混ぜすぎないホットケーキ
「えー、こんなクリスマスケーキって高かったけ?」
白澤楓子はため息をつく。コンビニでクリスマスケーキのチラシをもらったが、数年前より確実に値上がりしていた。
「まあ、どうせクリスマスも一人だけど……」
ため息をつきながら、チラシを丸めて捨てる。現在、過労と適応障害で休職中だった。私立の中学校で数学の先生をしていたが、想像以上の激務、派閥争いにも巻き込まれ、休職に至った。若い女だからというだけでも、仕事を押し付けられることも多かった。それでも一生懸命仕事していたら、身体も心も悲鳴をあげていたらしい。
「まあ、クリスマスケーキなんてホットケーキとかでいいか……」
なぜか仕事のことも思い出し、表情が暗くなった楓子は、スーパーに向かい、ホットケーキの材料をかう。平日の午前中のスーパー、老人や主婦しかいなく空いてる。セルフレジも全く待たずにすんだ。仕事していたら、こんな快適なスーパー、なかなか行けなかったかも。
こうして家に帰り、ホットケーキを作ってみたが、なんか美味しくない。見た目は何の変哲もないホットケーキに見えたが、どうも生地がふんわりしていない。食感が悪い。
「あれ?」
作り方、間違えた気がする。そうか、生地を作る時、混ぜすぎた。一生懸命、シリコンスプーンで何回も混ぜてた。
本当はホットケーキの生地、混ぜすぎないのがいいのだ。ちょっとダマになるぐらいがちょうどいいのだが、なぜか一生懸命混ぜてしまった。それが一番だと思い込んでいたらしい。仕事も同じ。一生懸命だったら、いつか報われると思い込んでいたが、美味しいものはできなかったらしい。
「そっかぁ……」
気が抜ける。そうだ、何でもかんでも一生懸命やればいいってもんじゃない。肝心なのは適切な方法。
これに気づいた楓子、年始にまたホットケーキを作ってみた。適切な方法で、混ぜすぎない生地を作る。美味しくホットケーキを作ることだけを目的にして。
「わ、うまくできたかも?」
出来上がったホットケーキ、ふわふわで見た目も美味しそう。はちみつもたっぷりかけて食べると、口の中は甘やかだ。一生懸命、ホットケーキを作らなくて良かった。




