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【短編】一途な愛を捧げて君を幸せにする。


「ジョット」


 オレをそう呼ぶのは、花のように可憐に笑う少女。


 太陽の陽射しで透けて煌めく金髪は温かみがあって、細められた瞳は青く澄んでいる。

 そんな笑みも紅潮した頬まで愛おしくて、たまらない。


 クソ生意気なガキだったオレでも、そんな彼女は好きだった。


 いや、好きなんだ。大好きなんだ。愛しているんだ。

 この世の誰よりも、何よりも。大事で、愛している。


「オレが守ってやる。エリザ」


 両手で包み込み、笑って見せた。


 大事な大事な大事なオレのエリザ。


 守ってやると約束した。


 どんなものからも守ってやると、オレは誓った。


「大きくなったら、結婚しような」

「うん!」


 オレもエリザも、子爵家の子だ。だから、身分差という問題もなく、結婚出来ると思っていた。


 なのに。


 なのに……。


 エリザは、伯爵家に嫁がせると言い出した。エリザの意思など無視した政略結婚だ。

 オレの父が話をしようとしたが、エリザは利益のある結婚をするのだと言って追い払われたそう。


 父は冒険者で功績を勝ち取って爵位を授かった、所謂成り上がり貴族だった。だから、オレとの結婚なんて利益が少ないと、結婚を一蹴されたのだ。より爵位が上の方がいいのだと。


 エリザは、泣いていた。

 俺は、泣くことを堪えた。


 オレ達は、引き離されてしまう。

 厳密には、エリザが王都へと連れて行かれてしまったのだ。


「必ず迎えに行くからっ!!!」


 オレは約束した。


「待ってろ、エリザ!!」

「ジョット!!」


 声の限り、叫んだ。


 伸ばした手なんて届かなかった。けれど、誓いは届いた。


 絶対に迎えに行く。

 絶対に結婚をする。


 絶対にオレがエリザを幸せにするから――――。



 そうして、オレとエリザと離れ離れになった。


 婚約者が出来てしまったエリザには、ロクに会わせてもらえないし、手紙も届くかもわからなかった。


 そもそも、他の男と文通していては外聞も悪いし、浮気を疑われる。だから、手紙も書けなった。


 けれども、迎えに行く。いつになるかわからない。だが、必ず迎えに行く。


 エリザと結婚出来るように、オレは冒険者になる。


 冒険者になって、爵位を授かって、迎えに行く。

 絶対に迎えに行くんだ。



 魔法の腕を磨き、剣の腕を鍛えた。

 積極的に討伐依頼に行って、魔物を倒してきた。


 オレは冒険者として、強くなったのだ。


 エリザと離れ離れになって、十年近くが経つ。ようやく、オレは叙爵が望める功績を得た。



 辺境伯領を襲来した黒竜の討伐。

 暴れられて、多くの被害も出た。

 大きな屋敷一つ分の巨体と翼で、街を破壊していく。


 そんな黒竜を、辺境伯領の兵士と駆け付けた冒険者が戦っていた。オレも駆け付けた一人だ。


 黒竜を見たオレは、震えた。当然、武者震いだ。


 コイツを倒せば、叙爵間違いなしの功績になる。興奮で高ぶった。


 絶対にコイツを仕留める。オレの獲物だ。


 オレの目はギラギラしていただろう。口角が上がって仕方なかっただろう。


 オレとエリザの幸せの礎になりやがれ!! 黒竜!!!


 全力投球で魔法を放ち、剣で足を切り付けて、ダメージを与え続けた。

 最後に、とっておきの大魔法をぶちかまして、トドメを刺したのだ。


 オレは他の冒険者を差し置いて、黒竜に勝利した。


 割れんばかりの拍手喝采と雄叫びが響き渡る。それを息を整えながらぼんやり見たが、フッと笑ってしまう。


 これでようやく、エリザを迎えに行ける。


 ゴールインしたような達成感を覚えたし、安堵もしてしまった。だって、これでエリザとの約束を果たせる。やっと会えるんだ。



 辺境伯卿の口添えも後押しになり、子爵の父を超えて、オレは伯爵位を授かることになった。


 王都へと向かい、王城で叙爵式を受ける。

 夜には、披露宴を兼ねた夜会も王家主催で開かれた。


 小麦色の髪はいつもツンツン撥ねていたが、それをワックスで撫でつけてまとめる。顔立ちは整っている方だが、目つきが悪くて残念だと言うのは母だった。でもオレはこんな目つきでも構わない。エリザは怖がらなかったし、赤い瞳が素敵だと言ってくれていたのだ。そんなオレも、伯爵位を授かって社交界デビューをしたのだ。


