第一話 触角との邂逅
私が宇宙人と出会ったのは、十月のことだった。定期試験の勉強でもしようかと机に向かうと、私ー皆川舞子の部屋は真っ暗になった。停電だろうか?ブレーカーをつけようと立ち上がったその瞬間。強烈な光が発現しその中から女の人と着ぐるみが出てきたのだ。その女性はまさにプリンセスだった。金より白に近いウェーブの掛かった長い髪に、雪のように真白な肌、白金らしいティアラに、まるで天女の羽衣のようなドレス。まばゆい白い輝きの中でティアラに埋め込まれた青い宝石は小さいものの圧倒される存在感を放っていた。
(何だっけ、あの青いの。ラピスラズリ?サファイア?)そう考えていると、
「違うわ。アウイナイト、知らないの?」『そうだそうだ!ぱぷぴナぴトだ!』
二人分の答えが返ってきた。プリンセス(仮)はそれらしく答えていたが、後から答えた着ぐるみは言えてない。何というか……まあいいや。すると、プリンセス(仮)が大きく息を吐いてからこう言った。
「ねえ、皆川舞子。今日からこの子をホームステイさせるから。あなたの両親には既に話は通してあるから、心配することはなくってよ。半年くらいで帰るから良いでしょ?」
プリンセス(仮)は着ぐるみを指さしている。幾つもの疑問がわくが、口に出たのはなぜか
「……なんで名前知ってんの…?」どうでもいい問いだけだった。
その後、光の速さでプリンセス(仮)は消え、着ぐるみだけが残された。それにしても何の着ぐるみかよく判らない。つついてみると、くぽんっという音とともに着ぐるみの中身が出てきた。中の人は華奢な女性だった。のだが。
(この子、絶対地球の人じゃない……。)
人参みたいな色の髪、二本の触角、そして意味不明な服のセンス。某有名怪盗漫画に出てくる女性が着ていそうな、体に密着するスーツに、パニエを穿き、円い眼鏡を掛け、20㎝はあるであろう厚底のブーツを身に着けているのだ。さすがにこの地球、そして日本にこんな人はいない……はずだ。じっくり眺めていると、そいつは口を開いた。
「はじめまして。ナメリです。これからよろしく、みなかわまぴこ。……さん。」
名前言えてないじゃん……。悪い予感しかしないのは気のせい?だよね……。