出会いも騒がしく
説明が多くなっちゃいましたが、そこはどうかご勘弁を。m(_ _)m
朝。
部屋の窓を開けて、大きく春の空気を吸いながら伸びをする。
「んん~……ふぅ…。」
大きく吸ったため少しふらつくが、酸素が肺、脳、そして全身へと行き渡り視界がよりクリアになる。
幼い時から行ってきた朝の日課。
ここは私立神崎学園の隣付近にある女子寮。
この学園の生徒なら誰でもはいれる場所だ。
一応ちゃんと男子女子別れているため、不純なことはない。学園をでて東側が女子寮、西側が男子寮となっている。
その寮の一室で窓から学園と、下の街を見渡す。
ガサガサ…。
そんな後ろ姿を見る影が一人。
まだ寝起きなのか寝癖が立っているが、顔立ちの可愛い少女だ。特に目が少しタレ気味で柔和な印象の持ち主。
そんな彼女が伸びをする人に思ったこと。
それは『なんてカッコいいんだろう』だった。
「…ん?あぁおはよう、舞花。というか女の子に対してカッコいいってどうなのよ?」
どうやら思うだけでなく、声に出してしまったらしい。
しかもバッチリ聞かれてしまっていた。
「だって、華奈ちゃんはカッコいいんだもん。
それが漏れちゃった。えへっ☆」
男子なら一瞬で落とせるであろう笑顔を華奈ちゃんと呼ばれた人に向ける。
だが当人は「はいはいそうなのね…。」と、なれた様子であしらう。
ここで二人を紹介しておこう。
まず、窓際にいて今は私服に着替えているカッコいいと呼ばれた人は三葉華奈煌。よく、というかほぼ確実に初対面の人には男子だと思われるが、正真正銘女の子だ。
名前は『かなた』と読むが親友からは華奈ちゃん(かなちゃん)と呼ばれている。実はその呼ばれ方は気に入っていたりもする。
そして、その隣で寝癖を直している少女が、神崎舞花。華奈煌とこの寮のルームメイトになってから仲良くなり、今は親友と呼べる域まで達している。
「へへへっ…華奈ちゃん。今日はどんなお洋服を着て行くのかな?」
「舞花…なんか変態みたいだ…。」
たまに言動がおかしいが、親友だ。
今日は入学式前日。つまり春休み最後の日だ。なので二人で買い物を楽しもうといい予定になっている。
今日の服装は黒のカーゴにベスト、頭にはハットと、シャープな感じだ。
だが、
「かっくいぃ~」
舞花は何故か変な発音で言ってくる。
そういう舞花は白の袖が絞ってあるシャツに明るい花柄のワンピースと、とても可愛らしくまとめている。
これだけ見ると、美男美女のカップルに見えてしまう。
実際、カップル割で映画を安くみているのだ。どうしてそんな風に見られるのか不思議で仕方が無い。
そんなことを考えていると、
「…ん?」
「ん?どうしたの?華奈ちゃん。」
華奈煌が何かに気づいた。その視線を追うと、どうやら窓の外のようだ。
この部屋の窓からは学園、学園に続く長い坂、そして街が見渡せる一番いいポジションだ。
どうしてそんないい部屋かというのは今は置いておこう。
華奈煌の視線の先にあったのは…
「はぁっ…はぁっ…ついて、来ないでよ!」
「ぼはぁ…ぼはぁ…写真!写真だけでも撮らせて!…」
「さっき撮ったのに…はぁっ…いいって言う訳ないでしょ‼」
学園に続く長い坂を駆け上がっている子がいた。それも変態に追いかけられながら。坂なためあまりスピードはでていないが、必死そうに逃げている。あれじゃあ変態にすぐ捕まってしまうだろうと思ったが、その変態はわざとやっているのか、一定の距離を保っていた。さながら、目の前の子をいたわるように。
「あちゃぁ…変態に捕まっちゃってるね、あれ。…って華奈ちゃん⁉」
振り向くと華奈煌はすでにドアを閉めて走り出していた。
慌てて追いかけて、坂の上に出るとちょうど華奈煌が変態に飛び蹴り、つまりライダーキックのようなかたちで華奈煌長いの足が、変態の腹部に決まったところだった。
「ぼへぁっ⁉」
変な声を出しながら変態は坂を転がり落ちていく。
追われてた子はビックリして唖然と華奈煌を見ている。
沈黙を何秒か経て、やっと声を出した。
「お父さん‼」
手に持っていた大きな荷物を放り出して、転がっていった変態のもとへ駆け寄っていく。
そんな中、
「「お父さん⁉」」
二人の少女の叫びが、春の朝の息吹にのせられていった。