 早急に手配した肩かけマント付きの衣装には着られている感があったが、胸を張って叙爵式で爵位を授かり、夜会も背筋を伸ばして参加した。


 捜すのは、たった一人。

 エリザだ。


 王都に住んでいるエリザも、王家主催のこの夜会に来ているはずだから。

 叙爵式で国王と向き合うよりも、心臓がバクバクした。十年ぶりの再会だ。


 会いたい。会いたい。会いたい……!


 迎えに来たんだ、エリザ。


 約束を果たしに来た。


 結婚をしよう。


 ……でも、エリザの心が変わっていたら?


 手紙一つ送れなかったオレのことを忘れていたら?


 婚約者と上手くいっていたら?


 そう考えてしまったら、ドクドクと嫌な心音が響く。


 今まで考えなかったわけじゃない。エリザもエリザで、政略結婚であっても交流して、上手い具合に良好な関係になっているかもしれない。オレが入る隙なんてないかもしれない。


 ……いや、それならそれでいい。アイツが幸せだって言うなら、潔く身を引こうじゃねぇーか。

 けれども、そうとわかるまでは、諦めない。


 オレはエリザを今でも愛している。幸せにするんだ。約束を果たす。


 そして――――エリザを見つけた。


 彼女もオレに気付いて、視線を合わせた。


 当たり前だが、成長していた。

 あの日、少女だったエリザは、美しい女性になっていた。

 温かみのある長い金髪は、波打つように下ろしている。青い瞳は、オレを驚いたように見ていたが、慈愛深く細められた。オレに向けられた優し気な微笑みは、悲しそうにも見える。


 再会と言うには距離があるが、互いに認識して再会したのだ。

 十年ぶりに会えた。

 エリザにまた会えた喜びが湧く。


 だが、すぐに気付いた。


 エリザは、質素なドレス姿だ。エリザはこのパーティー会場の誰よりも綺麗だが、あんなドレスで王家主催の夜会に参加するなんて、どうしても他の令嬢達より見劣りする。普通は婚約者がドレスを贈り、それを着てくるはずだ。

 エリザの婚約者は、あんなドレスを贈ったのか?

 いや、贈られたようなドレスとも思えない。


 そもそも、婚約者はどこだ?


 エリザは、心細そうに一人にいた。エスコートもされていない様子だ。

 どういうことかと周囲を見回しながら、観察しようとした時だった。


「エリザ! 婚約破棄だ!」


 エリザの視線の先にいた男が、声を張り上げる。


 婚約破棄……? あの男がエリザの婚約者? 王家主催のパーティーで婚約破棄を言い渡すなんて、頭湧いてるのか? エリザの婚約者は、頭が湧いてる野郎なのか?


 黒髪で同い年くらいの青年。その傍らに、紫色のドレスのケバい令嬢が寄り添っている。

 オレの頭は、沸騰するように熱くなった。


 エリザという婚約者がいながら、浮気か。


 エリザはオレとも手紙すら送らずにいたというのに、そんなエリザを裏切りやがって……!


 エリザは、今までどうしていた? あの婚約者に大事にされなかったのか?


 こんな見世物みたいに、公衆の面前で婚約破棄を言い渡しやがって! こんなことされたら、令嬢は傷物じゃねーか!! オレのエリザに、なんてことをしやがる!!


「マリオ様……」


 エリザの青い瞳が揺れているのが、遠目でも見えた。


「お前みたいな貧相でパッとしない女、オレの婚約者に相応しくない!」


 マリオという名らしい男が、エリザを罵る。


 エリザが貧相でパッとしないだと!? ふざけんじゃねぇ!!


