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どうしても憎いあなたへ  作者: 佐藤つかさ
第二章
104/104

3-48

「人工呼吸って、みんな力緩めちゃうんだよね。アバラ折れちゃうから。でもイオリは思いっきりやってた」

「それがいいことなの?」

「意識不明で死ぬのと、アバラ折れる代償に生き返るのとどっちがいい? あたしなら後者がいいな」


「彼女は薄っぺらい。紙みたいだ」

 アクチェの言葉である。

 イオリを評した言葉だ。


 試しにと同じことを聞いてみる。

 イオリのことだ。ミナーヴァはどう思うと。

 答えはシンプルだった。

「そんなこと言った馬鹿は誰よ?」

 真顔だった。

「忘れて」

「?」


 ミナーヴァは隣で包丁を通していく。

 慣れた手つきでロブスターの殻に刃が通っていく。

「イオリがティルナノーグに来て二年。一年三百六十五日を倍にした七百三十。それだけの数を紙にして積み重ねれば一冊の本だよ。それは確実にイオリの糧になる。価値になる。力になる」


 クレイアもそうだ。

 孤児だと知ったのは二年前。

 決意したのも二年前。

 それから研鑽を重ねてきた。


 二年。

 それはイオリと同じ時間。


 これは、互いの積み重ねの見せ合いっこだ。


 ミナーヴァは無言で手を出した。

「何よ」

「アンプル貸して。あの馬鹿に返す」

「気づいてたの?」

「試合で変なトラウマ二個も抱えたくないでしょ? ホラ貸して」


 手に取ると、歯を剥いて、大きな顎門を見せつける。大量のスパゲティでも頬張るような品のなさ。

 そのままなんでもないことのようにーー


 アンプルを口の中に放り込んだ。


「結構強いんだってさ。それ」

「毒には慣れてる」

 バリバリと噛み砕いて、豪快に飲み込む。

「よく食べれるね」

「ちょいと面白い料理する友達と、毒草渡してくる友達と長いこといるとこうなるの」


「もしお母さんのこと知りたくなったら、手伝ってくれる?」

 ミナーヴァは答える。あたし高いよ、と。

 思わずクレイアは微笑んだ。


「クッキー三枚でどう?」

「乗った」

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― 新着の感想 ―
[一言] クレイアちゃんもミナーヴァちゃんも色々ありますね。ミナーヴァちゃんの恋愛事情もなかなかにすごい。 うちの子(イオリ)は海での出来事はきっと忘れてますね。 続き楽しみにしてます!
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