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06

 ラッセルは本当はジャニスを嫁がせるつもりだった。だが、やむを得ない。まさか伯爵家でクレアの情報をつかんでいるとは思ってもみなかった。


 アシュフォード家は代々魔力の強い家系でクレアをつよく望んだ。ジャニスはまたどこか貴族の家を探してやらなければならない。そうでなければテレジアが納得しないだろう。ジャニスは魔力持ちではないので、骨の折れる仕事だ。




 こうしてクレアの婚約は内定した。その後彼女の部屋が屋根裏から二階に移された。ジャニスほど豪華ではなかったが、クレアにとっては十分すぎる広さだった。

 

 いままで週に二、三回水で体を拭ければよい方だったのに、今では毎日湯浴みをしている。そして、教育も受けることになった。勉強、礼儀作法にダンス、厳しい先生が付いた。クレアは必死に学んだ。


 普通の子供ならば泣いてしまうような厳しい授業もクレアにとっては天国のようだった。彼らはテレジアやジャニスのようにクレアをぶったりしないし、できなかったからといって、食事を抜いたりしない。


 そのうち読み書きに不自由しなくなり、魔法学院の試験を受けに行くことになった。しかし、試験を受けると言っても読み書きができれば落ちることはない。ここでは魔力の強さがすべてなのだ。あとは金さえあれば入学を許可してくれる。




 テレジアとジャニスのクレアへの嫌がらせはますますひどくなっていった。部屋へ戻ると、買ってもらったばかりのドレスがびりびりに破られていたり、ノートや教科書がインクで汚されたりするなど日常茶飯事だ。


 その度にテレジアからはだらしがないからと怒られ、父からは何度買いなおしたらすむのだと叱責される。クレアが知らないと言っても誰も信じてくれない。


 「じゃあ、誰がやったというの? まさかジャニスのせいにするつもり。あなた、あの子が美しいからって嫉妬しているのでしょう。母親と一緒でどこまでも性根がくさっているわね。嘘ばっかりつくし、この子ちょっとおかしいわ。貴族と結婚なんてとんでもない。ねえ、ラッセル今すぐ白紙に戻してよ」


 しかし、普段テレジアやジャニスに甘いラッセルもこれだけは譲らなかった。



 彼女たちになじられても、クレアはじっと耐えるしかなかった。

 

 そしてとうとう最悪の事態が起きる。ジャニスに屋敷の階段から突き落とされた。クレアは体をひどくうち、意識を失い病院に運ばれる。そばで見ていた使用人達は誰も助けてくれず、皆、何も見ていなかったと口を閉ざした。


 ラッセルに「なぜ、テレジアやジャニスと上手くやれないのだ。やはり育ちの悪い娘はダメだな。あまり問題を起こすようなら、この縁組は白紙にする」と脅され、クレアは恐怖に震えた。


「この子、ジャニスが突き落としたといったのよ。嘘ばかりつくの。こんな子を貴族の家に嫁がせてもすぐ離縁されるだけよ」


 テレジアが言う。


「それは、問題ない。貴族とのパイプさえ作れればいいんだ。婚約期間を経て無事結婚出来れば、離縁されても構わない。その時は伯爵から慰謝料がわりに屋敷でも貰えばいい」


 ラッセルの言葉にクレアは目の前が真っ暗になった。誰も自分のことを信じてくれない。使い捨ての道具としか思っていない。伯爵家から捨てられたら、自分はどうなってしまうのだろうか。


 しかし、その後、ラッセルは医師に呼ばれ、クレアの体にたくさんのあざと傷があることを知らされた。

 このまま虐待をつづければ、一生あとがのこると……。


 さすがにそれはまずい。


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