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追放魔法戦士と風の庭  作者: 大石次郎


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7/7

多数ある制御器は石柱の上に風見鶏が取り付けられた物だった。この補修に関してはただその場に行って、ニャッハがマテリアルポーション+1を対価に直すだけだ。


問題は2つ、侵入している魔物と、実際入るとやはり距離があること。

距離に関しては致し方無い、として、魔物は全4種。多少劣化していても制御器の効果でこの4種に絞れている。


1種目は石齧(いしかじ)り。大きな岩の頭部と1本から数本の岩の腕を持つ魔物。コイツは炸裂薬(さくれつやく)の瓶を投げ付けて爆殺する。

2種目は青スライム。水属性のスライムだ。コイツは紫電薬(しでんやく)の瓶を投げ付けて感電死させる。

3種目は風のウィスプ。風のマナの球体の魔物。コイツは沈黙薬(ちんもくやく)の瓶を投げ付けて、音を消すと、空気の振動で仲間や自己を認識しているこの魔物は混乱状態になる。あとは私とモリオ3号が始末する。


道中出るこれら雑魚3種は奇襲に注意して魔法薬さえ十分なら、ニャッハとモリオ3号だけでも処理できそうだった。


風見鶏を直し、瓶を投げ付け、やたら小まめに配置されたそこそこ設備の整った魔除けの野営地で休憩する。その繰り返しで2日、進み続けた。


距離があると言っても直線なら徒歩でも1日で谷まで着けそうだが、洞窟は変動の影響で蛇行し、上下し、時に捻れ、やたら突風等も吹き、1ヵ所でも風見鶏の制御器の補修を怠ると進行が詰まる仕様で、手間取りはする。


それでもさらに進み、野営地で組立式の桶にハーブ湯を入れて足湯をしながら制御器を直すとすぐ変動するので信用度の低いマップを確認していると、


「皆、もうすぐ谷と繋がる扉までたどり着ける。扉近くで毎回ちょっかいを出してくる4種目の魔物と交戦することになる。コレは段取り無しにはどうしようない相手だ。注意しよう」


残りの魔法薬を吟味していたニャッハは警告した。


念入りに打ち合わせをした私達は扉に一番近い野営地を出発した。


5ヵ所、風見鶏を直し進むと、坂道の先に風吹く巨大な樹木で覆われた石の扉が見える広間に来た。広間は円形で、縁に古風な魔法式が施され、闘技場のようだった。


「出現はここに限定されている。間が無い。ドゥテ、補助を掛けよう!」


「はいっ」


ニャッハとドゥテは全員にディフェンドと風の守護魔法(エアウォール)を掛けた。私は短尺長巻に魔力付与(エンチャントマナ)を掛け、モリオ3号は両腕にマナを込めて戦闘態勢を取った。

これに合わせるように、


ヒュオオォォォッッッ!!!!


旋風が吹き込み、その中心に球形魔方陣が発生し、その内部に岩でできた抽象的なシルエットの人型の魔物が出現した。


代替わりするフェアリーガーデン氏に挑み続ける風の牙ダンジョンの使徒だ。


ニャッハは迷わず、時間停止薬、の瓶を投げ付けた。

使徒を取り巻く刃の風に直撃し、砕け、魔法薬が撒き散らされると同時に使徒の周囲の空間が歪み、時間は停止した。


効果時間は外部から見て10秒未満!


ドゥテはありったけの炸裂薬の瓶を投げ付け、モリオは両腕のマナをさらに高めながら狙いを定め、私は短尺長巻を大きく構え集中した。


時間停止中はこちらも手出しできない。ドゥテが投げ付けた炸裂薬も時間停止の歪みに巻き込まれ止まる。


時間停止効果が・・切れた。


ドドドドドッッッ!!!!!


直撃し、連続起爆する炸裂薬が使徒が纏う風の刃を引き剥がした。


「ヨイショッ!」


フルパワーの両腕を無防備になった使徒に撃ち込むモリオ。宙に浮いたままの使徒の右腕と左脚を砕いて両腕は粉砕した。


「ヤァアっっ!!」


私は旋回強打を連発する技、斬鉄独楽(ざんてつこま)、を放って使徒に打ち掛かるっ。この段で相手の反撃が始まり、猛烈な反応速度と力で風を乗せたカウンターを打ってくるが、ディフェンドとエアウォールと発動した技とマナエンチャントの火力で押し返す。


「ぐぅぅっっ」


ニャッハはディフェンドを張り直し続け、ドゥテはエアウォールを張り直し続ける。


モリオは隙を見てマナを乗せた蹴りを使徒の背中に打ち続け、背にヒビを入れたが、


「オッ?」


不意に首を180度回転させた使徒は左腕を撃ち出してモリオ3号の胸板を貫いて吹っ飛ばしたっ。


「モリオ!」


「ドゥテ君っ、モリオはゴーレムだ。補修できるよ!」


私も冷静だ。今の挙動と左腕を失ったことで、使徒の攻撃の手数は半減し、リズムも崩れた。イケるっ!


