死霊屋敷完成披露…プールの希望…俺に新しい仇名がつく事は何とか阻止できた…そして岩井テレサの会合に赴く。
俺達は店内にいたカップルの死霊に会釈をしてランドクルーザーに乗り、死霊屋敷に向かった。
死霊屋敷は強化要塞化工事が済んでいて、俺達はガレージにランドクルーザーを入れ、荷物を持って死霊屋敷に入った。
「うむ、ガレージも中々の出来だな。
喜朗おじが欲しがった工作機械も入れる事が出来たしな。」
「うん、四郎、確かにあのガレージは頼りになる出丸だよ。」
「そうじゃの、あのガレージは南側と、東側西側半分を悪鬼の攻撃から屋敷をカバーできるじゃの。」
「でも四郎、何で喜朗おじは色々な工作機械を欲しがったの?
まぁ、いろいろと便利だと思うけどね。」
「ふふ、彩斗、喜朗おじは色々器用な男でな。
まず、あの武器庫で持て余してる大量の手榴弾や擲弾などを使って新しい武器を作るとか言っていたな。
細かい事を訊いたが、まあ、出来上がりを見ればわかるよと笑っていたな。」
「そうか、でもこの先何か必要な時にはあの工作機械があれば喜朗おじが色々作ってくれそうで便利ではあるよね。」
俺達は家具をそろえた暖炉の間で寛いだ。
屋敷には俺たち全員が快適に過ごせるように家具一式を揃えて運び込んである。
「ああ、ここは落ち着くな。
皆で家具屋に4日も通い詰めた甲斐があったと言う物だな。」
淹れたコーヒーを飲みながら四郎がソファに寛ぎながら至福の顔をした。
「リリーの家にあったでかいテレビも入れたからな、ここでアニメも映画も見放題だし、われの部屋にも65インチのテレビを入れたからな。
いつリリーが来ても大丈夫だ。」
「確かにそうじゃの!
隣の書斎にわらわのスペースを作ったしテレビも有るから誰に気兼ねをせずにわらわも色々見放題じゃの!」
「これでしばらくここで皆暮らせそうだけど、やっぱり全員がずっと住むとしたら手狭になるよね。
いくら2階で2部屋を割り当てていても明石夫婦と司と忍が一部屋づつじゃやはり狭いからね。
親友だって言っても真鈴もジンコも自分の部屋が欲しいと思うしね。」
「そうだな彩斗、明石達が来たらあのドライブインを見に行くか。
そして、ガレージ同様に明石達の家も別に建てるというのは考えるべきだな。
勿論、悪鬼の襲撃に耐える防備を施してな。
喜朗おじと加奈が住む離れをもう一つ作っても良いだろうな。
なに、金はまだ余裕があるからな。」
四郎が言う通り、屋敷の強化工事は思っていたよりもあまりお金を使わなくて済んだ。
岩井テレサの紹介してくれた業者が良心的な価格にしてくれたのと、俺達で出来る工事、屋根裏から周囲を監視狙撃できる鐘楼は俺達の日曜大工で作り上げたりなど節約できるところは節約した甲斐があった。
その時に屋根裏のスペースの一角にユニットバスと簡易キッチンを備えた加奈の為の部屋も作ったし、それも俺達が作ったのだ。
「あのドライブインを買うか借りるかして内装や設備を整えて、明石夫婦の家と喜朗や加奈の離れか…今の現金が随分少なくなるけど、元々収入が多くなったからね。
行けると思うよ。」
「うむ、よし、われの金貨もあれから手つかずで残っているしな、明石達が来たら話してドライブインを見に行こう。」
午後8時頃に明石達、残りのメンバーがレガシーとハイエース、ボルボとRX7でやって来た。
新しく作ったガレージは全部の車を入れてもまだ2台くらいは駐車できるスペースがあった。
司と忍と圭子さんとジンコ、加奈は工事を完成してから初めて来たので一通り新生死霊屋敷を案内をした。
