表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうしても憎いあなたへ  作者: 佐藤つかさ
プロローグ
7/104

1-7

『何なのさっきから! どうして秒で仕掛け解いていくのさ!』

 相手の抗議に、ユータスは心底わからないといった風に、

「……? どうするのが正しかったんだ?」

『奪い合いするんだよそういうのは!』

 その言葉に対して、ユータスは真っ向から否定した。

「こっちは生存が目的なんだから、争い合ったらまずいだろ? 業者同士だって、競い合うよりもコラボした方が長生きしやすいし」

『だからってこっちが想定してない方法でクリアしないでくれない!?』

「自分で作ったほうが早い」

『だーかーらぁー! 自分で道を切り拓かないでほしいの! 何でそんな頭の回転早いの! なんでそんな代案ポンポン思いつくの! どうしてそんなに諦めが悪いの!』

 愚痴とも罵詈雑言ともつかぬものが壁から吐き出されていく。

 なんというか、妙に人間じみていて怖さに欠ける。

 

 不意に、服が引っ張られる感触がした。

 ユータスが引っ張ったのだ。

 行こう。

 彼の唇がそう動いていた。

「行くってどこに?」

 声に出して言うと、ユータスが困ったようにあたりを見回した。


「ここから出よう。出口はオレが作る」

「でも相手が誰かもわからないのに」

 いまだ迷っている態度のイオリに、ユータスがその迷いを解きほぐすように説明してくれた。

「相手は人間。たぶん長空チャンコンの人だと思う」

 なぜ分かるのだろう。

「発音の語尾に母音がついてる。スタートって区切らずにスタートォって伸ばす感じ。長空チャンコンの人がここの言葉を話すときに出てくる癖だ。あと、たぶん伝声管を使ってここに声を送ってる」

「デンセイカン?」

「通話装置だよ。金属管でつないで、先っぽに漏斗みたいな形の受話器をつけてるやつ。管の中に声を響かせて、遠くにいても会話できるんだ。オレが手錠を解いてから相手は手錠が解けたことに気づいてた。見てたら俺が手錠をいじってるときに気付くだろ? だから相手はきっと遠いところにいるんだ」

 ボーっとしているようでいてよく見聞きしている。

 職人はみんなこんななのだろうか。

 

「ところで何でさっきから小声なの?」

「伝声管がどこにあるか、わからないからな。下手をしたら――」


『全部聞こえてたぞ……』

 

 相手の声が響き渡る。その声には怒気がにじんでいた。

 イオリはようやく、ユータスが懸念していたことが理解できた。

 目は見えないけど声はわかる。

 つまりこちらの声は丸聞こえだということだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