表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうしても憎いあなたへ  作者: 佐藤つかさ
第一章
46/104

2-36

 緑の炎に包まれる。

 長空の衣装が焼けていくのを感じた。

 散り散りになって消えていくような、不思議な感覚。


 隣を見てみれば、ユータスの体も炎に包まれていて「あー」と気の抜けた声を出している。風呂か。


 正直な話、熱さは無い。

 ひりつくような肌の痛みもなければ、空気が焼けていく息苦しさもない。

 強いて言えば強い風に当てられてしまったかのような、その程度のものだった。ちっとも痛くない。

 あっという間に炎が萎んでいって、気づく。

 布の感触に。


 服装が変わっていたのだ。


 それは白花シラハナで言うところの着物に似ていた。

 紺の着物。

 袴は純白。されど動きやすさを優先して丈はくるぶしまで詰められている。

 上に丸い襟がついた上着を纏い、腰を布で絞っている。

 覚えがある。

 狩衣カリギヌと呼ばれる衣装だ。白花シラハナミヤコ地方を守護する“陰陽師ウィザード”なるものがまといし鎧。

 

 顔につけられた狐の面。

 ユータスも同じ衣装になっていて、こちらはカラーリングが紺ではなく緋色になっている。

 色違いの同じ衣装だった。

 

「白花の狐を意識したの。白花(そっち)じゃ神獣って聞いたから」

 

「サキュバスにとっては?」

 

 問うてみると、サキュバスが途端に顔をしかめる。

 

「害獣。アイツら、熟れた野菜すぐ食うから」

 

 後にユータスから聞いた話だが、サキュバスは生粋の農耕民族なのだそうだ。

 主にジャガイモ。クアルンなどの畜産業も営む。

 

「ユータスさん! 全力で走って!」

「オレが!?」

「女の子リードするのは、王子様の役目っ!」

 

 どうやらサキュバスは乙女座らしい。


「アンタ……」

 ユータスが呟き、サキュバスが笑う。

 しかし彼の答えは、彼女が期待していたものではなかったようだ。


「オレは女の子じゃないぞ」

 そうきたか。ミナーヴァは肩をすくめる。

「三つ編みでもしてみたら? きっと似合いますよ」

「最低でも髪が15セルトマイス以上無いと難しいだろ」

 マジレスかいと、ミナーヴァが苦笑した。


「イオリ……さん?」

 まだ呼び名れていないからか、ちょっとぎこちない口調でサキュバスが話しかける。格好に反して気を使う性格のようだ。


「王子様をよろしくね」

 本当に、格好にそぐわぬ穏やかな笑み。


 彼女は気づいているのだ。

 イオリが女の子であることを。


 その時だった

「いい加減にしろっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