彼女達のはしゃぎ様は凄かった。
俺達も喜び驚きながら屋敷を見て回る彼女たちを見て顔がほころんだ。
そして、最後に屋根裏に行き、階段を上がって鐘楼に昇った。
この階段はいざと言う時に手すりを掴んでそのまま滑り降りれるようになっていて、階段の下からでも鐘楼への扉をガチャンと閉められれるようになっている。
「凄いわね、周囲300メートルはほぼ死角なしね。」
圭子さんは8角形の鐘楼から周りを見て言った。
8角形の角の部分全てに銃座を作ってあり、圭子さんにレミントンかサベージのライフルを持たせたら屋敷に近づく悪鬼をバタバタと倒せるだろう。
「圭ちゃん、もう暗いけどな、こうすれば凄いぞ。」
明石が7・62ミリNATO弾まで耐えるように頑丈に作られた手すりにあるスイッチを入れた。
死霊屋敷を取り巻く数か所の街灯が点き、周囲の景色を照らし出した。
勿論、街灯を点灯出来ない状況の為にスイッチの横のボックスには赤外線暗視ゴーグルが5個入っている。
司と忍、ジンコと圭子さんが街灯に照らされた景色を見て、うわぁ!と声を上げた。
「素敵ねぇ!」
「公園か遊園地みたいだよ!」
「季節が良ければ夜の散歩もロマンチックだね!」
「とにかく夜でも近づくやつらは丸見えだな。」
「電気代掛かるんじゃないの?」
「ご心配なく、太陽光と風力発電で十分賄えるしいざとなった時にガレージと屋敷のボイラー室に発電機も備えてあるよ。
でかいリチウム電池もかなり置いてあるからね。
電気に関してはどんなに使っても自前で発電して余裕があるくらいだよ。」
「水も井戸から取れるしな、水質調査もやって大丈夫だったし、濾過装置も良い奴を入れたから心配ないぞ。」
「食料さえあればかなり長い間立てこもる事が出来るな。」
「私、空いている所に…どこでも空いてるけど畑でも作るかな?」
「圭ちゃん、それは良いアイディアだな!」
「ママ!イチゴ作って!」
「私はメロン!」
「はいはい。やってみようかな?」
「ねえ!牛とか馬も飼えない?」
司が圭子さんに尋ねた。
「それはちょっと無理かな~。
牧場はちょっとね~。」
圭子さんが苦笑いを浮かべ、司がふぅとため息をついて呟いた。
「それならプールが欲しいな~。」
「おいおい、リゾートホテルじゃないんだからな。」
明石が司の頭を撫でながら言った。
プールか…良いなぁ…明石親子の会話を聞いた俺の目に洒落たプールが見えた。
陽が沈んだ後、皆寝鎮まった後でユキと2人きりプールサイドで寛いで時たま、プールで遊んで、洒落たカクテルを飲んで…そしてユキがプールの中で俺のあそこに手が伸びてエッチな笑顔を寄せて来て俺の耳元に口を寄せて…ねぇ、誰も見ていないしここで…俺も思わずユキの体に手を伸ばして体を押し付けて…
「やれやれ、顔面鷲掴みキス拒否られ野郎が何かエッチな妄想をして居るじゃの。
周りに思念が駄々洩れじゃの。
ウキャキャキャ!」
「あああ!はなちゃん!それは言うなって!
鷲掴みはぁ!俺は!俺はぁ!」
慌ててはなちゃんの口を塞ごうとした俺を見て真鈴やジンコや圭子さんや加奈や、司や忍まではなちゃんを見て首を傾げた。
ジンコが皆の疑問を代表して尋ねた。
「はなちゃん…顔面鷲掴み…キス何とかって…なに?」
やばいやばいやばい!皆が俺とはなちゃんを交互に見ているよ何か面白い話を聞けるんじゃないかと期待の目で見ているよ!
やばいよ!俺の立場無いよ!
俺は一応ワイバーンのリーダーなんだぞ!