 オレは、歩み出した。真っ直ぐ向かうのは、エリザの元だ。

 それに気付いたエリザは、零れそうなほどに目を見開いた。


「ならば、エリザ・マッカートニー子爵令嬢は、私が貰い受ける!」


 オレは、声を張る。当然、注目を浴びた。


「誰だ……!?」

「オレはジョット・アルバート伯爵だ」

「伯爵だと!?」


 ああ、そうだ。オレは今や伯爵だ。伯爵令息であるてめぇなんかより、上だボケ!


「今宵の主役の一人だ」


 それを告げれば、今日叙爵式で爵位をもらった者だとわかったのだろう。マリオという野郎は、途端に青ざめた。だが、思った以上に、バカ野郎だったようだ。


「さてはエリザの浮気相手か!?」

「オレとエリザは幼馴染だが、十年会ってなかった。文通の交流すらしてない。浮気というなら、お前はどうなんだ? 隣の令嬢との関係は? エリザという婚約者がいながら、その令嬢はなんなんだ?」


 努めて冷静になろうと心がけながら、オレは鋭く問い詰めた。


「そもそもこの夜会は王家主催のパーティーだ。なのに婚約破棄を言い渡し騒ぎにするなど、それ相応の罰を覚悟してのことだろうな?」

「っ!!」


 咄嗟に周囲を見回すと、冷めた視線の貴族達と目を光らせた騎士に漸く気付いたらしい。

 自分がいかに愚かなのか。


 王家の騎士がマリオという野郎を連行していった。ケバい令嬢も騒いだから、一緒に連行されていく。

 指示をしたであろう国王を捜してみれば、階段上にいた。


「ちょっと待ってろ」

「え?」


 エリザに声をかけてから、オレは階段に向かう。国王の前で傅く。


「国王陛下。エリザ・マッカートニー子爵令嬢に求婚する許可をください」

「うむ、よかろう」


 柔和に微笑む国王が、許可をくれた。

 ガッツポーズをすることをグッと堪えて、オレは引き返す。真っ直ぐに、エリザの元へ戻った。

 そして、彼女の目の前で跪く。右手を取り、握り締めた。


「久しぶり。綺麗になったな、エリザ」

「……久しぶり、ジョット。あなたは、とてもかっこよくなったわ……」


 懐かしそうに微笑むエリザの顔は、昔と同じ、花のように可憐だ。

 成長したから、大人びていて、余計に綺麗に見えた。

 オレを見つめる青い瞳は、あの日から変わらない。


 嗚呼……変わらないんだな。安堵が広がると同時に、歓喜も湧いた。


「十年前の約束を果たしに来た。迎えに来た、エリザ・マッカートニー。オレと結婚してほしい」

「ジョット……!」


 大きな青い瞳から、涙が零れ落ちそうになるエリザは頷く。


 心臓が高鳴る。沸き上がる幸福が打ち鳴らした。


 オレだって、涙が込み上がってくるが、泣いてたまるか。かっこよくありたい。


 立ち上がって、エリザを抱き締める。成長しても、小さいままだと感じた。その華奢な身体が、可愛らしい。オレの腕にすっぽり入ってしまうほど、小さかった。愛おしい。……だが。


 拍手が聞こえた。周囲の貴族達が、オレ達を祝福してくれたのだ。


「じゃあ、これからお前を攫う」

「え!?」

「お前、痩せすぎ」


 ひょいっと、エリザを抱き上げる。軽すぎだ。

 ちゃんと食べているとは思えない。早急に保護するべきだと判断した。マッカートニー子爵家に帰すわけにはいかない。あんな婚約者と婚約関係を続けさせたマッカートニー子爵を信用も出来ないしな。


 夜会で十分顔を見せたし、帰る。王都滞在中に、屋敷を利用しようと買っておいた。使用人も雇っているし、故郷からも何人かついてきている。エリザと顔見知りもいるから、きっと安らげるだろう。


