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31 変化1

「クレア、今日は魚の食べ方を練習しようね」


 彼はそう言ってにこにこと笑う。

 クレアがマナーに自信がなくて、パンやスープの簡素な食事しかしないことは、もうセスにはバレている。それが彼女がやせ細っている原因のひとつだ。最近昼食の時間が合えば、付ききりでマナーを教えてくれる。ちらちらと刺さる周りの視線が恥ずかしい。セスもクレアなどほうっておいて自分の好きなものを食べればいいのに。


 肉から始まり、今は魚だ。それがマスターできれば、次はロブスターなどの甲殻類だと言っていた。殻の処理が難しいらしい。いつの間にか彼はクレアの礼儀作法の先生のようになっていた。使命感に突き動かされているようで、優雅な淑女の礼なるものも練習させられている。姿勢が悪いとさり気なくセスに直された。


「クレア、君は自分に自信がなくて恥ずかしいだけなのかもしれないけれど、人と目が合ってすぐに俯くというのは、いけないよ。された方は拒絶されたのだと感じてしまう。癖になっているようだから、直そうか」


 セスのその言葉に、クレアは思い当たるふしがあり過ぎてずきりと胸が痛む。


「君は綺麗なんだから自信をもって」


 続く甘い言葉に、頬を染める。彼といるとその言動に振り回され、ぐるぐると目が回りそうだ。



 しかし、そのおかげで、男女別に月に一度行われるマナーの授業でクレアは恥をかかなくなった。そして彼女を馬鹿にしていたはずの侯爵令嬢クリスティーンから、なぜかお褒めの言葉を頂くようになる。


「素晴らしいわ、クレア。立ち姿も見違えるようよ」


 クリスティーンは迫力のある美人で言葉もきついし、最初は怖いと思ったが、うわべで笑って影で悪口を言うタイプではなさそうだ。思ったことをそのままその場で口にする。今のクレアはそういう人の方がほっとした。高飛車だが、育ちがいいせいかどこかおおらかだ。



 セスといるようになって、ケイトから苛められることはなくなった。ときどきカフェテラスで離れた席から睨んでくるだけだ。それになぜかエイミーを見かけることもなくなり、少しほっとしている。

 

 そういえば、ケイトはクリスティーンの取り巻きだったはずだが、最近一緒にいるところを見ない。どうしたのだろう? クレアが行方不明になっている間に派閥争いがあったのだろうか。いずれにしても高位貴族の事情は分からないし、これから先も踏み込むつもりはない。


 エイミーはどんな思いでケイトに加担したのだろう。

 何れにせよ。もう、彼女達とはかかわり合いになりたくない……。


 



 


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[一言] エイミー…かぁ…
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