こんなのがばれたら…もしもはなちゃんが話して皆が腹を抱えて笑い出したら俺は手すりを乗り越えて身を投げるよ!潔く死ぬよ!でもそうなったらまだユキと俺との記念すべき10回突破エッチがぁあああああ!深夜のプールでの秘め事がぁああああ!
「まあまあ、はなちゃん、それは話さないと約束しただろう?
君達も聞かなかったことにしてやれ。
司と忍にはまだ言えないような事だからな。
うむ、しかし、彩斗の妄想がわれ達にも流れ込んでな、われはリリーとそんな事してみたいぞ。」
「そうだな、俺も圭ちゃんとそんな事してみたいな。」
「そうだな、俺は誰が良いかな?
日替わりか週替わりで楽しみたいな。」
俺の思念を呼んだ悪鬼メンバーどもがそれぞれの相手を思い浮かべ妄想に浸っていた。
「成る程プールか…なかなか良いじゃないか…幾らくらいかかるのかな?
まぁ、水はタダだし、あまり無駄使いしなければそれくらいの贅沢は…な。
皆の水泳の練習もできるし、それに緊急時にポンプをプールに放り込んで放水すれば、いざ屋敷の火事などの時に役に立つかも知れないからな。」
素晴らしい!明石が俺の妄想を現実化するための理論武装をしてくれた。
鐘楼からの階段を下りながら、明石が圭子さんにプールの事を耳打ちし、1階に降りるまでに圭子さんが真鈴達にプールの事を耳打ちした。
女性メンバーが顔を赤く火照らせながらうっとりしながら、プール良いわねぇ~と口々に呟いていた。
はなの野郎が口走った顔面鷲掴みキス拒否られ野郎の事はすっかり忘れ去られているようで俺は安心した。
そして、恐らく岩井テレサの組織に起きた大きな災難の事、俺達に降りかかるかも知れない危険な危機もしばし忘れる事が出来た。
遅い夕食をありあわせの物で作ろうと言う事になった時に、四郎が明石と喜朗に廃ドライブインの事を話した。
「おお!四郎、それは直ぐ見てみたいな!」
「なるほどそこならここから充分通えるぞ!
見に行こうか!」
明石と喜朗が乗り気になって、結局俺たち全員車に乗って廃ドライブインを見に行った。
あのカップルの死霊はどこかに消えていた。
恐らく夜の散歩を楽しんでいるのだろう。
明石達はドライブインの周りをマグライトで照らしながらつぶさに観察して、これなら手を入れれば行ける!と太鼓判を押した。
そして、市蔵を倒した晩に食事をした食堂がまだ営業していたので、俺たち全員で食事をする事になった。
団体客で恵比須顔になった店の大将が廃ドライブインについての質問に気軽に答えてくれた。
どうやら数年前まで老夫婦と息子夫婦でドライブインをやっていて、老夫婦が相次いで体を壊し、息子夫婦は別の所に、もっと人通りがあって小さい所に店を移したとの事だった。
大将はドライブインは結構繁盛していたと答え、もしも俺達が開業するなら大歓迎だと笑顔で言った。
確かにぽつんと一つだけの店よりも何件か並んだ方が人目を引いて繁盛するものだ。
俺達は気持ち良く食事をした。
四郎と明石、喜朗の大食振りに大将は驚きながらも喜んでくれた。
『ひだまり』の移転に希望を見出し、プールでのロマンチックな未来に思いを寄せた俺達全員が何としてもこの素晴らしい仲間と環境を守り抜こうと決意した。
俺達は死霊屋敷に戻り、夜のナイフトレーニングを屋根裏で行い、のんびり風呂に浸かって汗を流し暖炉の間で寛いでからそれぞれの部屋で眠りについた。
翌朝は恒例の枕元にたらいとすりこぎでガンガンと叩かれて四郎に起こされ、朝のトレーニングをした後で朝食をとり、明石達に後を頼んで俺と四郎、ジンコとはなちゃんはマンションに戻って岩井テレサからの迎えを待った。
続く