1.ここどこ?
オッス、俺、一。現在走ってるよ。全速力で塀目がけて。
はい、逃走ですよ、逃げてます。必死こいて、全長1メートルほどの赤地に黒のムカデから…
まあ、なんでこうなってるか分かる範囲でチャチャッと説明する。なんせ、細かく説明している時間なんかないからね。
それは体感で30分ほど前のこと……
俺こと大河平・一は授業を終え、帰宅するべく駐輪場にてスカブ50に鞄を積み込みヘルメットを手にした瞬間、目の前がフラッシュし、50人近くが右往左往する白い空間へと飛ばされた。
「新しい奴来た!!!」「51人目!」
右往左往する有象無象から聞こえたのはそんな声だった。
右往左往する有象無象は、10代なかばから20代なかばぐらいの男女半々といった感じだった。
まあ、当然パニクりつつ、状況を周囲の者に状況を質すが、「こっちが聞きたいよ!!!」と切れられる。
周囲を見ると直径50メートルほどのドーム状の、全てが真っ白空間で、光源は見当たらない。でも普通に明るい。
そんなこんなで、右往左往する有象無象に加入して、右往左往しまくっていると52人目がカメラのフラッシュ光と同等ほどの光と共に現れ、その後108人目までそれは続いた。
それまで周囲で行われていた会話は、「なんなんだよこれ」「俺たち死んだのか?」「異世界転生来た!!」「あなた方は神のミスで死亡しましたので、ってヤツか?」「俺Tuee来た!!!」「どこだよここ、ど~なってんだよ」「チート、チート、チート」「4400人までいくんか」とか言うような半分は俺には意味不明な会話だった。
そして、108人目が現れて後5分以上新規が現れなくなった際それが起こった。
次が来ないことに訝しがりつつ、あっちで右往こっちで左往していると、集団の中から黄色の光が縦に伸びた。その数7本。
そして、その光はドーム中央へと集まる。各光のタワーには1人ずつの人間がおり、中の人間の意思と関係なく強制的に移動されていた。
7つの光のタワーが中央に集まった時、7つの光のタワーは1つの光のコクーンへと変わり、内側からそのコクーンを叩く者たちを入れたままフワリと浮かび上がり、ゆっくり加速しつつドーム上部より消えた。
新たなアクションに新たなリアクションで右往左往する有象無象。
この時俺は、7人ずつ今みたいにまた俺たちも消えていくんだろう、どこだか分かんないけど…、ってな風に考えてた。
しかし、次の瞬間起こったのは、ドームの崩壊だった。
白いドームに満遍なくヒビが入り、上部からパラパラと剥落を始めた。そして、そのヒビは一気に側面から床へと進行し俺たちは全員落下した。真っ暗な闇に向かって。
落下直後に見えたのは、こちらに手を伸ばし助けを求める男の子の姿だった。
そして、数瞬の後、足と尻、次いで腰に衝撃を覚え、地面に横たわっていた。地味に痛い…
土と草の臭いを嗅ぎつつ、立ち上がりズボンと服のホコリを払い、周囲を見渡すと…そこは、草・土・石・岩・低木・青空と言う景色だった。
あれだけいた、他の有象無象など一人もおらず、ただ一人その自然だらけの中にいた。
記憶の中で似た風景を探すと、○○高原とか○○自然公園などというものに近い気がする。一部サバンナにも似ているかもしれない。
