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猿人と猫人間

「しらけた。けえるぞ」

 群れのリーダーらしきオオカミ男が言って、子分達を連れて帰って行く。


「フーーッ、助かったぁ」

 と、命拾いしたとばかりに背の高い猫人間が言った。


 パッと見、俺と同じ高校生だ。


「私達、彼のお陰で救われたのよね」

 何故か女性の猫人間が大雅に感謝する。

「フン! 誰が助けてくれって言ったんだよ。俺が獣人じゅうじんを倒していたよ」

 生意気な猫人間が迷惑そうに言った。


 獣人、そうか、あのごっついの、獣人って言うんだな。で、誰だ、こいつ。俺と同じ、まだ子供だろう。どう見たって、木刀だけであの凶暴なオオカミ男に勝てるわけがないのに……。


「何故、襲われていたんだ? さっきのオオカミ男、いや獣人に襲われそうになっていただろう」

 そう大雅が聞くと、

「狩りだよ」

 大雅のそばに居る背の高い猫人間が言った。

「狩り、だってぇ」

「ああ、俺達を狩っていたんだ。狩猟民族である肉食獣――猛獣から進化した捕食者だ」

 彼の言葉通り、まるで分厚いゴムのように刀や弓矢も防ぐだろう強靭な肉体。猫人間の天敵で、束になっても勝てない相手。


「俺達は農耕民族で、ヒト、君はヒトとの間で人間と呼ばれているんだ。俺達とは違う種族で、確か、猿の進化系なんだろう。話に聞いていただけで、見るのは初めてなんだけど」  

 珍しそうに言って体の隅々を見る。


 外国人と同じ、いや、それ以上の宇宙人のように俺は映っているんだろうな。


「で、なんで獣人達は俺を見て恐れていたんだ? あ、ひょっとして、俺の潜在能力に恐れていたのか。何せ俺は忍者の…」

「ちげぇよ! 誰が猿人のお前なんかを恐れるかよ」

 すかさず生意気そうな猫人間が言った。

「猿人、って、俺のこと?」

「ああ、そうだ。ズル賢くて怠け者の猿に似ているから、そう呼ばれてんだよ」

「俺が、猿人って……」

 言って背の高い猫人間の方を見る。

「まあ、君が傷付くと思ってあえて言わなかったんだけど、この世界じゃ、君は猿人と呼ばれているんだ」

 気まずそうに言うが、

「こいつに遠慮なんていらないって」

 面倒臭そうに生意気な猫人間が言った。

「まあまあ」

 背の高い猫人間が間に入って続けた。

「俺はロッチ。で、口の悪いこいつはタワン。そして、フランにシングだ」


 へぇ、フランって言うのか。


 他の名前はともかく、フランという可愛い女性の名前だけは大雅の頭に刻まれ、完璧に記憶された。


 亀の甲羅を背負った幼い子供のシング。


 鎧のつもりか? とクスッと笑う。


 よく見ると、左右も瞳の色が違う。右目が青色で左目が茶色のオッドアイ。


 幼いほど、顔のくすみが濃いんだな。やっぱり、シャム猫の子孫だ。


「こいつ、何故だか、どんな動物にも好かれる特技があるんだ」

「そうなのか? まあ、それだけ生き物に対して愛情深いってことなんだろう」

 疑うこと知らなそうな純真な少年を見ながら大雅は言った。


「俺の家は剣術道場をやっていて、そこにフランとタワンがちょくちょく顔緒出しているうちに住み着くようになった。そして、シングは道場の前に捨てられていたんだ。俺達のムアン村は、雨が降らず日照り続きで、干ばつによる食糧不足になってしまって。だからなのかな、養えないからと捨てられたんだろう。親父はシングを引き取り一緒に暮らすようになった。俺は道場の次男坊だから、いつか家を出て行かなければならない身。三人は居候の身だから肩身が狭かったんだろう。だから、みんなと一緒に村を出たんだ」


 皆の視線に気付き、

「あ、おれは大雅、朝倉大雅って名前だよ」

「そう、タイガって言うのか。獣人は人間を恐れていたんだ。君に触れると消えて無くなってしまうからね」

 にわかには信じられない話。

「信じられないって顔をしているね。俺も信じられない。昔から聞く言い伝えだからね。こうして人間である君に会うの、初めてだから」

 その言葉に大雅は思わず離れて彼らと距離をとる。

「大丈夫だ、触れなければなんともないよ」

「そ、そうなのか、ならいいんだけど……」

 嘘を言っているようには思えず、受け入れるしかなかった。



 獣人と猫人間の間に分け入った格好の大雅。

 結果として狩りは中止、命拾いしたようだ。


 猫が支配する世界か。じゃあ、人間の先祖である猿は猿のまま、全く進化しなかったってことなのか? 狩猟に長けた猫がこの星の主として、猿に代わって人間として進化したんだな。

 

「それにしても、お前、変な耳してるな。猿と同じ位置に耳がある。猿人は怠け者の猿の親分だな」

 とタワンが見下したように大雅を馬鹿にする。

「変な耳、か」

 言いながら大雅は耳をさする。

 

 人間の耳は普通、顔の横に付いているもんだろう。頭の上にあるなんて……俺が変じゃなく、そっちが変じゃないのか。


 と当然大雅は思うが、口に出しては言えない。

 想いビトであるフランが傷付いてしまうから。


 猫なのに尻尾が無い。きっと、進化の途中で消えてしまったんだろう。人間にも尾骨、尻尾の名残はあるから、そこは同じなんだな。

 

