空を見上げて風を感じる 2
「また会ったね」
「お前がここに来るからだろ」
「うん。まあ……そうだね」
あれから、私は時々この場所に来ることとなった。
私はこの男を気に入ってしまったようだ。まあ、友達としてだったけれど。
何を考えているのかは、やっぱりよく分からない。
周りの彼への評価も、あまり良くは無い。
けれど、彼は割と普通の人なのかもしれない。
――あの人とは違う。
彼は、私が居てもお構いなし。彼のしたいことをしている。
時折、話をしてくれるのは、配慮してくれているのかも、しれないけど。
「橋本君、寝てるの?」
「んー」
横になっている彼は、起きているのかわからないくらい中途半端な返事を返してきて。
天気もいいし、気持ち良さそうだ。
私も彼の隣に横になって寝転ぶ。
無いとは思うが、おかしな気持ちになられても困るので、ちゃんと膝掛けを持参した。
それにしても、勝手な人だ。
彼の顔をのぞき込んだ。
「そんな見られても困るんだけど」
彼の瞳は黒だ。
しかし、いつも空が彼の瞳の中にはある。
きっと、普通の人より、青く染まっている時間が多いんだろうな。
そんなことを考える。
「なんか綺麗だなって思って」
その言葉に彼は嫌そうな表情になった。
私なんかにそんなこと言われても嬉しくないのかもしれない。
「綺麗って言われるの嫌だ」
まあ、男の子だし。
確かに、綺麗なんて褒め言葉じゃないのかもしれない。
「ごめん」
「いや、いいけど」
彼はすねたようにまた寝はじめた。
私は一息吐いて、聞いてみた。
「橋本君は女の子たちのこと嫌い? 告白されるのってウザい?」
重い沈黙がある。
彼が何を考えているのかわからない。
なんで女の子たちはあんなこっぴどく振られなくちゃいけなかったのか、私にはわからない。
知りたい。
「告白はウザい。でも、別に女子は嫌いじゃない。荒井のことだって、結構気に入っているけど」
「けど?」
「告白とかはしないで欲しい。良い友達でいたいんだ」
そんなことは簡単だった。
だって、私は橋本君のこと大切な友達だとしか見ていなかった。
「私だって橋本君とは友達でいたい」
「そっか、ありがとう」
そう言って笑う笑顔が、今日見た中で一番良い表情で、胸の奥がズキリと痛むのを感じた。
これはなんだろう。
「そういえば。今日、丹羽先生が英語で指してくるかもしれないんだった」
「ああ、あの人、順番に指名するよな」
「予習しなくちゃ。じゃあ」
また、とは言えない。
それは、言ってはいけない言葉だ。
私はいつ彼に拒絶されるのかしれない存在なのだから。