数瞬前までの集団での右往左往を引き継ぎ、単独右往左往状態な俺は冷静な判断力なんぞ有るわけもない。ただただパニクりまくって、前後左右更には上下を何度も何度もキョロキョロするだけだった。
ここどこ?なに?どーなってんの?が頭の中で何度も繰り返されるが、この答えのヒントすら周囲には見えなかった。
それでも、5分もすればパニックはある程度収まり、ある程度まともな思考能力は回復していたので、100メートルほど先にある小高くなっている所へと行って現在見えていない部分を見ようと行動に移せた。
腰から胸ほども有るブッシュのような部分をよけつつ、何カ所か回り回り当初の場所より10メートルほどの高低差のある高台へと上がった。
そして目に入ったのは1キロメートルほど先に有る塀と、その先更に畑地を挟んで数キロ先にある塀、そしてその塀に囲まれているらしい街だった。
頭に浮かんだのは『異世界』。数分前までのあの白いドームで周囲から、異世界・転生等の言葉を散々聞いていたことがこの考えに大きく影響していたのは言うまでもない。
でも、あんな塀に二重に囲まれた街なんてテレビでも見たことがない。城塞都市ってヤツかな?そんなのがあれば絶対に観光地として有名になってるはず。
そんなんに興味のない俺でも知らないはずがない、となれば、ここは俺の知る地球ではない可能性が高いんじゃかいかい…
ある程度冷静になり、現状把握だけだった状態から思考が可能になり考察・妄想することで結果として再度パニックへと誘ってくれる。
あぁ、訳分からん……
と、まあ、そんな状態でいた時に、何かが這いずるかなり大きめの音が聞こえてきた。そして、件の全長1メートルほどの赤地に黒のムカデと接近遭遇したわけだ。
以上がまあ、経緯ってヤツだ。矢継ぎ早ですまん。
全長1メートルほどの赤地に黒のムカデ…見た瞬間ダッシュ。それ以外の選択肢なんぞ有りゃせん。絶対。
後方から先ほどより大きな這いずり音を聞きつつ、ブッシュは避けつつその小さな丘を駆け下る。その時は何も考えずとにかくムカデのいる反対へと逃げたが、目の端に塀が写った瞬間塀のある方向へと進路を変更。
ここら辺、考えての行動ではなく反射的な行動だった。無論後になって考えれば、と言うことだ。
後方からは、小石を跳ねる・草にこする・複数の足が地面を打つ・長い胴体が地面をこする音が聞こえてくる。
振り向いて確認したくはなるが、そのワンアクションで地面の凹凸に足を取られ転ぶ気がして実行できず、音のみを聞きつつ壁目がけてとにかく走る。
壁までは高台から1キロメートルほどだったが、途中ブッシュもまばらにある関係で直線にはいけない。ブッシュ内は何がいるか分からないうえに、1メートル前後のススキのような植物が生い茂っており、突っ切る選択肢なんてない。絶対に。
俺は小中学校時代は器械体操をしていて、体は結構鍛えていた。しかし、高校をバイク通学可を条件に選び、結果体操部のない学校へと通った関係で現在帰宅部だったりする。
中学の三学期から入れて一年半のブランクがあり、その間運動など授業の体育以外全くやっていなかった。
つまり、体力に難ありって訳だ。ってか、器械体操って走り込みってほとんどしないから元々持久力はたかがしれてたんだけどね…
で、絶賛息切れ中って訳だ、ハッハッハ……ドチクショウ!!
