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鬱展開、なるべく巻きで更新できればと思っています。夜にもう一度更新予定です。
注:あと数話胸糞パート、苦手な方はバック推奨です!
久しぶりにエイミーと昼食をとった。
「生徒会はどう?」
「仕事が多くて結構大変よ。ぜんぜん勉強する時間が取れないから、成績下がってしまうかも」
そういって肩を落とすクレアに、エイミーが不思議そうな顔をする。
「どうしてそんなに成績を気にするの?」
「退学になったら困るから」
「え?テスト、白紙で出しても退学にはならないわよ」
「それって、どういうこと」
クレアはびっくりした。初めて聞く話だ。
「学費さえ納めれば、退学にならないのよ。魔力さえあれば。もちろんそれが消えれば、ほかの貴族学校にうつらなければならないけれど」
「それならば、どうして皆この学校に通うのかしら、はじめから貴族学校でも……」
「やあね、クレア。ここは名門よ。ここを出れば魔力持ちのお墨付きをもらえるから、いい条件で結婚できるの。だから、みな入りたがるのよ。それに魔力って持っているか持っていないかだから、努力でどうにかなるものでもないでしょ?」
クレアは知らなかった。ラッセルから聞いた話とは違う。しっかり勉強しろと言われた。クレアは大人の言う事には従順になるように子供の頃から躾けられている。逆らうといつでもひどい罰が待っているから。
「真面目に勉強している人なんて、王宮の魔法院に勤めたい人ぐらいよ。あそこは爵位が低くても入れてくれることがあるの。
でもコネのある高位貴族になると中くらいの成績なら、入れるのよ。あなたもしかして魔法院狙っているの? 見たところ婚約もまだのようだし」
クレアは曖昧に微笑し、力なく首をふった。魔法院のことなど今初めて聞いたのだ。何をしている部署なのかも分からない。クレアの情報源はエイミーだけ。
勉強しても意味がないのだろうか。少しむなしくなる。ここで一生懸命勉強して卒業できれば、婚約を破棄されてもどうにかなるものだと思いこんでいた。
ただ、ぼんやりと調合師になりたいと思っている。ひとり静かにポーションをつくり、街で売るのだ。
「そんなことより、結婚相手を探した方がいいわ。私はそのために入ったの。あなたも、婚約者いないのでしょ?」
「え、ええ」
結婚相手と聞いてドキッとした。エイミーはそこに興味があるようで何度かその質問を受けている。しかし、セスには口留めされていた。エイミーに話したら、彼女は皆に喋ってしまうのだろうか。
「まあ、同じ男爵家で探すのが無難かしら、私はそうするつもりだけれど。いつも図書館に閉じこもってばかりじゃあ、相手も見つからないわよ。
パーティに参加しなくちゃ。そうそう、私、ケイト様に誘われて、来月学院の北にあるアスワンの森にハイキングに行く予定なの。楽しみだわ。馬車も食事も全部ラッシュ家で準備してくれるそうよ。手ぶらでいらっしゃいと言われたの。」
エイミーはウキウキした様子で言う。クレアは一度もパーティに参加したことがないし、誘われたこともない。ハイキングとはどんなものなのだろう。想像しても分からない。それが何かエイミーに聞くのもためらわれた。
それにしても、エイミーは、いつの間にケイトと親しくなったのだろう。
「それと、これは耳に入れておいた方がいいと思うから言うけど。あなた、3年のマクミラン様と時々一緒にいるの?」
「え、いえ……ときどき生徒会の仕事手伝ってくださっているだけよ。一緒にいるなんてそんな……」
クレアは俯いて赤くなる。狼狽えて首をふった。彼の名前を聞くだけでなぜかどきどきする。今日も生徒会室で会えるだろうか。
「そう、噂になっているわよ。クレアが狙っているって。彼はとても人気があるの。気を付けた方がいいわよ。そのうち目をつけられるから。
それから、生徒会長のアーサー様ともあなたがよく話しているって聞いたのだけど、どうなの?」
「え……アーサー様はお仕事を指示されるだけで、お話したことはないわ。そうね、あなたの言う通り気をつける」
(いったいどんな噂をするというのだろう。マクミラン様は親切だけれど、それは誰に対しても同じで、私なんて相手にしない。それにアーサー様に至っては、継母のテレジアのように人使いがあらくて命令するだけだ)
エイミーは「じゃあ、私これから、課題やらなくちゃならないから」と慌ただしく去って行った。楽しいけれど、少し息苦しい毎日。
私は空気にならなくてはならない。




