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今日はあともう一回更新したいかと……。
「まあ、良かったわ。クレアが無事で。私たちとても心配したのよ」
ひと月ぶりの教室に入るとケイトが心配そうな表情を浮かべて、親切そうによってくる。しかし、目は冷たく氷のようだ。その目が、まるで死ねばよかったのにと言っているようで、クレアは身震いした。
なぜ、これほど彼女に恨まれているのだろう。あの森は夜遅くなるとオオカミや魔獣がでると後から聞いた。彼女はクレアを捨てたのではなく、殺すつもりだったのだろうか。
明るく陽の差すカフェテラスで昼休み一人でパンとスープの簡素なランチを取っていると、エイミーがやってきた。彼女はクレアの横で、カモ肉の皮がカリカリに焼かれたステーキを美味しそうに食べる。食欲旺盛なようだ。
「クレア、本当に良かった。心配したのよ。あなたちっとも帰ってこないから。あの後皆で探したのよ」
エイミーがあまりにも心配そうに言うから、あやうく彼女のことばを信じかけてしまった。その言葉と彼女の笑顔に縋りつきたくなるが、そんなことありえない。もとの場所に戻ったら、誰もいなかったのだ。馬車の轍の跡がはっきりと残っていた。クレアはそれを見て絶望したのだから。
エイミー……友達だと思っていたのに、彼女はクレアを裏切った。一生懸命考えないようにしていたのに、クレアの心は張り裂けそうだった。
私のそばに、もう来ないで。
その思いを言葉にするほど、クレアは強くない。
「そうそう、ケイト様の話聞いている?」
「え?」
「ケイト様、生まれた頃から結婚を約束していた人がいたんですって」
なぜ、エイミーはこんな話をしだすのだろう。
「あの日の帰りの馬車で聞いたのだけれど。その家が、領地の飢饉で突然傾いて、急遽商人の娘と婚約することになってしまって、そのお話はなくなってしまったそうよ」
「………」
「領地が隣同士でとても仲が良くて小さな頃から、遊んでいたのだそうよ。ダンスのレッスンもその彼とよくやったって。そうセス様のことなのだけれど。あなた知っていた? ほんとお気の毒な話よね」
クレアは肝が冷えた。エイミーは知っているのだ。クレアが彼の婚約者だと。
「い……いいえ、初めて聞いたわ」
声が震える。そう言うのがやっとだった。これで、なぜケイトから恨まれているのか理由が分かった。だからと言って殺されていいことにはならない。そして、エイミーはなぜクレアを裏切ったのだろう。自問自答したが、答えは出なかった。
結局、最初から自分には友達などいなかったのだろう。




