第三話 それぞれの過ごし方
ストックはこれで尽きた…後は気力でどうにかする…投稿。
「はぁ~、美味しかった。 ご馳走さまでした!」
「はい、お粗末様」
ママお手製のオムレツを食べて空腹が満たされた私はもう一度手を合わせた後、程好く膨れ満腹感のあるお腹をさすっていると、ママが話しかけてきた。
「それで明日華、今日は塾があるけどそれまでどうするの?」
「実は咲月ちゃんと香穂ちゃんと一緒に行くことになったから、取り敢えずは部屋でゆっくりしたいかな?」
「あらそうだったの。それじゃあ仕方がないわね」
「なにが?」
今日は学校に行って実質掃除をしただけだったけれど、幾分かの疲れはあったので、塾に行く時間まで部屋で体を休めたかった。そしてそんな私の話を聞いた後のママの言葉が気になった。
「ふふ、秘密。それじゃあ三時になったらリビングに降りてきてね?」
「え~、教えてよ~」
「うふふ、秘密」
「む~う…分かった、じゃあ後でちゃんと教えてよね!」
「ええ、楽しみにしてなさいね?」
その後、幾らママに尋ねてもはぐらかされるだけで、私はママへの追求を諦めて使った食器とコップを流し場に置くとそのままリビングを出て自分の部屋へと戻ると、お腹が一杯だからなのか眠気が襲ってきた。
「ふぁ…ああ。…ちょっと…寝よう」
欠伸をした後、制服を脱いで部屋着に着替え終えるとそのままベットの中へと潜り込み、最後の気力で時計が鳴る時間を二時半にセットしたのを最後に、私は心地の良い眠りへと着いたのだった。
明日華が眠り始めた同時刻。
「‥…んんん~!」
明日華の親友の一人である私、咲月・アルツェルトは自分の部屋で顔を枕に押し付けて悶えていた。その理由は、明日華たちと一緒に塾に行けるからという事だったからだ。
もし知らない人がそれを聞けば、え、その程度の事で?と思うかも知れないけど、お金持ちである私にとってお父さんやお母さん以外で怒ってくれたり、話したりと自然と接してくれる友達は貴重で得難いもの。
そして私と明日華たちとの出会いは、正直言って良いというものではなく、寧ろ悪かったと今の私は感じている。
(あの時の自分を引っ叩きたい…)
明日華と香穂との最初の出会いは最悪で、その当時の私はお金持ちという家の事を理由に色々と友達の物を取ったりとか、悪戯をしたりとかいろいろしていたのだけれどある時、今は明日華と同じく親友である香穂に対して私は筆箱を隠したり、教科書を隠したり等(もちろん、その後ちゃんと元に戻した)をしたのだけれど、その頃には既に香穂と仲の良かった明日華が香穂の代わりに怒って、思いっきり私の頬を叩いた。
「な‥‥なにするのよ!?」
「いたずらで人の物を隠したりして、一体何処か楽しいのよ!」
「ア、アンタに、私の何がわかるって言うのよ!」
「何も言わなければ、分かる訳ないでしょ!」
今までそんな事が無かった私にとって叩かれたという事に対して怒ってしまい明日華と本気で喧嘩を始めてしまい直後に私に悪戯をされた香穂が間に入って私と明日華の喧嘩を止めた事は、いい思い出ででもあると同時に私にとっては忘れたい記憶でもあった。
けど、同時に今はあの時に明日華に出会えて、叩いてもらってよかったと私は思っている。だってお父さんとお母さん以外でちゃんと私を怒ってくれた人は同級生で誰も居なかったのだから。
(本気で怒ってくれて、嬉しかったな…)
そして、大喧嘩から数日に私は香穂にちゃんと謝って、明日華にもちゃんと謝るともうしない事を約束に明日華は許してくれた。その後からは少しづつ二人と話す様になって去年の頃夏前辺りから一緒に宿題とかをやったりして友達になって、夏祭りを一緒に行った辺りから今の親友と呼べるような関係になったのだった。
「早く時間がすぎないかな…」
正直、明日華と香穂に出会う前は塾に行くのは仕方がなく行っていたという感じだったのだけれど、明日華達と友達になって以降、日付は違ってたけど同じ塾に通っていた事が分かって、明日華達が塾に行く曜日を確認して。
塾に行く日を明日華達と同じ曜日にお父さんとお母さんにお願いして変えてもらって以降は、一緒の日に塾に行って一緒に勉強していたのだけれど、一緒に行くっていうのはなんやかんやと初めてのことだった。だからこそ今の私は興奮と緊張、半々の状態でやけに時間が過ぎるのが遅く感じて一緒に行く約束をした五時までの時間が待ち遠しかった。でも何もしないと言うのもなかなかに退屈だった。なら何か別の事をすればいいのだと思いついた。
「‥そうだ! 退屈ならゲームでもしていればいいじゃない!」
