第四話
木曜日。私は今、ナメリと親友を待ちながら喫茶店にいる。こんなことがあって、一人ではどうにもできない、そう思い、親友にだけでも話しておきたかったのだ。というわけで親友のバイト先である喫茶店でオムライスを食べている。試験も散々だったので、所謂やけ食いをできそうで、かつ目立たなそうな場所にしたのだ。すると私の親友はやってきた。
「ごっめ~ん、舞子!なかなか抜けられなくてさぁ。おぉ、その子が噂の?」
「瑛梨奈は人気あるんだから仕方ないわよ。そ、この子を紹介しに来たの。」
今駆けてきたメイド服の子が私の親友、海瀬瑛梨奈だ。メイド服にしか見えないが、この喫茶店の制服である。派手すぎない深緑のワンピースは丈も絶妙で、品のある雰囲気を醸し出している。
思い返すと私たちは小学生の頃からの付き合いだ。彼女はいつも人気者で、学校内の人気ナンバー1だそうである。サイドテールの軽く巻いた髪を揺らしながら、ナメリをじっと見つめている。
「はじめまして。常滑リコといいます。海瀬さんよろしくお願いします。」
「よろしく!リコちん!呼び捨てでいいよー」
「呼び捨てはさすがに……。えっと、瑛梨奈ちゃんで。」
さすが瑛梨奈。打ち解けるのが早い!自慢の親友である。そろそろ本題に入るとしようか――
「そうそうココのオムライスね、結構人気あるの。味にもこだわってるんだから!」
「このソースもおいしいです!ナポリタンお願いします!」
2人とも盛り上がりすぎではないだろうか。瑛梨奈はナメリと気が合うようだ。あっちにホームステイすればよかったのに、なんて思う。ふとテーブルを見ると、ケチャップのついた皿が五枚重なっているのが目に入った。ナメリ、食べすぎ。そうこうしているうちに、2人の話は少し変わっていた。
「そういえば、リコちんのその髪ってウィッグだよね?」
「あれ、わかります?地毛が明るめで仕方なく。」
「そうなの。染めてるわけじゃないけど、学校では絶対NGな色だから。」
さすが瑛梨奈。目ざとい。自慢の親友である。そして地味に会話に参加する私。
「ハーフだから平気じゃない?」
瑛梨奈が私を見て言った。
「そこなんだけど、ナメリ言っていいよ。」
「了解です。実はわたし宇宙人なのです。」
ナメリがウィッグを取ると同時にカミングアウトした。オレンジの髪が露わになる。後ろの席の男性の視線が刺さるが、気にしない。
「マシュシル星から来ました。ウチのボスが――」
細かい説明をすると、瑛梨奈は一瞬驚いたものの、すぐに面白そうに聞き入っていた。
さすが瑛梨奈。飲み込みが早い。自慢の親友である。
「ふむふむ。使命があるのね。だいたい分かったかな。でも、一つ聞いていい?」
「どうぞ。」
「ナメリって超能力とか使えるの?マシュシル星人なら少しくらいできたり――」
「できますよ。」
「できるの!?」
いつも通り軽く言ったナメリ。無駄に動揺する私。おお、と感心する瑛梨奈。なんだかさらに凄いことになりそうだ。