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18/20

18.結果良ければ全て良し!です


「あ、アンタ! この前の……!」


 女男が私を指差し、動揺したように声を荒げました。

 人様を指差しちゃダメって習わなかったのでしょうか。……まぁ所詮賊に堕ちた人には無理な話か。


「チィッ──! ここまで上手くいってたのに、アンタのせいで!」

「私のせいにされても困ります」

「アタシが悪いっての!?」

「はい。そうですね」

「ムキィィィ!!! ムカつく小娘ね!」


 と、女男は激昂し、得物をこちらに向けてきました。


「あら? 私とやるつもりですか?」

「あの時は油断しただけよ! 今度は負けないわ!」


 …………随分な自信ですね。

 あれだけ無様に負けたくせに、まだ勝てる見込みがあると思っているなんて、何を根拠にそう思っているのでしょうか。


 まだ隠している切り札を持っている?

 それとも、ただの強がり?


「まぁどっちでもいいですね」


 何を隠し持っていたとしても、この女男が私を傷つけることはできないでしょう。


「あなたを再び捕縛します。──お覚悟を」

「ふんっ! 出来るものならやってみなさい! 出来るものなら、ね!」


 ここで予想外のことが起こりました。

 てっきりこの前のように斬り掛かってくるのかと思ったら、一歩身を引いて私から距離を置き、腰から丸い玉を左手に取り出します。


「なにを、っ!」


 不思議な行動に眉をひそめた、その時──地面が大きく揺れました。

 私としたことが外部からの邪魔に反応が遅れ、ほんの一瞬だけ、女男から目を逸らしてしまったのです。


 ──あ、やば。


 そう思った時にはすでに遅く、輩はその左手に持った球体を思い切り地面に叩きつけ、激しい光が辺り一面を照らしました。

 私は生まれつき身体能力が高く、当然、視覚も人一倍優れています。

 だからこそ輩が行なった目眩しは効果的で、お恥ずかしいことに私は侵入者どもの姿を見失ってしまった。


「…………逃げられてしまいました、か……」


 ようやく視界が元通りになった時、人の気配はどこにもありませんでした。

 水面が不規則に揺れている。

 ……おそらく、水中を通って逃げたのでしょう。


『追うか?』

「……いえ。諦めましょう」


 普通に逃げられたのでは、まだ追えました。

 あの女男からは相変わらず強烈な香水の香りがしたし、その残り香を辿れば追跡は容易だった。


 しかし、水の中に行かれてはどうしようもない。


 ぶっちゃけ下水の中に入るのも嫌だし、侵入者の目的が賊の頭の救出だったなら、これ以上の警戒は無用でしょう。

 ……不本意ですが、相手方の目的は達成したわけですからね。


「まずは戻って報告を」

『それと、地面をぶっ壊したことへの謝罪も……だな』


 言われて気がつき、上を見上げます。

 何とそこには透き通るような青空が──ここは地下用水路なのに、おかしな話ですよね。


「謝らなきゃ、ダメですかね……」

『これで侵入者を捕らえていたなら話は別だったが、失敗したからな』


 くっそ、今から追いかけ…………流石に遅すぎますよね。


「やだなぁ」

『そう思うなら、今度からは考えて行動することだな』


 嫌だ嫌だと思いながら、天井の穴を伝って地上に戻ります。

 すると大勢の騎士達が穴を囲むように待機していました。その中にはゲルド団長の姿もあります。肩で息をしているところを見るに、今急いで駆けつけてきたようですね。


「ヴィアラ、どの……?」

「これはこれはゲルド団長。まさかここで会うとは思っていませんでした。貴方も侵入者を探してここに?」


 彼らは穴の中から現れた私を見て、とても驚いた様子で目を丸くさせています。


「あ、ああ……そうだ。……その、ヴィアラ殿こそなぜここに?」

「私も同じですよ。あの後、ゲルド団長に協力を頼まれて私も独自に調査したところ……侵入者が地下用水路にいることが判明しました。侵入者は賊で、彼らの目的は以前私が捕縛した賊の頭の救出。それを阻止しようと思ったのですが……申し訳ありません。奴らの予想外の抵抗にあい、逃しました」


 そこまで説明して、一区切り。

 ゲルド団長は考え込むように、顎に手を置きました。


「賊の仲間の救出、そしてヴィアラ殿ほどの手練れを相手に逃げ切る奴らの抵抗……なるほど。先程の地揺れは賊の仕業だったのか」


 ──ん?


「この大穴は地揺れの影響で崩落したのだろう。──くそっ! 奴らめ卑怯な手を!」


 ──んん?


「ヴィアラ殿の尽力のおかげで奴らの目的が分かった。賊の頭を逃したのは痛手だが、奴らの目的が達成された以上、我々もこれ以上の捜索は無意味だろう」


 ──んんん?


「とは言え油断するのは禁物だ。再びの侵入を警戒しつつ、我々は任務に戻るとしよう。──全員聞こえたか! そういうわけだ。引き続き警戒は怠るなよ!」

「あ、えっと……」

「ヴィアラ殿のおかげで侵入者の目的が分かった。……また助けられてしまったな。貴殿の協力に心から感謝する」


 これは自分で開けた穴です──とは、もう言えない雰囲気。

 困った私は笑顔で親指を立て、一言。


「どういたしまして!」

『おいこら』


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