陸上部に入っときゃ良かった、とか意味のないことを思考する。脳ってヤツは一番酸素を喰らう、っうことは考えれば考えるほど酸素を大量消費していることになる、マズい…ってかこの思考自体酸素を消費している…って考え自体…以下エンドレス。
人はパニックになればなるほど無駄な方向へ思考が空転する。いわゆる走馬燈もその一種なのかもしれない。脳内のデーターをランダム検索して現状を打破できるキーを探そうとしているのかもしれないが、実際役に立つケースはほぼ無く、マイナスに働くケースが大半だったりする、多分。
息が切れ、呼吸がしづらくなる。ただ、足はまだ動く。でも確実に乳酸が溜まっているのも分かる。とにかく呼吸だ、呼吸を整えなきゃ、吸って吸って吐いて吐いて、…無理、全速力中コレ無理、逆に呼吸が乱れる。
ヒッヒッフー…こ、これもダメ。役にたたね~ラマーズ法。
そんな試行錯誤をしていると、後方の這いずる音が一気に近くなったのが分かった。
反射的に俺のとった行動は、右手に持ったままだった学校指定の白いフルフェイスヘルメット(校章シール付き)を後方を見ずに投げつけることだった。
直ぐにプラスティックの軽い打撃音が聞こえ、直後に後方の這いずり音が乱れ他のが分かった。
そして、とうとう我慢できなくなり後方を一瞬うかがうと、6メートルほど後方でヤツが体をくねらせてのたうっているが見えた。
当たり所がたまたま良かったのかもしれない。確か、虫には痛覚がないと聞いた気がするので、痛みではなく何らかの傷害が発生したゆえかもしれない。
でも止まったりはしない。息を整えつつとにかく走る。走る。走る。頭の中に昭和にはやった某ハゲのボーカリストの歌う曲が流れる。それまで脳内で流れていたサメの映画音楽より遙かに良い。
ヘルメットを投げた地点から更に50メールと程行走った地点で、再度後方を見るとヤツがいた。しかもこちらに向かって来ていた。
その距離30メートルほどか、心持ち移動速度が低下している気がするが、こちらも間違いなく遅くなっているので余裕など有るわきゃない。
とにかく塀を目がけ出せる全力で走った。呼吸をムリヤリ整え、足をムリヤリ進める、前へ前へ…
そして、壁まで20メートルほどになった時、後方の這いずり音が大きくなった。ヘルメットを投げた時に近い大きさだったので、2~3メートル以内にはいる気がする。
無論後ろは振り向けない。振り向いた瞬間終わる気がする。理屈はない、そんな気がするだけだ。でも、多分間違いないと思える。
20メートルを切った前方の壁は木製で、柱が数メートルごとに立てられ横に板を打ち付けて作られているようだ。
問題なのは高さ。3メートルはある。通常であれば走ってジャンプすれば届く高さではあるが、現状の乳酸の溜まりまくった足では無理だ。
後20メートル、たった20メートルなんだ、そしてわずか3メートル、そのわずかの距離で生死が分かれる…死にたくない。ましてや、オオムカデになんぞ食われて死ぬなんざ絶対に嫌だ!!
その時点で頭の中にイメージが浮かぶ、何年も繰り返しイメージ→実行を繰り返していたので即座に絵が浮かぶ。
ダメ元なんて思考はない、有るのは死にたくない、なんとかしなきゃ、頼む、神様仏様、南無三なんてのだけだった。
そして俺はタンブリングに入る。速度を落とさずの高速タンブリング…そして最後の踏切。力の入りきらない足をムリヤリ使って踏みきる。
ヤツに追いつかれる前に最後のジャンプまでこれたので一安心と言えるのだが、この先がまだある。失敗すればヤツのエサ。
空中で伸身に移り回転速度を落とし、ひねりを加え向きを壁側へと変え、壁の上端に手をかけようとするが微妙に距離が足りない。
壁から離れすぎていた。距離にして数センチ。一年半のブランクゆえか壁に向かってと言う有り得ないシチュエーションゆえか。
高さは十分にあったので、体をくの字に曲げ指を前に伸ばす。地上でならば十分な長さを得られるが、空中での回転運動時には重心点が移動する為に思ったほど距離を得ることは出来ない。
それでも必死に延ばした右手の中指と薬指がわずかに塀の上部に掛かる。その時点で、左腕を引き右腕を前に出すように体をねじり、わずかでも右手の指の掛かりを良くする。
