2-19
闘技場の中央は円状の戦闘リングが存在する。
リングといっても石畳を積んだだけの簡素なものだ。
その上で剣闘士が互いに骨をきしませ血しぶきを飛ばし、時にはモンスターと戦うことだってある。
しかし今日は天を衝かんばかりの塔がそそり立っている。
このアウラのために急遽建てられた建築物。
その名も――ボディ・ビル。
筋肉による筋肉のための筋肉の聖地。
なんでもミナーヴァ・キスが一晩で建てたものらしい。
「…………」
イオリはポケットからあるものを取り出した。
手で握れる程度の大きさをした円状の板。
真鍮製で安っぽいけれど、凝ったつくり。
それは一枚のメダルだった。
ルールは単純。
挑戦者は各一枚ずつメダルを所有
挑戦者同士で戦い、負かした相手からメダルを奪う。
三枚手に入れれば、ボディ・ビルに入れる権利を得られるのだ。
それはつまり、ミナーヴァと戦うチャンスを得られることと同義だ。
条件を整理すると――
最低でも三回戦うこと。
全てに勝つこと。
最後にミナーヴァ・キスと喧嘩で勝つこと。
それが、ルビーを手に入れる条件。
勝てるだろうか。
ミナーヴァ・キスは今頃あの塔でほくそ笑んでいるに違いない。
その頃ユータスは清掃スタッフと談笑していた。




