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1.恋がしたいです

新作です!

楽しんでいただけたら幸いです!


「『恋』がしたいです」


 キンキンに冷えたエールを飲み干し、ドンッと叩きつけるようにジョッキを卓上に置きます。そのまま一言。私は一緒に飲みにきた友人に、そう言いました。


 私、シルヴィア・ガレット。

 性別、女。種族はエルフ。年齢は秘密。体重も秘密。職業は騎士の中でも少し変わった『特例騎士』をやらせていただいています。趣味は体を動かすこと。恋愛経験なし。処女。ちなみに年金は1億ユルです。


 とある理由で故郷の森を飛び出した私は、傭兵として金を稼ぎつつ大陸中を歩き回り、その後ラエット王国に身を置くようになって賢王と名高い陛下より騎士の地位を賜りました。それからは特例騎士として剣を振り続けている間に『戦姫(せんき)』という二つ名を頂いたり、他にも色々と不名誉な異名で呼ばれたりと。思い返せば随分と長い旅をしてきたなと実感します。


 そんな私は、ふと、思いました。

 そういや私って恋をしたことがないな、と……。


 私は『恋愛』を知りません。

 誰からも愛されたことのない私は、誰かを愛する感情を知らないまま育ちました。


 気づけば恋愛からは程遠い生き方をしており、今となっては恋愛を考える暇もないほどの激務を与えられている。

 …………いや、不満はありませんよ?

 騎士は魔物討伐や他国との戦争に忙しいですからね。恋愛している暇がないことくらい、私も理解しています。──しかし同時に、このままでいいのかと思う私もいました。


 知り合いの女性は皆、婚約済み。

 貴族社会には疎いのですが、どうやら人間は20歳後半を超えれば『年増』と言われるようになり、男性からは恋愛対象に見られなくなるのだとか。


 …………え? それってやばくね?


 私は焦りました。

 エルフは長寿です。私はすでに200年ちょっと生きています。人間年齢に変換すればまだ若い方ではあると思いたいのですが、いつまでもこのまま……って訳にはいきません。

 流石の私も恋愛経験が無いままババァ────失礼。お婆さんになるのは勘弁したい。だからそろそろ恋したいなぁと思い、本日、暇そうにしていた同僚を拉致ってお酒を飲みに来たのです。




 ──っと、説明が長くなってしまいましたね。

 では本題へどうぞ。




「……………………はぁ……」


 おっと、なぜか溜め息を吐かれてしまいました。

 特別にお酒を奢ってあげたのですから、何かしらの助言をいただけるかなと期待していたのですが、この反応は予想外です。


「お前、正気か?」


 挙句には正気を疑われる始末。誠に遺憾です。


「失礼な。私は正気だし本気です。だから暇そうにしている貴方を連れて、相談してもらっているのです」

「暇そうに、って……激務疲れで休憩しているところを無理矢理引っ張ってきたのはお前──」

「ん? 何か言いましたか?」

「…………なんでもない。お前はそういう奴だよな」


 今回、私が相談役として選んだのはロートレク・シュレイダ。

 彼は私の同僚兼数少ない飲み仲間で、騎士の中では珍しく婚約者を持っています。

 しかもお嫁さんになる予定の令嬢はとても可愛らしく、その見た目と若いながらにして優秀な知性を持つ彼女は、多くの貴族から『社交界の花』と呼ばれているとか。

 そんな令嬢との大恋愛を経て婚約を掴み取ったロートレク。相談役には適しています。


「恋がしたいって言うけどな、お前、今まで誰かを好きになったことはあるのか?」

「ありません」

「即答かよ」


 誰かを好きになったことが無いから、恋愛経験が無いのです。

 当たり前のことなのに、彼は何を言っているのでしょうか?


「はっきり言うぞ。お前は恋愛に向いていない」

「────」

「『そんな馬鹿な』って顔をしないでくれるか?」


 いや、だって、まさかいきなり「向いていない」って言われるとは思わないじゃないですか。

 何を言われるのかなぁ……と、内心わくわくしていた私の期待を返してください。


「だってそうだろ? 今までの悩みを物理で解決してきたお前が、誰かと恋愛をする。お前に相応しいかどうかはともかく、お前についていける男はどこにも居ないだろ」


 ロートレクはそこまで言って、エールを大きくひと飲み。

「つまり、だ」と言葉を続けます。その顔に、僅かな嘲笑を浮かべながら──。


「お前みたいな脳筋ゴリラが恋愛なんて絶対無理だろ(笑)」


 ぷっつーーーーーーーん。


読者「恋愛が主役なのに『ハイファンタジー』ジャンルやんけ」

私「脳筋ゴリラが恋愛できるとでも???」


次回更新は本日19時です。

本作は毎日投稿を予定しております。


『面白い』『続きが気になる』

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