 マッカートニー子爵らしき男が追いかけてきたが、今は無視だ。


 馬車に乗り込んでも、オレはエリザを放さない。自分の膝の上に乗せたまま。


「エリザ。正直に答えてくれ。この十年……つらかったか?」

「……」

「つらかったんだな」


 黙って目を伏せるエリザが、全てを物語っていた。

 オレは、エリザを抱き締める。


「待たせて悪かった……」

「ううん、ジョットは謝らないで。約束を守ってくれた」


 ギュッと抱き締め返してくれるエリザの肩に顔を埋めれば、花のコロンの香りがした。

 知らない香りなのに、エリザのものだと思えば、心安らぐ香りだ。

 屋敷に帰れば、顔見知りの使用人一同がエリザを歓迎して、再会を喜ぶ。


「お坊ちゃま、求婚が成功したのですね」

「お坊ちゃまはやめろ。オレは伯爵だぞ」

「はい、当主様」


 朗らかに笑う昔なじみの使用人は、未だオレを子ども扱いだ。

 それを見て、懐かしそうにクスクスと笑うエリザがここにいるだけで、オレも嬉しかった。


 同じく夜会に参加していた両親も遅れて帰って来て、エリザを温かく包み込んだ。



 オレはそのうちの日に、仲間に頼んでギルドにマリオという野郎の情報を買わせる。

 翌日わかったのは、マリオとかいう野郎は最悪な元婚約者だったということだ。

 傍らにいた令嬢、オリアンナと半年以上は浮気関係にあったそう。

 エリザをよく貶すこと言っていたらしいし、エリザの扱いは決していいものじゃなかった。


 全てはマリオの実家、伯爵家に取り入りたいマッカートニー子爵が、エリザに我慢を強いたせいだ。

 マリオの野郎をぶん殴ってやりたいが、昨日の件で裁かれるだろう。のこのこ出てきたのなら、決闘を申し込んでぶん殴ってやる。


 エリザを迎えに来たと同時に婚姻について話したいと、マッカートニー子爵がオレの屋敷にやってきた。


 ゴマすりしながら、マッカートニー子爵家が得られる利益は何かと見定めに来たのだ。


「結納金はくれてやる。だが、それ以上のものはない」


 オレは、ハッキリと言ってやった。

 みすみす、エリザを苦しめた野郎に甘い蜜を与える気はないのだ。


「な、なんですと!! ならば、この婚姻はっ!!」

「この求婚は国王陛下の許可の元、行って目の前で了承を得たものだ。貴殿は、国王陛下に異議を申し立てられるのか?」

「っ!!」


 外堀は埋まっている。子爵如きが、国王に異議を申し立てられるものならやってみろってんだ。

 他の貴族も、オレ達を祝福した。それに反発する覚悟があるのか?

 こびへつらうだけの小心者のマッカートニー子爵は、青ざめて俯く。


「む、娘に会わせてもらおうか!」

「悪いが、エリザはもう帰さない。オレは許さないからな。望まない婚約に縛り付けて、エリザを苦しめたことを」

「ひっ!!」


 ギロッと睨みつけてやれば、それだけ腰を抜かしたらしい。

 そんなマッカートニー子爵には、お引き取り願った。


 予め、エリザに帰るなと言っておいたが、エリザも帰りたそうな顔はしなかったので、これでよかったのだろう。

 エリザは、オレが守る。


「エリザ。買い物行くぞ」

「え? 買い物? なんの?」

「お前のドレス。まだ参加する予定がある夜会があるから、一緒に参加してくれ。もちろん、婚約者としてな。エスコートする」


 ニッと笑って見せると、エリザは目を真ん丸にしてキョトン顔になった。


 そうして、エリザと買い物デートに出掛けて、夜会用以外のドレスも買い漁る。冒険者業で蓄えはたんまりあるから、余裕だった。

 幼い頃と違って、好きな女に贈り物が出来る。大人になったという実感をしみじみ覚えた。


 光の加減で小麦色にも見える金の刺繍が施されたドレスを買う。それは、オレの髪色にもなるし、エリザの髪色にもよく似合うドレスだ。婚約者なんだから、相手の容姿の色を身に着けていいだろう。


 婚約者。そうなのだ、婚約者なのだ。


 オレとエリザは婚約者。


「アクセサリーも買おうぜ」

「ジョットの赤い瞳のようなルビーのアクセサリーが欲しいな……」


 提案すると、エリザは少し恥ずかし気に言ってくれる。

 やや俯きつつも、上目遣い。か……可愛い……!


