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どうしても憎いあなたへ  作者: 佐藤つかさ
第一章
25/104

2-15

 過去より戦争はなくならない。

 白と黒。

 光と闇。

 正義と悪。

 理想と現実。

 時に言葉で、時には兵器で互いの主張をぶつけ合う。自分こそが正しいと。

 あるものは熱い理想を口にして。

 そこに冷たい現実を突きつける。

 互いに譲れるわけもない。

 故に戦争は終わらない。

 

 ティル・ナ・ノーグの一角で、小さな戦争が始まるゴングが鳴り響いていた。

 相手の名はユータス。

 もう一人の名はイオリと呼ばれていた。

 試合開始。

  

「これ、未知の部品なんだって。ロマンあるよね。深い地層に埋まってたんだって」

「ああ、機械工場があった土地から出たやつだろ? 業者が地下深くに埋めた廃品」

「…………」

 

 第二ラウンド。

「これ見てよ。古代遺跡の遺産なんだって。偉い学者さんの著書にも載ってるし、古のエルフが暮らしてたって証拠もあるって」

「証拠自体がでっち上げで、その著書書いた学者探したけど、どこにもいなかったらしいぞ」

「…………」

 

 第三ラウンド。

「……ね、ねえ。遺跡に騎士の彫刻があるんだって。まだ鉄とか作れない時代にだよ?」

「そりゃ鉄作れる時代に修繕した人が彫ったからな。よくある“おあそび”だよ。見えるところはきっちり修繕して、目立たないとこに今生きてる時代の分かりやすいやつ彫る息抜き。多分騎士のファンがいたんだろ。修繕担当者の中に」

 あっけらかんとそんなことを言い放つ。


「…………」 

 試合終了。

 三戦三敗。

 成績は散々たる結果だった。

 

 夢破れたイオリになど目もくれず――というか気づいてもいない――ユータスは展示品を見つめている。

 ガラスケースに入れられた一枚の古い金貨。

 わかる人が見れば、青銅の板切れに金のメッキを塗りたくった粗悪品と見抜けるだろう。

 そしてユータスは――わかる人だった。

 

 呆れたように嘆息しながら、ユータスは一言呟いた。

「いや……本当に偽物ばっかりだな」

「あんたロマンとか無いんか!」

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