なんで、そんな単純なことを思いつかなかったのかとばかりに私はテレビの電源を着けると同時にキャラも全部出現させた対戦アクションゲームの本体にも電源を入れて、コントローラーを握った事で準備は整った。因みに暇つぶしにゲームをしようと思った一つの理由は退屈だからというのもあったけど、コツはもう一つ、明日華と香穂に勝つための練習という目的もあった。実は以前、家に遊びに来た時に明日華と香穂も一緒にこの対戦アクションゲームをやったけれど、何故か持っていてやり込んでいる私が全敗した。
それはもう不思議なくらいに。だからこそ、今度はリベンジできるようにという秘密の練習という意味もあった。
そうこうしているとキャラクターも選び終わった。私が選んだキャラは接近戦が得意なキャラだ。
「さあ、かかってこい!」
こうして、私の暇つぶしと言う名の自己鍛錬の時間が幕を上げたのだった。
明日華と咲月がそれぞれお昼寝とゲームを始めた同時刻。
「あ~、落ち着く」
「ニャ~」
私、館花香穂は部屋着に着替えた後に昼食も食べ終わって、現在は家の縁側で猫を撫でながらまったりと時間を過ごしていた。そして私の膝の上には愛猫のミャアがゴロゴロと私を見上げながら喉を鳴らして私はミャアの喉を掻いてあげるとミャアは気持ちよさげに目を閉じる。
「気持ちいい?」
「ニャ~」
「ふふ、そっか」
ひとしきり撫でてあげると満足したのか、ミャアは再び私の膝の上で丸くなると寝息をたて始め私は起こさないように優しく背中を撫でながら空を見上げると澄んだ青い空が広がっていて、ふとした時に吹く風は春が近づいて来ている事を感じさせるけれどまだ幾分かの冷たさがあった。でも日の光に当たっている今は寧ろその風は今の私にしてみれば何処か心地が良かった。そして思い出すのは、今から二年前の今日と似たような天気にあった出来事、私が明日華ちゃんと友達になった日の事だ。
「あれから、もう二年も経つんだよね…」
二年前の当時の私は親しい人は居たけど友達と言える人は居なかったけれど、別に私はそんな事は気にしていなかった。そしてそれは一年生の頃からで周りから見ればそれが余計に大人ぶっている様に見えてしまった影響なのか友達はいなかった。
そして、そんな日が続いて三年生もあと少しで終わるという時期でも私はいつも通りに授業が終わった放課後に先生の許可を貰って一人、図書室で本を読んで過ごして、その日もいつも通り私は一人で図書室に入ると借りていた本を返して新しく読む本を探し始めた。
「…今日は、どれにしよう?」
「失礼しま~す」
けど、困ったことに三年間ほぼ図書室に通っていて図書委員の人よりも本の配置を覚えていた私は、困ったことに今日返した本を含めると学校の図書室にある本を全部読んでしまっていて、どうしようかと本気で困っていた。そんな時、コンコンとノックの音が聞こえ普段は私以外開ける事のない図書室のドアが開いて一人の、隣のクラスの女子が入って来た。それが、当時名前も知らない明日華ちゃんとの最初の出会いだった。そして、図書室に入って来た女子は直ぐに本棚の前に居た私に気が付いて話しかけてきた。
「あ、ごめん。邪魔をしちゃったかな?」
「う、ううん。大丈夫。私も本を探していた所だったから…」
「そうなんだ。…あ、それならごめん!私も本を探すのを手伝うから私が探してる本を探すのを手伝ってほしいの!」
「…別にいいけど」
「ありがとう! 実はこんな本を探してるんだけど‥‥あ!」
「な、なに?」
「あ、ごめんね。そう言えば自己紹介をしてなかったのを思い出したの」
「ああ。そういうことね」
実際、図書室の本は読み切ってしまっていて暇だった事もあり私はその女子の本を一緒に探すことにした。そこで女子は何かを思い出したのか声を上げてその声に驚いた私は肩をビクリッと振るわせると、その様子が見えたのか声を上げた女子は申し訳なさそうにそう謝ってきて、声を上げたその理由を聞いて納得しているとその女子は私の方を向いて自己紹介を始めた。
「それじゃあ、改めて。私の名前は朝陽明日華。朝の朝に太陽の陽で朝陽って読んで、名前の明日華の明日は明日っていう漢字で華はちょっと難しい方の華を書いて明日華て読むの。好きな物は甘い物全般で、嫌いな物はセロリかな」
「わ、私は館花、香穂。体育館の館に花の花で館花って読んで名前は香りって漢字に稲穂の穂って書いて香穂って読む。好きな物は甘い物で、嫌いな物は…ピーマン、かな?」
目の前の女子、明日華が自己紹介をして流れ的に私も自己紹介をしない訳にはいかなくなったので私も真似するようにして自己紹介と好きな物と嫌いな物を教えると目の前の女子、朝陽明日華は嬉しそうに笑った。
