表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は今日も、鍵で扉を開ける。  作者: ささかま。
第1章 僕は鍵を持っていて、使えば扉を開けられる。
38/99

36、本題とたとえ話 ー断章 その1ー

お題:経験のない小説合宿 制限時間:1時間(http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=193300)を加筆修正したものです。

 少しくだらないたとえ話をしよう。



 ※



 小説を書く為に3人の若者が、森で三泊四日の小説合宿を行った。

 彼らはネット上の小説投稿サイトで小説を書くという共通の趣味で知り合い、交流こそ頻繁にしていたが、初対面だった。彼らのうち、一人は男でありもう二人が女だった。話の便宜上、仮に男をA、女二人をB,cとしておくとしよう。


 さて、小説合宿と言っても一つの机に寄り集まって小説談義を一日しているわけではなかった。もちろん、共通の趣味として執筆と読書というのがあった彼らなので、好きな作家の話や執筆理論に関して意見を交わすことも少なくはなかったが。

 とにもかくにも彼らは森を探索したり、部屋で雑談をしたりなどして仲良く過ごしていたというわけだ。一日が過ぎるのはあっという間で、彼らは深夜0:00に各自の部屋に戻り、そして眠りについた。



 次の日の朝、Bが遺体で発見された。森の中にある泉で刺殺体で発見された。

 Bはどういうわけなのか、腹から包丁を突き出して泉に顔を突っ込んでいたらしいのだ。


 無論、A,cは心底怯えた。宿は貸切で彼ら以外に宿泊している者はいなかった。彼らは互いに疑心暗鬼になってしまったのである。



 “自分が殺される前に相手を殺さなければ”


 AもCも同じことを考えながら一日を過ごした。彼らは深夜0:00に眠りについた。




 次の日の朝、Cが遺体で発見された。彼らが利用している宿の側の河原で焼死体で発見された。

 Cはどういうわけなのか、火のついた焚き木の中に横たわってたらしいのだ。


 Aは心底怯えた。確かにAは“自分が殺される前に相手を殺さなければ”と考えてはいたが、良心の呵責もあってとてもそうする度胸はなく、考えを実行するには至っていなかったからだ。



 “次は自分が殺される”


 Aはそう考えながら一日を過ごした。彼は彼らは深夜0:00に眠りについた。



 次の日の朝、Aが遺体で発見された。小説合宿は終わったのだ。



 ※



 どうだったろうか。きみはこの話を読んでどう思っただろうか。そもそも、読んではくれたのだろうか。途中で読むのが面倒になって、ここまで飛ばした者もいるだろう。それはそれで構わない。以上の話は本題前のほんの前座だ。


 きみは恐らく私が誰であるか知らないだろう。今はまだ知らなくていい。今知ったところで大した足しにもならないし、それにきみは内心“そんなことは別に興味はない”とすら思っていることだろう。私もあまり回りくどい話し方は好きではない。むしろ嫌いですらある。

 職業柄、その回りくどい話し方を使って講釈を垂れなければならないこともあるのだけれど、誰も真面目に聞いちゃいない。無論、私自身がつまらないと思って話していることを他人に無理矢理聞かせることもないだろうとも思うのだ。




 話が逸れてしまって申し訳ない。



 きみから見れば、私のたとえ話は実に恐ろしい事件だろう。


 “人が三人も死んでしまっているのにもかかわらず、犯人さえ分からないなんて!!酷い悲劇だ!!”


 そう思うはずだ。しかし、あの男……今は“鍵屋”と名乗っているあの男は恐ろしいなどとは思わないだろう。そういう話が存在した事実だけを認識して、感想などは一切持たない。小説家泣かせな男だよ。念の為言っておくけれど私は小説家ではない。私は小説家と呼ばれる人間ほど器用ではないからだ。冒頭のたとえ話を考えたのは確かに私ではあるけれど、あれはたとえ話である一方で、私の戯言のようなものだからだ。ただ、戯言とは言え、話を提示した者としては“どうしてそんな話をしたのか”という疑問に答える義務はあると思うのだ。

 しかし、私はあえてここで義務を放棄しようと思う。ここで疑問に答える意味があまりないからだ。義務の放棄は一時的なものだから、いつか答えよう。きみにしてみたら、歯痒い事ではあるかもしれないがしばし我慢してほしい。



 ※


 ところで、私も一つ疑問に思うことがあるのできみに尋ねたい。

 私が尋ねたいのは二つ。たった二つだ。

 非常にシンプルかつ重要な疑問だ。少し考えてほしい。


 きみは私の話のどこの部分を“本題”だと思った?


 そして







「私が言う“きみ”とは、一体誰だと思う?」






 ※


 少しくだらないたとえ話をしよう。私と“きみ”の話を。




 fin.

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