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僕は今日も、鍵で扉を開ける。  作者: ささかま。
第1章 僕は鍵を持っていて、使えば扉を開けられる。
18/99

16、創意と工夫

お題:真実の水たまり 必須要素:お湯 制限時間:1時間(http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=188804)を加筆修正したものです。

 そうなのだ。

 私はいつだって、天才などではなかったのだ。




 ※



 深夜1:30を回っていた。私は目の前のPC画面を見つめるだけで何もできずにいた。部屋にはあらゆるものが散乱し、ぶちまけられている。



 私の作品が新人賞を取ったのは、そんなに昔のことではない。ほんの出来心で書いてみて応募してみたら、あれよあれよと言う間に最終選考まで進んでいた。

 今書いているのは、その作品の続き物だ。担当者さんには最初にプロットを見てもらった段階で“君は本当に天才だよ。本物だと思う。君の思うまま自由に書いてごらん”と言われた。編集としてそりゃないっしょ、と思いつつ、けれど私は書くしかなかった。自由に書けと言われるのは、実は結構難しい。


 私は天才などではなかった。昔から本を読むのが大好きで、空想するのが大好きだっただけの女の子で。今はそれがちょっと育って女の子とは言い張れない歳にはなったけれど中身はあまり変わっていない。ただ、それだけだ。天才だともてはやされるのは正直良い気分じゃない。



 ※


 このままPC前にいても仕方がないので、私は夜食を作ることにした。とは言っても、原稿を書く為にここ数日引きこもっていたのであり合わせの材料で作るしかない。冷蔵庫を漁って食材をかき集める。レタス、牛乳、バター……現実は残酷である。困り果ててさらに戸棚を漁ると、ツナ缶があった。サラダにしても良いが、ドレッシングがない。パスタも発見したが、パスタソースの買い置きはなかった。あとは薄力粉、小麦粉などの粉類である。


「カップラーメンも、もうないし……」


 執筆の良いお供、カップラーメンの在庫は夕食の時点で底を尽きていた。



 仕方なく、私は何も食べずに再びPCと対面することとなった。予想していたことではあるが、良いアイディアは降ってこない。何にも開けてこない。


「開ける、ねー」


 そういえば以前妙な噂を聞いたな、と私は思い出した。鍵屋と呼ばれる男の噂。“開けて”と頼むと色々問題を解決してくれるらしい。




 ※


「僕は鍵屋であって、鍵で扉を開けるのが仕事です。そもそも扉探しは領分ではありません。僕はどんな鍵でも開けはしますが、扉を見つけることは出来ません」

「なるほどねー。何か理屈っぽいけど」


 鍵屋と名乗るその人の説明は、私にとっては十分納得のいくものだった。つまりは、扉を自分で見つけてから出直せ、話にならんってわけである。

 私の依頼を受けられない代わりに、鍵屋は私の相談に乗ってくれることになった。




「真実の水たまりはさ、真実しか見せてくれないのよ。で、ある日王様がその水たまりを覗き込むと、隣国が攻めてくるのが見えた」

「なるほど」

「うん、それでね、王様は水たまりに命じるわけ“我が国が滅びぬために講じるべき策を示せ”ってね」

「ほうほう」


 今書いている物語のあらすじである。女の子と彼女の犬が、あらゆる国を巡って行方不明の兄を探す物語だ。今回彼女たちが訪れる国は、真実の水たまりによって治められている国である。


「でも、真実の水たまりはあくまで真実の水たまりでしかない。真実以上を映すことができない。すっかり困り果てているところに、我らが主人公登場ってわけ」

「そういうわけですか」


 鍵屋は私の話を大変熱心に聴いてくれているようだ。


「お湯を入れたくらいじゃどうにもならない。けれど、ここで焼き鳥がキーになるってことを知るわけ」

「そこはアイテムを牛串にした方がインパクトあるんじゃないですか?確かその国は牛肉が特産品だっていうお話でしたし」


 携帯電話を方と肩と顎で支えながら鍵屋の指摘する点を必死にメモした。次々と矛盾点が上がってくる限り、やはり私はまだまだである。




 そしてそれは唐突にフッとやってきた。


「クリフハンガーっぽいのもそうですけど、なんというか……」

「これだあーー!!!これだよ!!鍵屋っち!!!」

「は?」


 感激だ。思わず“鍵屋っち”などと呼んでしまうくらい、私は感動していた。さっきまでどん詰まりだった思考が開けていく。次々と物語が溢れるようだ。私はそれを忘れないようにネタ帳に書きだした。


「あのね、私、何か開けた!!唐突に閃いたよ!!アイディアきたーーーーって感じだ!!書ける、書けるぞ!!私には、この話が書ける!!!鍵屋っち、ありがとうよ!!」




 私は電話を切った。

 書く前にやることがある。



 ※


 私は再び台所に立った。


 レタス、牛乳、バター、ツナ缶、パスタ。


 そして薄力粉を取り出す。


 まず牛乳とバターと薄力粉でクリームソースを作る。普段はパスタソースは市販のもので済ませるクチだが、昔、学校の家庭科の授業でクリームソースを作ったことがあったのを思い出したのだ。戸棚の奥の方に仕舞い込んであった家庭科の教科書を元に何とかフライパンでソースを煮つつ、パスタを茹でる。レタスとツナ缶を開けてクリームソースに混ぜ、パスタとソースを絡めれば、立派なツナクリームソースのパスタの完成である。


「いただきます」


 腹が減っては戦はできぬって言うし。腹ごしらえをしたら、また改めてさっきのアイディアを書いていこう。



 ※


 

 試行錯誤して工夫して、出来上がり!


 fin.

今回はお題要素が本当に薄くなってしまいました^^;

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