体の回転運動が手を塀側へ向けるベクトルだったことも幸いし、なんとか右手の指で塀の縁をつかむことに成功する。
そして、片腕で塀に捕まったまま足の方は反動で壁へとぶつかる。その衝撃を右手でこらえていると、足下にヤツの姿が見えた。しかも塀に向かって立ち上がろうとしていやがる。
壁に右手でぶら下がり、右側面を塀に当てた状態でぶら下がっていた訳だが、まず腹筋で足を上げる。ヤツが立ち上がって直ぐ足下まで近づいていたからだ。
ちなみに、癖で膝を伸ばした状態で足を引き上げたのは無意味だったと後になって気づいた。
そして片手懸垂で体を引き上げ、体をひねり左手も塀の上に掛け後は一気に上体を壁の上に上げた。
その瞬間、50センチほど下にヤツの赤と黒の触覚が見えたので、反対側の状態も全く確認せずに飛び降りた。
飛び降りた、と言うかズレ落ちたと言うような降り方だったので左側面を打ってゴロゴロと転がってのたうつ。まあ、ゴロゴロ転がったのは痛みの為だけではなく、塀から少しでも離れようという行為でもある。
数回転転がると、段差があったのか30センチほど落下し、再度痛めた左側面を打ち、更にゴロゴロ。
更に数回転ほど転がった所で塀を見ると、とりあえずヤツの姿はなかった。しかし、安心は出来ない。家の壁を上るムカデとか何度となく目撃していたのだから、ヤツもこの塀を上ってく来てもおかしくない気がした。
だから、体の痛みはこらえて立ち上がり、塀から離れる方向へ走り出した。
俺が走り出したところは畑だった。そこは収穫後の畑らしく、そこここに抜き取った穴や大根の葉のようなものが散見された。
そんな畑を畔を越えて2枚移動した先で振り返り、ヤツの姿はやはり見当たらなかったことでやっと助かったと思えた。
そして、落ち着きをある程度取り戻し、周囲や体を確認するゆとりがやっとこ生まれた。
痛みのある左側面だが、擦り傷と打撲のみで骨折や肋骨のヒビもなさそうだった。一応、何度もケガやヒビは経験しているのである程度は分かる。まず一安心って所だ。まあ、痛いことは痛いんだけど…
そして、周囲を見て、人がいることにやっと気付いた。しかも、50メートルも離れていない左前方の畑に5名も。
冷静さの有無ってやつがこれほど大きいとは…と唖然とした。畑を走る時明らかに視界に入る位置にいたのに全く気付かなかったからだ。
畑にいた5人は、外見から見て夫婦1組とその子供3名と言う感じに思えた。無論、距離があるので身長と雰囲気でそう思っただけなんだが。
一瞬どうしようか考えたが、まずは接触する以外にない訳で、複数の不安はあったが諦めと運を天に任せて状態で行くしかなかった。
ちなみに不安事項は、まず言葉が通じるか、次いでそもそもアレは人間なのか、そして法律・風習等によりマズいことにならないか、と言うことだった。
あのムカデ+城塞都市+あの白いドーム空間などのSFだかファンタジーだかの不思議現象から、ここが異世界とか別の星とかパラレルワールドなんて言う『地球ではない所』で有ることは間違いなさそうだからこその不安だった。
元の地球ですら、日本の常識が通用しない所の方が多かったのだから、コレが他の星・異世界などとなっては推して知るべしってやつだ。
とりあえず第一村人との接触だ。そう接触編だ。発動編の無いことを祈る。意味不明。
ゆっくりあぜ道を通って近づく。敵意があるような行動は極力避ける。武器等を持ってない様子が分かるように両手を見える位置に出す。まあ、宇宙外交官ではない高校生に出来ることはこの程度に過ぎない訳だ。
実際、某アニメではないが白旗で無抵抗を表したつもりが、相手の星では徹底抗戦殲滅戦の意思表示だった、なんてのもあり得るぐらいこちらの常識が相手の非常識である可能性は大いにあり得るわけで、俺のとっている行動が相手にとってどうかは現状考えるだけ無駄なので、とりあえずこちらの常識で行動する以外無いと言うことでもある。
半分ぐらいの距離まで近づくと顔立ちもかなり分かるようになった。一応人間のようだ。無論背中に羽があったり、尻尾があったりとかしてもここからは見えないんだが、まあ、そこら辺を除けば『肌の色が白いインド人』と言った顔立ちに見えた。
