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どうしても憎いあなたへ  作者: 佐藤つかさ
第二章
76/104

3-20

 竜の子は笑っていた。

 彼らしからぬ高らかな哄笑。

 大口を開けて体をくの字に折り曲げて無防備に笑い続ける。

 

 心底楽しそうに。

 だから余計に不愉快だった。


「これは傑作だ。医者がしちゃいけない顔してたよ。殺し屋の方が向いてるんじゃないのかい?」

 目尻に涙の珠を浮かべている。

 そこまで滑稽こっけいに見えたのか。


「ミナーヴァはなんであんたみたいなのと付き合ってんの?」

「相性が良かったのさ」

 皮肉のつもりだったが、アクチェはどこ吹く風よと受け流す。どうやら思った以上に人の悪意には慣れているらしい。


「話したいところだけど、僕の青春白書は1ページ目にこう書かれてる」

 続けて彼はこう言った。この先は閲覧禁止です、と。

 不意にさっきのキスを思い出す。このエロガキめ。

「話すより見せた方が早い」

 言いながらアクチェは腰に手をやると、ある塊を抜き取ったではないか。

 持ち手と引き金。

「これは、おね……ミナーヴァが使っている銃の試作モデルだ」

 銃身を手にして、持ち手をイオリに突きつける。

 掴めという意味だろう。

「…………」

 手に取るとずっしりとした感触があった。

 初めて木刀を手にしたような感触。

 

 硬く、重い。

 殺意がそのまま形になったような禍々しさを秘めている。少し持っているだけで手首が疲れてさえきた:

 ミナーヴァはこんなものを片手で振り回していたのか。調子に乗ってガンスピンまでしていたというのに。


「N ‐WGⅨ/v。試作モデルの名前だよ。それを持ったまま、うんそう。いいよ。そのまま……」

 銃身を掴んだまま、イオリは構えの姿勢を取らされる。足を開いて重心をとり、脇を締めて銃口の目標を前方に向ける。

 前にはアクチェが立ちはだかっていて、まだあれこれと指示をしている。

 銃口はしっかりとアクチェの額に向けられていた。

 これでは。

 これではまるで――

 

 まるで彼を撃ち殺そうとしているみたいではないか。



 

 銃が大きく戦慄わなないた。

 骨まで響く振動。痛み。驚き。

 そして花が開いた。

 アクチェの後頭部に咲く花の赤。


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