「爆ぜろっ」


爆破魔法(ブリッツ)を使徒の右脚の膝関節を損傷させ、一瞬風を纏った蹴りを封じた。


そのまま技を切り替えるっ。使徒は口を開けて風の衝撃波を撃ってきたが、反応したニャッハとドゥテが守備魔法を集約して直撃を回避してくれた。短尺長巻の刃を真上に向ける。


「ヤァッ!」


切り上げ技、月裂(つきさ)き、で使徒の股から脳天までを断ち割って宙に飛び上がった。


下降技も備えていたが、今ので核を砕けたようだ。石の使徒は全身が砕け、塵と消えていった。

私は着地した。動かなくなったモリオ3号を見る。


「ニャッハ。補修できそうか?」


「2通りできる。1つは風の庭のある家のメモリーオーブにモリオ3号の意識の複製情報が入っている。それを使う。もう1つはこのまま錬金術で補修を試みる」


「違いは?」


「メモリーオーブは数日前の意識に戻ってしまう。このままの補修は完全に意識や記憶が戻るか微妙だな。わたくしの錬金術の技量は4級だからね」


「・・わたしが、蘇生します」


ドゥテが進み出た。


「ドゥテ? モリオはゴーレムだよ?」


「自我のあるモリオには、魂を観測できます。蘇生、できます!」


「まぁニャッハに半端に補修されるよりマシかもな」


「言い方っ。う~ん、取り敢えず、身体は補修してからやってみよう。アズム君、近くのダンジョンの木材を取ってきてくれ」


「その辺に生えてるのでいいのか?」


私はそこらを這ってる根とも枝ともつかない木々を回収し、ニャッハはそれを使ってモリオ3号の胸に空いた穴を塞いだ。


ドゥテは昨日作ったポーション+1の1つを対価とし、ただの木の人形になったモリオ3号に手を添えた。


「ふぅ・・・モリオ、戻ってくるんだ。・・生命の火よ!」


一際強く、リザレクションが発動した。発光と共にモリオは痙攣し、頭頂部に芽が吹いて両目にマナの光が戻った。


「ン? 甦ッタノカナ?」


「モリオ3号!」


「良かったね」


「ゴーレムから別の存在に変わってないか?」


復活というより改造だな、と思いつつ、一先ずモリオ3号は戻ってきたようだった。



周囲に壁画も目立つ、谷への扉の側にはこれまでの物より大きな風見鶏型の制御器があった。

曲がり、欠け、くすみ、ヒビが入り、歪んだ蔓植物に覆われ、風に、吹かれても動かなくなっている。

それは谷への扉も同様だった。いつ砕けても不思議無い。


ニャッハはドゥテに手伝ってもらい、マテリアルポーション+1を2本と風の魔法触媒エアジェム1つを対価に、錬金術を発動させた。


「風よ、道化達を慰め給へ!」


復元される風見鶏の制御器。洞窟を吹く風を受けカラカラと回転しだした。これに呼応し、全ての壁画が輝きだし、


ズズズズズ・・・・


谷への扉の補修が始まった。ニャッハはワンドを取り出し、細かく修正を始める。


全てが整い、谷への扉は完全に封じ直され、洞窟の変動は抑え込まれた。


「代によっては大事になっていた。今回は一代引き継ぎに失敗していて、どうなることかと思ったけど、君達のお陰で助かったよ。これでルッハの代まで」


「あはは」


「ふふふ」


「エヘヘ」


光り続ける壁画に包まれた洞窟の中、透けた光の幻像として、道化のような子供達が宙を駆け回り、遊びだした。


「うん・・そうだね。いつか、風の牙ダンジョンが完全攻略されて、この子達の魂が解放されるまで、わたくし達、フェアリーガーデン家は務めを果たし続けるよ」


ニャッハは眩しそうに、子供達の幻像を見上げていた。



ジューっ! 育てたからには食うっ。


私、ドゥテ、ニャッハの家族とドワーフの家政婦は風の庭のある家の庭 (ややこしい)で、炭火を使ってリーテ山羊のバーベキューを楽しんでいた。

漂う神秘的なマナの粒子も良い隠し味だ。

飲み物は飲めるようになったモリオ3号もビールをグビグビ飲んでいる。もはやゴーレムじゃないな・・


「アズム、これからどうするんだ? パーティーはクビになったも同然だろう? なんなら蘇生所付きでダンジョン内の死体の回収業をしないか? 珍しい収納系魔法道具と脱出系魔法道具も使い放題だぞ?」


すっかり牧場ではなく蘇生所側の口振りだ。


「うーん」


肉を食う。実家から持たされた少々乙女趣味で気恥ずかしい装飾の懐中時計で時間を確認する。午後1時過ぎ。食事会を終えてから町まで徒歩で戻っても、そう遅くはならない。


「率は良さそうだし、清々しそうでもあるが」


ビールを飲む。


「ふう、そういう選択に関し、多少は反省してる私を、私は評価しているところだ」


評価が下がった試しはない。ふふん



ギルドで確認すると、ちょうど昨日、風の牙ダンジョンから大赤字で戻ってきて馴染みの宿の酒場でくだを巻いてるらしい。


酒場の前に来ていた。まだ日は暮れていない。ギルドの話ではパーティーの解散も考えているとか。ふんっ、

珍しく、少し動悸がした。


嫌われているのだろうな。また揉めもするのだろう。

しかしこの上、あの風の中へ挑むなら、私ばかりが楽に済ますのは間抜けの類いに感じている。


「・・よしっ」


私は、酒場のドアを開け、中へと足を踏み入れた。

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