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01

 クレアはたまたま通りかかった修道士に拾われ、孤児院に預けられることになった。


 雨風がしのげて、食事は一日二回出してもらえる。クレアの生活は随分改善した。しかし、孤児院とはいえただで生活できるわけではない。同じような境遇の子供たちと朝から晩まで修道院の掃除をして過ごした。時には奉仕活動で街の掃除をすることもある。


 風呂はなく、週一回体を水で拭くことが許された。寒い冬は水で体を拭きたくなかったが、規則なのでやらなければならない。規則を破ると食事を抜かれる。


 孤児院の中には、シスターのお気に入りの子供が何人かいて、彼らは特別に菓子がもらえる。皆、シスターに好かれようと必死に媚びていた。


 クレアは興味がなかった。自分が誰にも愛されないと分かっている。父親は誰か知れず、母親には捨てられたのだ。そんな自分が誰かから愛されることなどあるわけがない。母はもう二度とクレアの前には現れないだろう。


 少なくともここではお腹がすいて気が遠くなって倒れるようなことはなく、母に涙が枯れるまでぶたれることもない。


 クレアは孤児院に入って、初めて自分が母に愛されていなかったことを知った。なぜなら、見ず知らずの他人の方が母よりずっと親切だったから。


 少なくともひどく暴力を振るわれることはなくなった。人に愛される子は特別な何かを持っているのだろうか。それともとても良い子だけが愛されるのだろうか。自分が悪い子だから誰も愛してくれないのかもしれない。




 ある日のこと、魔力判定をする役人が孤児院にやってきた。この国では八歳になった子は全員判定を受けることになっている。孤児も例外ではない。

 

 役人に大きな水晶に手をかざすように言われた。なぜ、そんなことをするのか分からない。しかし、クレアは知っている。大人の言うことを素直に聞かなければ、後でひどい目にあわされるのだ。 

 クレアは素直に手をかざした。すると水晶は眩しく光りだしたかと思うと、ガシャンと砕け散った。


 役人たちが驚いて腰をうかす。クレアはぶたれると思って縮こまった。しかし、誰も怒る者はいない。ただ呆然としていただけだ。彼女の魔力は桁違いに高く、測定不能の最高値をたたき出していた。



 だからと言って魔法が使えるわけではない。習わなければ使えるようにはならないのだ。しかし、王立魔法学院はお金がかかる。孤児が通える場所ではなく、クレアは読み書きすらできない。ここの孤児院では教えていないからだ。役人は気の毒そうにクレアを見る。


「貴族の子供だったら、よかったのに。もったいない」


 八歳のクレアにはその意味が分からなかった。魔法でお腹が膨れるのだろうか。貧民の住む町に魔法を操る者はいないし、彼女はこの街から出たことはない。


 クレアには、それがどんなものか想像もつかなかった。風雨をしのげてご飯が食べられれば、十分だ。それが今の彼女のすべてだった。



 しかし、その数日後、彼女に最初の転機が訪れる。




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