「へぇ~、香穂ちゃんって言うんだ。いい名前だね!」
「べ、別に普通だよ。寧ろ私の名前よりもあなたの名前の方が良い名前だと思おうよ…?」
「そんな事ないよ。香穂ちゃんの名前もいいよ!」
と、何故か互いを褒めあう様になってしまい、それからしばらく私と明日華は譲る事無くそんな事を話しながらなんでその野菜が苦手なのかという事を話した後、ふと本を探すという目的を思い出して明日華からその本の特徴を聞いて私も一緒に探し始めた。それが、私と明日華ちゃんとの最初の出会いで、その後から少しづつ話す様になって互いの家で遊ぶようになって私と明日華ちゃんは友達になり、一緒の塾に通う様になった。
そして、去年はある変化もあった。それは今では仲が良いけど、当時は私に対して悪戯をしてきていた咲月ちゃんで、悪戯をされても黙っていた私の代わりに怒ってくれた明日華ちゃんと咲月ちゃんが喧嘩をして私が止めに入ったのは今では良い思い出で、今では仲の良い親友と言える友人になっていた。
「‥‥ホント、何が起きるか分からないね‥‥」
学校に入学してからの四年間と明日華ちゃんと出会ってからの今日までの二年間のどちらが楽しいかと言われれば明日華ちゃんと出会う以前の私は迷いなく出会う前の四年を選んだだろう。けど今の私は寧ろ時間はまだ短いけれど今日までの二年間を選ぶだろう。だって、明日華ちゃんと出会ってからの毎日が確かに楽しかったから。
「…はやく、時間がすぎないかな‥‥」
そう呟きながらミャアを撫でながら約束までの時間を私は過ごすのだった。
同時刻。
「うん。材料はこれでいいわね」
娘の明日華が二階に上がり食器などを片付けた後、私、朝陽美花は娘を喜ばせる為のお菓子を作るためのまずオーブンを予熱で温めてその間に材料と必要な器具を用意する。テーブルの上にバターに粉糖、卵黄にバニラエッセンスと小麦粉を並べる。
「さて。始めますか」
まず最初にボウルに常温で戻したバターを泡だて器で滑らかになるまで練り、練ったバターにグラニュー糖をミキサーで細かくして、ふるいにかけて作った粉糖と卵黄を順番に入れて馴染むように混ぜつつバニラエッセンスを適量入れる。
そして小麦粉を二回に分けてふるい入れてヘラで粉っぽさが無くなるまでよく混ぜる。その後は生地を一か所に集めて冷蔵庫の開けていたスペースに入れて冷やす。
「さて、されじゃあもう一つ」
そして、生地が冷えるまでの間に私はもう一つここにあるにもう一つ、薄力粉を加えてもう一つお菓子を作り始める。
まずバター、またはマーガリンをボウルに入れてクリーム状になるまで混ぜ、途中砂糖を加えて白くなるまで混ぜる。そこに卵白を少しづつ加えながらフワフワになるまで混ぜる。混ざったら薄力粉を綺麗にしたふるいで入れ、ヘラでサックリと切るように混ぜてバニラエッセンスもここで加えるて混ぜて、混ぜ終えたのを絞り袋に入れ丸形に絞り出して行く。
「後は、焼くだけっと」
絞り出し終えるとあらかじめ余熱180度に設定していたオーブンに入れて7分程度焼く。その間に洗い物などは済ませテーブルの上を綺麗にすると丁度オーブンが鳴り、オーブンから取り出したそれが冷えればフランスのお菓子であるラング・ド・シャの完成だ。
ラング・ド・シャを作っている間に先ほど冷蔵庫に入れて冷やしていたクッキーの生地が三十分以上たって
いたので、冷蔵庫取り出した生地を丸や菊型、星の型抜きくり抜きオーブンに入れて十分から十五分ほど待つ。もちろんその間に洗い物は出来る限り済ませておく。
(本当は一緒にやりたかったけど、少し疲れて居そうだったし仕方ないわね)
既に先に取り出して冷ましているラング・ド・シャの良い匂いがしているはずなんだけど、降りてこないのは疲れて眠ってしまっているのかもしれなかった。
(それに、友達と一緒に行くのに疲れたままで行かせれないものね)
そんな事を考えながら洗い物を終えるとちょうどいいタイミングでオーブンが鳴り、オーブンから取り出すとクッキーが良い感じに焼けて出来上がっていた。そして時計を見るとそろそろ二時になる時間帯だった。
(そろそろお茶の方も準備した方が良さそうね)
そうして明日華の分のお茶も用意した後、この後娘と一緒に塾に行く香穂ちゃんと咲月ちゃんの分を包み始めて、明日華が起きてきたのはそれから三十分後で、丁度その頃には持って行かせるお菓子を包む作業が終わった頃だった。
仕事の疲れで書く気力が涌きません。
不定期に気晴らしに投稿をしていきます。宜しくお願いします。
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