第一話 夢? それとも
息抜きと思い付きです。…投稿です。
(なに、あれ…)
薄暗い路地で私、朝陽明日華は目の前にいる存在が到底現実にいるとは思えなかった。何故ならそこには、二メートルを越える大きさの蜘蛛がいた。
「SYULULU!」
「ひっ!」
けど、それは確かに現実であると教えるかのように目の前の良く分からない怪物は良く分からない声を上げつつ複眼で私を確かに捉えていて、その恐怖から私はその場を離れる為に必死に走りだした。
それでも走り出しても後ろから聞こえてくるカサカサと言った足音が聞こえなくなることは無く、寧ろ近づいて来ているかのように私には聞こえてきた。それでも足を動かし走る。
「はっ…はっ…はっ!」
息を吸ってもすぐに吐き出される事によって次第に息が上がるのを感じるのと同時に肺が苦しくなり足を止めて酸素を吸い込みたいという衝動にかられるけれど、それを抑え込みながら私は息切れからわずかばかりぼやけた視界の中で何処か身を隠せると場所を探す。と同時に何かある、そんな予感がして興味本位で路地裏に入ったあの時の自分に対して文句の一つでも言いたかったけれど、今はそんな余裕はなく必死に走りながら身を隠せそうな場所を探す。
(あ、あそこなら!)
そして、目の前に一メートル程度のゴミ箱が二つ並んでいて、私は急いで二つあるゴミ箱の内の一つの蓋を開けると中から何とも言えないすえた匂いが鼻を突いたけど、幸い中には何も入っておらず私は急いでゴミ箱の中に塾の鞄を投げ入れると私自身も中に入り蓋を閉じる。
蓋を閉じた事で光はなくなった事で視覚が閉ざされてより一層嗅覚が鋭敏化して匂いがきつくなった気がしたけれど、今はあの良く分からない巨大蜘蛛をやり過ごすことを第一にする為に頑張って気にしない事にして、ひたすら気づかれない事を願った。
(お願い、気づかないで…!)
そして、私がゴミ箱に入って数秒後、カサカサとGを思わせる脚音が私の耳に聞こえてきた。そして私の祈りが通じたのかは分からないけれど、蜘蛛の足音はそのまま私が隠れているゴミ箱を通り過ぎていき、念の為それから少し時間を置いて僅かに蓋を持ち上げて眩しさを我慢しながら光になれた眼で周囲を確認する。
(‥…なにも‥‥居ないよね…?)
直ぐにでも飛び出して来た道を急いで戻りたいという衝動を苦労しながら抑えつつ、慎重に辺りを窺うも、辺りからは一切の音が聞こえてくるという事は無く、私は静かにゴミ箱から抜け出して、思わずホッと息を吐く。
「ふぅ‥‥助かった…ッ!」
しかし息を吐いたのも束の間、私は背筋に今まで感じた事が無いような悪寒が走ると同時に生存本能が警鐘を鳴らし私はその場から受け身を取る事も考えずに前へダイブする。
そして、ダイブしたお陰で直前まで私がいた場所に何かが付着しているのが見えた。それは蜘蛛の巣だった。そしてそれを見た直後、私は地面を擦る様にして着地する。
「あうっ!」
受け身を考えずの前方へのダイブだったので、体のあちらこちらを擦り、膝の辺りからは冷たい感触があった。どうやら擦り剝いてしまい、血が出たようだった。正直に言えば、痛い。
けど今はそれを無視して急いで後ろを見るとそこには先ほど通り過ぎて行ったはずの蜘蛛が上から私の事を見ていた。
それによって分かった。あの蜘蛛は私があそこに気が付いた上でわざわざ一旦離れた様に見せかけ、壁を登り建物の間に糸で巣を作り待ち伏せをして、私が出てきて油断している所を狙って蜘蛛の糸を吐いたのだと。けど、今の私にそんな事は関係なかった。だって、結果的に蜘蛛の巣を避ける事は出来たけれど、その代償として足を怪我してしまいこれで全力で走る事が難しくなってしまった。結果的に見れば完全に私は踊らされ、ピンチだった。けど、私は諦めるつもりは、無かった。
(なにか、なにかない…?)