 と、ぼんやりフランのお尻を見ていると、

「えっ、見たいの…」

 と赤い顔をしながら言うので、

「誤解、誤解だよ、興味ない、訳じゃないけど…」

 誤解を解こうと慌てて言うが、かえって勘違いされてしまう。

 ましてや下着を穿いていないから下半身がスースーし、それに反応して否応なしに彼女を意識してしまう。


「尻尾は子供の頃に抜け落ちるんだ、そんなことも知らんのか? もしや、猿人にはそんな現象はないのか」


 人間でいう歯が抜け落ちる現象と同じなんだな。子供の頃、乳歯から永久歯へと生え変わるのと同じ。それぞれ違うんだな。


 と納得の大雅。


「なんで、この場に立ち止まっているんだ? 獣人とやらが居座っているんだろう」

危険地帯にとどまる理由が大雅には分からない。

「古代文明を伝えた王の墓を探しているの。最も栄えた三代王、武王と呼ばれたラームカム王の墓をね」

 とフランが説明する。

「そんなに凄い王様がいたのか」

「ここは文明発祥の地とされる都の跡。今は草木が生え、森になっていて繁栄の面影はないけれども、紛れもないスコタイ王国の都だよ」

「そうなのか?」

 大雅はジャングルと化した一帯を見渡した。 


 ふと、大雅は考えて、

「じゃあ、お前達は墓泥棒か」

「聞き捨てならぬこと言うな!」

 即座にタワンが否定する。

「さすがに副葬品には手を出さないよ。遠い、俺達の先祖だからな。俺達の目的は、王と共に埋葬された書物なんだから」

 とロッチが言うと、

「一冊の本を血眼になって探しているって言うのか?」

「単なる書物じゃない。聖書と呼ばれるものなんだ」

 ロッチが詳しく説明する。

「聖書?」

「そう、聖なる書。その本に、『財宝の隠し場所を記した』との言い伝えがあるんだ。莫大な財宝の隠し場所をね」

「早い話、トレジャーハンターか、夢があるなぁ」

 大雅の心をくすぐる。


「でも、宝がある場所が分かっていて、何故、王様はほおっておいたんだ? 普通、全てを国に持ち帰るだろう」

 と疑問に思う大雅。

「さあな、何か理由、持ち帰れない理由があるんだろう」


 持って帰れないほどのお宝か……。ワクワクしてくるな。


 想像を膨らませ、大雅は興奮した。


「お宝が見付かったなら、そのお金で新しい道場を開きたい。タワンやフラン、シングのような孤児を引き取り、自分達の小さな町を作りたい。それが俺の夢なんだ」

「一種のコミュニティ、小さな共同社会だな。良いことじゃないか。立派だよ」

 と大雅は感心する。


「俺は聖剣だ」

 タワンが言った。

「聖剣?」

「ああ、この世の全ての物が斬れる優れものだ」

「なんでも切れるって、斬鉄剣じゃあるまいし」

「いつか立派な剣士になって、どこか大きな国に仕えたい。そのためにロッチと行動を共にし、その旅の中で剣士として必要な知識・技能・精神力を養い、自身の資質を高めるんだ」

「仕官を夢見て、剣術の鍛錬に励んでいるのか」


 まだ若いのに、剣術修行の剣士か……。武士が剣術などの武芸を磨き己を高めながら、仕官すべき主君を探しもとめているのと同じか。だからなのか、お宝には興味を示さないんだな。さすがは剣術修行の身、欲のない奴。そのことだけは見直したよ。


「伝説では、異世界、つまり、君の世界からから船に乗って遣って来たそうだ」

「それじゃあ、先祖は猿人か」

「俺は認めないがな」

 タワンがきっぱりと拒否する。

 先祖が猿人だとは絶対に信じない。

「まるで、方舟伝説だな」

 遠い過去の出来事を大雅は頭の中で想像した。


「肝心の、都がどこにあるのか分からないんだ。俺達がこの場所じゃないかと、探しているところなんだが……」

「本当にあるのか?」

 大雅が疑いの目を向けるが、

「さあ……」

 自信なさそうにロッチは答える。


「こんなジャングルの中じゃ、王宮がどこにあったのか見当がつかないんだ。すっかり森の中に隠れてしまっているからな」

「それに……」

「それに、なんだよ」

「昔から多くの人がその場所を探しているんだけど、未だに、その痕跡すら見付かっていないんだ。だから、誰も信じてはいないし、単なる伝説だって」

「じゃあ、何故?」

「これだよ」

 言ってロッチが一枚の古びた紙を見せた。

「何か、地図のような」

「私が見付けたの、王墓の場所が書かれた古い地図を、村の図書館で」

 とフランが言った。

 漠然と書かれた地図。

「おおざっぱな地図だなぁ」

 子供の描いたような地図に複雑な思いの大雅。

「ご免なさい。貴重な本なので貸し出しは出来ないから、その場で、手書きで書いたものなの」


 完璧そうに見えるけど、絵だけは苦手なんだな。そこも男心をくすぐるんだよなぁ。


「こんな物で分かるのか? この地で合っているのか? 見渡したところ、ジャングルだけれど」

 どうも信憑性しんぴようせいに欠ける。けれども、他ならぬフランが真剣に言っている。信じないわけにいかない。


「だから、この場を離れられないんだ。本格的に探そうにも、獣人がウロウロしていたんじゃ探索が進まないよな」


「全てを捨てて俺達はここに来たんだ。絶対に見付けてみせる。もう、後戻りは出来ないんだ」

 そうロッチが言うと、

「人生を変えるチャンスを、絶対に見逃したりはしない。自分自身が強くなるために村を出て来たんだからな」

 タワンも力強く言った。


三話で大体の内容が分かったと思いまが、こんな感じで話が進んでいきます。土曜日の仕事終わりに投稿しますので、暇な時にでも読んでいただければ幸いです。

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