「オレもエリザの青い瞳みたいなサファイアのアクセサリーが欲しい」

「じゃあこうしましょう? ルビーのピアスとサファイアのピアスを買って、片方ずつ身に着けるの」

「ああ、それいいな。そうしようぜ」


 そういうことで、ルビーとサファイアのピアスを買っておいて交換することにした。


 一緒に、婚約指輪もオーダーメイドで注文しておく。花を縁取るダイアモンドのデザインを、エリザが気に入ったのでそれにした。エリザらしくてピッタリだと思ったのだ。


 よくエリザと花畑で遊ぶことに付き合っていた。花と言えば、エリザを連想するくらい、花が似合う。


 その夜に、公爵家主催の夜会に参加。もちろん、エリザをエスコートをして。


 エリザは、オレの使用人が綺麗に着飾った。買ったばかりのドレスを着たエリザは、昨日よりも綺麗で見惚れてしまう。シャンデリアの明かりで、ハーフアップにして下ろしている温かみのある金髪と色合いが変わる煌めくドレスで眩い。オレの瞳に合わせた口紅以外、控えめなメイクでも美しかった。

 綺麗だ。


 田舎貴族だったオレ達がこうして夜会に参加するのは、初めてである。初めてのエスコートは、なんだか誇らしく感じた。

 挨拶する貴族達は、祝福の言葉をかけてくれる。

 エリザは子爵令嬢ではあるが、高位貴族相手でも物怖じせずに挨拶をこなす。伯爵夫人に相応しいな。そんなエリザのことも褒められて、鼻が高い。


 話題は、オレが今まで活躍していた冒険譚。それを意外なことに、エリザも知っていて一緒に会話を盛り上げてくれた。


「ジョットのことだもの。噂を耳にする度に、詳しく聞けるだけ聞いたわ」

「エリザ……!」


 オレの努力を、エリザは知ってくれていたのだ。嬉しいに決まっている。


 そうなると、オレは罪悪感を覚えた。オレの方は、エリザが苦しんでいることを知らなかったのだ。

 絶対に償う。苦しんでいた分、幸せにする。


 オレが守るんだ。



 マリオという野郎は、王家主催の夜会を汚したということで、半年もの謹慎処分を言い渡されたらしい。オレとエリザに噛み付くようなら容赦するつもりはなかったが、王都滞在中は何もなかった。

 浮気相手のことは知らん。

 マッカートニー子爵も、何も出しゃばらなかったので、オレはエリザを故郷に連れ帰った。



 爵位はもらったが、継ぐべき領地は父が今持っているので、領地はもらっていない。

 だから帰る先は、昔エリザと遊んでいた領地、故郷だ。ちなみに、エリザの実家の領地は隣である。


 よく一緒に遊んでいた花畑に行きたいと言うから、十年ぶりに連れて行った。


 成長したエリザが立っているだけで、感動してしまう。


 嗚呼、本当に再会出来た。約束を果たせた。オレはエリザと結婚するのだ。


 幸福感でふわふわした。


 そんなオレの頭の上に、何か置かれる。花の冠だ。


「ジョット」


 昔と変わらない、太陽の陽射しで透けて煌めく金髪は温かみがあって、細められた瞳は青く澄んでいるし、花のような可憐な笑みのエリザ。愛おしい。


「大好き」

「っ……! オレの方が大好きだ!」


 両手を伸ばして、エリザを抱き締める。


「愛してる、エリザ。昔約束したように、オレはお前を幸せにするから、結婚してくれ」

「うんっ。私も愛してる。ずっとずっと、待ってた。ありがとう、ジョット」


 頬を赤らめて微笑むエリザに、初めて唇を重ねた。


 先程よりも比べ物にならない幸福感が湧く。脳の芯まで痺れるようだ。

 エリザの柔らかい唇が甘く感じるのは、気のせいだろうか。


 陽だまりの中、幼い頃に無邪気に結婚の約束をしていた花畑で、愛を誓い合って口付けを交わす。


 愛してる。ずっと愛してる。この先だってずっと。


 エリザ、お前だけを愛するよ。



 



近頃、頭痛でダウンしてしまい、微スランプにも苦しんでいますが、

ちまちま気分転換に書いた短編をあげました。


このカップルのイチャイチャをもっと書きたかったな……?

もうちょっとジョットは尖っている性格ながらも、エリザにデレデレな感じが書きたかったなぁ。


今回はそんなジョット視点で書いてみました!


よかったら、いいね、ポイント、ブクマをくださいませ!

よろしくお願いいたします!


2025/08/27◯

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