猫に暁
秋風の吹く、新月の夜だった。
毎年十月に催される祭り「百鬼行列」は、例年にも増す賑わいを見せていた。参加者は揃いの鬼面を着けて、露店に誘われながら一キロメートルの坂道を往く。
そんな〝鬼〟達の中、凛藤あおいは幼馴染の手を引いて駆けた。目指すはこの日限定のリンゴ飴。
きれいに飾った髪や浴衣が崩れるのも厭わない。ただ真っ直ぐ、目的に向かって走った。
そうしてある時、気が付いた。
繋いでいたはずの幼馴染の手が、どこにもない──。
残っていたのは、彼女が着けていた鬼面だけ。
その日から、幼馴染の三谷町猫は行方不明となった。
毎年十月に催される祭り「百鬼行列」は、例年にも増す賑わいを見せていた。参加者は揃いの鬼面を着けて、露店に誘われながら一キロメートルの坂道を往く。
そんな〝鬼〟達の中、凛藤あおいは幼馴染の手を引いて駆けた。目指すはこの日限定のリンゴ飴。
きれいに飾った髪や浴衣が崩れるのも厭わない。ただ真っ直ぐ、目的に向かって走った。
そうしてある時、気が付いた。
繋いでいたはずの幼馴染の手が、どこにもない──。
残っていたのは、彼女が着けていた鬼面だけ。
その日から、幼馴染の三谷町猫は行方不明となった。