彫りの深い顔立ちで、最初に思ったように1組の20歳代後半夫婦と10歳ほどとそれより1~3歳年下の子供が2人だった。
ただ、夫婦の男性は先が3分割したクワのような物を、女性は鎌を両手で持ち緊張した面持ちでこちらを見ていた。
やばくねぇ、ねえ、やばいよね。警戒してるよね。アレ。絶対警戒してる。
どうしよう、どうしようと頭の中で色々考えるが、コレと言って思い浮かばず、終いには某ペリーの『国をひぃらぁきぃなさい、ひぃ~らぁくぅ~のでぇ~す』と言うやつが出てくる始末。
結局10メートルほど前で立ち止まり「あのー、すみません」と言ってしまったのは日本人のサガか…
半分無意識に言った言葉で、俺としてはまだ、どうしよう、で思考が空転していたのだが、
「あんた何者んだ、なんで壁越えてきた」
父親(推定)から誰何の声が『日本語』で聞こえてきたのでビックリした。
「えっ、日本人?」と思わず返したのはある意味仕方ない。
「ニホン?なんだそれは、あ、あんた、ひょっとして貴族様か?」
父親(推定)は俺の足から頭の天辺までを何度も見てから、途中から語調が変わった。
日本語を喋って日本を知らない者など考えられないやはり異世界?あ、未来って可能性もあるか…放射能で巨大化したのがあのムカデとか…有り得なくは無い。
そして貴族がいるって事は王様とかもいるだろう。語調から貴族を恐れている感があるので、理不尽な貴族が…的なゲーム等でありがちな環境なのかもしれない。
とすれば、法律なんて有ってなきがごとしって感じで、そこのけそこのけ貴族様が通る、って世界かもしれん…こりゃ気を付けんと。
あと、こちらを貴族と思ったのは、多分服装からでは無いかと思う。5人家族(推定)は着古してシミの付いたお世辞にも上等とは言えない服を全員着ていた。対して俺は、畑でゴロゴロして汚れてしまってはいるが、学生服の夏服で彼らの服と比較すれば明らかに上等と言える。
彼らの服装が農民もしくは平民の標準的な物であるとすれば、俺の着ている学生服は彼らとは身分の違う者の着る服、つまり着ている者は貴族?って考えから来たものなのかもしれない。
「あ、いや、貴族じゃ無いよ。平民」
とりあえず否定はしておく。
父親(推定)は少しホッとしたような表情を見せながらも、今度は訝しむ様子を見せた。
「じゃあんた、何者んだ?盗賊とかには見えんが…」
ま、確かに怪しいよな、彼らの顔立ちが標準だとしたら明らかに外国人顔の男が塀を越えて入って来たんだから。日本でも先ず110番案件だ。
「えぇ~と…」一応説明しようとしたのだが、なんと言って良いか分からなかったので、止まってしまった。だって、多分異世界から迷い込んでドデカいムカデに追いかけられたので死にものぐるいで塀乗り越えて来ましたって…言っても…
う~っ、あ~っ、いつものごとく思考は空転。結局面倒になってそのまま伝えた。
「……からかってるか?」はい、当然の反応頂きました。だよね、そう思うよね。ただ、そう思われるってことは、『異世界』から迷い込むって事がこの世界では一般的でない、または知られるほどの事では無いってことでもあるってことだよな。
つまり、逆に帰れる手段も無い確率が高くなったと言うことか。まあ、まだデーターが少なすぎるから断定どころか確率論すら無理がある状態ではあるけどさ。
「いや、嘘じやないですよ。って言っても証明の使用が無いですけど。ってか、帰りたいんですけどね元の世界に」
結局信じてもらえる方法は無いだろうと無考え、とりあえず敵意が無いことを納得してもらったうえで、異世界から来たと言う前提で質問をさせてもらった。
聞いたのはこの国の名前・政治形態・この町の名前・金銭の単位と価値・お金を得る方法・塀の外の危険等を聞き、その上で細かいところを随時訪ねた。
結果、20分近く時間を取らせてしまった。非常に申し訳なかった。でも、こっちも必死だから。なんせ生活どころか生死がかかってるからね。ごめんなさい。
結局お礼と時間を取らせてしまった事への謝罪を行って、俺は街へと向かった。