている頃、そいつらは現れた。
その日もいつも通り、冒険者協会で『大足羽無し』の肉採取のクエストを受け、そちらに向かおうと表に出たのだが、いきなり声を掛けられた。
「おい、お前ら、あん時の役立たずギフト持ちじゃないか」
この街で生活していると、けっこう声を掛けてくる人もいるが、こんな声を掛けてくるヤツはいない。声に聞き覚えはないが、悪意しか感じないのでスルーしようとすると、俺の肩をつかまれた。
「おいこら、無視すんなよ」
肩の手を払いのけながら、そちらを見ると微妙に見覚えのある顔が4人並んでいた。黒目黒髪の男2人女2人の4人組だ。間違いなく王都で初めて会った日本人だな。
瞬と歩も気づいたようで、眉が微妙な角度に変化している。
「何か用か?」
「用かってお前、わざわざこっちが話し掛けてんだからよ、しかとすんなよ」
「おい、こいつってドラキュラ娘じゃね? マジかよ、こいつら、使えないギフト持ちでパーティー組んでんぜ!」
「良く今まで生きてられたねえ」
「雑用専門なんじゃない?」
「同病相憐れむってヤツかよ(笑)」
「可哀想~(笑)」
「符術師、ゴーレム直接制御に吸血鬼と来たよ(笑)、すげーな、ここまでカスが集まると笑いしか出ねーよ(笑)」
4人して馬鹿にするだけ馬鹿にして爆笑し始めた。周囲を通る冒険者達も何事かと見ていく。…全く。
「俺達はお前らが雑用ばっかりしている間に、レベルは20をとっくに超えてんるだぜ、お前ら10は超えたのかよ(笑)」
「無理言っちゃ駄目でしょ、雑用でレベル10なんて何年かかるのよ(笑)」
「俺らは、軍と一緒にコボルト退治にも出てんだぜ。おめーらもこの世界に貢献しろよ(笑)」
「無茶言っちゃ駄目でしょ、だって符術師とかだもん(笑)」
ヤツらは勝手に言って勝手に想像して勝手に爆笑している。歩の顔は完全に能面モードに突入し、瞬の眉はかなりVの字に近づいている。
歩が切れる前にと、俺が口を開こうとした時、横にいたらしい第三者が口を開いた。
「おい、はじめ、こいつら知り合いか?」
ヴォルツさんだった。後ろにはシルビアさんもいて、こちらは眉が瞬以上にV時になっている。
「知り合いって訳じゃないです、ただ同郷出身者ってだけですね。赤の他人です」
「なあーるほど、確かに同じような顔立ちだなあ。しかし、こいつらバカなのか?」
いきなりのヴォルツさんの登場に面食らっていた4人組は、バカ発言に反応する。
「バカって何だ、いきなり脇から口挟んで来て、挙げ句の果てにバカって、あんた何様だよ」
その口の利き方に、ヴォルツさんの目か細くなる。その様子を見たシルビアさんが間に入って来る。
「そうね、私から説明してあげる。先ずね、確か彼らのレベルは春前の時点でレベル26位だったんじゃないかしら。貴方達は今で20位でしょ。
後、貴方達は、コボルトとやらと戦った事が自慢みたいだけど、この子達はゴブリン・トレント・トード・オーク・スケルトン・リザードマンと戦ってるわよ。ここの領主軍とね。
更に、その原因の『穴』の4つを発見して、6カ所の封鎖の主戦力になったんだけどね。
ついでにもう一つ言っとくと、王都の戦いではじめ…符術師ね、彼だけで千近いスケルトンを殺してるわよ。
と、言う事で、分かったかしら、この人が貴方達をバカじゃないのか?って言った理由」
シルビアさんが、つらつらと喋っていく言葉に4人は呆然とする。だけどツリ目気味でエラの張った男は信じなかったようだ。
「嘘だ、クズギフトのこいつらにそんな事が出来るはずがない」
とか言い出す。正直信じてもらう必要すらないんで、ど~でも良いんだけどね。俺的には。
「嘘ねえ~、この街の冒険者なら誰だって知ってるぞ、そこらの年いったヤツに聞いてみな。おいそこの兄ちゃん、教えてやってくれねーか」
「ああ、良いよ、あの王都に行ったヤツらなら全員知ってる事だ。こいつらのおかげでかなり楽さしてもらったからな」
「そーだぜ、スケルトンなんざ7割はそこのボーズが片づけてたしな。ゴーレムにもかなり助けられた。そこのお嬢ちゃんなんざ、ブーストってヤツやられれば俺らが束で掛かってもかなわねーし」
「だったよな」
「そーだ、そーだ」
周辺にいた冒険者達から次々に賛同の声が聞こえてくる。そしてその声は次第に彼ら4人に対する罵倒へと変わっていった。
あの1ヶ月ほどの戦いを経て、それなりの仲間意識が出来ていたのかもしれない。
そんな声に絶えられなかった彼ら4人は、ダッシュで逃げていった。……同郷として、やっぱ恥ずかしいよ。全く。
「すみません、なんか変な事になって」
歩がヴォルツさん達に謝るので、俺と瞬も一緒に謝る。
「別に貴方達が謝るような事じゃないわよ」
「だな、あいつらがバカだっただけだろ」
二人は軽くそんな風に言うと、周りに集まっていた野次馬に「ほら、終わったから解散しろよ」と言って野次馬冒険者を追い払った。
二人には改めて礼を言った。
「気にしなくて良いわよ、ま、今度あの『プリン』ってのを作ったら食べさせてくれたらそれでいいから」
「?何だよ、そのプリンて、前も何か言ってたけどよ、食いもんだったのか?」
「あなたはには合わない食べ物だから気にしなくて良いから」
「?そうなのか」
「そーよ」
…やっぱりプリンは独り占めしていたようだ。
ま、何というか、平和だ。うん、取りあえずお仕事に行こう。