冷静さを失いパニックになりそうになる頭を必死に落ち着かせながら辺りを探す。けど辺りには先ほど私自身が入っていたゴミ箱が転がるのみで、他には何もなく、路地深くのこの場所に誰かが来るような事等、万に一つの可能性もなかった。それでも、私は諦めたくなく、無意識の内におじいちゃんとおばあちゃんから貰い、常に身に着けているペンダントを力いっぱい、血が出るのではないかと思うほどに握りしめる。
「SYULULULU」
そうしている間に蜘蛛は上の巣より跳躍し地面へと降り立ち、その声は笑っているかのように私には聞こえ、蜘蛛は着実に距離を詰めてきて私もどうにか後ろに後退りするけど立っている蜘蛛と比べてその距離は圧倒的に短く、すぐに蜘蛛は私の目の前へと到達する。目の前に来ると蜘蛛の大きさはより一層に際だち私は死ぬかもしれないという恐怖が心を支配しようとする。けど、私は眼を逸らさなかった。そして蜘蛛は前脚を振り上げる。それは社会の授業で習ったギロチンの様に私には見えた。
「SYAKYAA!」
「…ッ!」
振り下ろされた瞬間、私は思わず恐怖のあまり目を閉じ恐らく気を失ってしまったのだろう、そこから先の記憶は途切れて目が覚めるとベットの上で寝ていた。
「あれ。私‥‥?」
ベットとから体を起こして周りを見ると部屋の入り口近くにあるタンスにその反対にあるクローゼット、その隣には勉強机があり、ここが自分の部屋だという事に間違いはなく、その事から私は思わず夢を見ていたのかなという思いと、でも夢にしてはリアルだったなというモヤモヤを感じながら時計を見ると、時計の時刻は六時五十分を指していた。
「…良かった。これなら待ち合わせに間に合いそう」
今日は終了式で、尚且つ親友と呼べる友人二人と一緒に登校する約束をしていたのだった。ベットから出ると私はパジャマを脱いだ時に夢?でも握っていたおじいちゃんとおばあちゃんから貰ったペンダントがちゃんとある事に安心すると同時にある事に気が付き、思い出すことがあった。
「あの時…」
記憶が途切れるその瞬間、何処か温かい光に包まれた様な気がしたような気がしながらも時間が無い私は
急いで紺色がメインで所々白色と線がある制服に袖を通し、靴下と紺色のスカートを穿くと鞄を持って急いで下のリビングへと降りて行ったのだった。その時はペンダントに着けられた六角柱の水晶が僅かに光を放ったのだけど、私が気が付くことは無かった。一階に降りて私はそのままリビングへと向かい、リビングへの扉を開く。
「おはよう!」
「あら、寝坊だなんて珍しいわね。何時も六時には起きてくるのに起きてこないから起こしに行こうと思ってのよ?」
「ごめんさないママ。…ところでパパと兄さんはもう出ちゃった?」
「ええ。少し前にね。でもいつも朝ご飯を作るのを手伝ってくれる明日華が起きてなかったから二人とも心配していたわよ」
「あははは、実が変な夢を見ちゃって…」
ママとそんな事を話しながら私はテーブルに着くといただきますと手を合わせた用意されていた朝食を食べ始め、私の向かいの椅子にママはコーヒーを持って座る。ママの名前は朝陽美花。
顔立ちは何処か優しさを感じさせ、その容姿は出るとこは出ていて引っ込むところは引っ込んでいて肌の色素は私と同じくやや色白、髪はセミロングで今は一纏めにして肩に流していて色は私が淡い栗色に対して少し黒が混じった色で瞳も髪と同じ色だった。そして娘の私から見てもママは美人と言えた。これで私と兄を産んだ二児の母だと言うのだから改めて驚きだ。
「で、変な夢ってどんな夢?」
「あ、うん。実は‥‥」
幸い時間はまだあったので私は朝食を食べつつママに自分が見た不思議な夢の内容をかいつまんで説明した。夢の中で私は路地に立っていて、そこで大きな蜘蛛を見つけて、そのまま急いで逃げてゴミ箱に逃げ込んで見つかった辺りまでを話し終える頃には朝食を全て食べ終えていて、私は残っていた牛乳を飲み終える。
「っていう感じで、凄くリアルな夢を見ちゃったんだ‥‥ママ?」
「‥‥あ、ごめんなさいね。明日華が見たって言う夢がやけに現実味があったから。つい引き込まれちゃったわ」
「あはは、まあそうだよね‥‥あっ!」
いつのまにか黙っていたママに声を掛けると直ぐに顔を上げて私に謝ってきてその表情は本当に申し訳なさそう謝ってきて、私はそれは仕方ないとばかりに言葉を返した。もし私がママの立場で聞いていればそれがまるで本当の出来事の様に聞こえてきてしまったのだから。とそんな事を思いながら食器を下げて最後の身支度を終えて時計を見れば時計の短針が二十五分を指していたので私は急いで自分の部屋に置いていた鞄を取りにいき、そのまま玄関に行き靴を履いているとママが見送りに来てくれた。
「気を付けていってらっしゃい」
「うん!それじゃあ、いってきま~す!」
ママにそう言って私は玄関のドアを開けて外に出て一旦空を見上げると雲一つない心地よい朝の日差しに目を細めた後、私は待ち合わせの場所であるここから少しの所にある十字交差点へと急いで向かった。
そして少し走ると待ち合わせの場所の十字交差点を挟んで向かい側では私と同じ制服を着て誰かを待っている二人の姿が見えた。
「おはよう~、二人とも~! 待たせてごめんね~!」
「遅~い! 何をしてたのよ!」
「ごめ~ん! 寝坊しちゃったの~!」
「はぁ~!?」
「もう、咲月ちゃん。それ位にしようよ」
「甘い!香穂は甘すぎるのよ!」
「そ、そんな事ないよぅ!」
「いや、甘い!」
走りながら挨拶をすると直ぐに私に気が付いた二人の内の一人、遠くから見ても分かる日差しを受けてキラキラ輝く白銀の髪を肩から腰の間まで伸ばしたストレートセミロングの女の子が少し怒り気味に返事を返してくれたのが咲月・アルツェルトちゃんで、その隣で咲月ちゃんを諫めていて何故か説得されつつも自分の意見を言っているのが館花香穂ちゃんで目の色は髪と同じ黒で髪は一纏めにして朝のままの様にサイドテールにしていた。
そして、そうしている間に赤だった信号は青になり、私はようやく待ち合わせしていた咲月ちゃんと香穂ちゃんと合流する事が出来て、その頃にはすっかり朝の夢の事を私はすっかり忘れてしまっていたのだった。
次話は不定期で投稿していきます。
気長に待って頂けると幸いです。またブックマーク、評価など頂けるとやる気に繋がりますので、宜しくお願いします。