クソみたいな物語
ガキの頃、親父は仕事にも行かず、家でいつも酒を飲み、お袋や俺に手を上げる、ただのクソ親父だった。お袋と俺は、そんな親父からの暴力にいつも怯えていた。
ある時、親父は酔った勢いでお袋を殴りまくって殺した。俺は子供ながらに親父が許せなかった。だから台所にある包丁でクソ親父を殺した。
俺は警察に捕まった。いや、当時俺はガキだったから、補導されたと言ったほうが正しいか。そして俺は少年院に入った。しばらくして、何年経ったか知らないが、俺は少年院を出て、仕事についた。しかし、他の奴らは、俺の過去の過ちを知ると、俺に対して冷たくなった。やがて俺は仕事を首になった。どの仕事についても、その繰り返し。いちいち仕事を探さなきゃいけない。金なんてない。そのとき俺は悟った。俺は自らの過ちから一生逃れることはできないと。キリストが十字架を背負って歩かされたように、俺も自分の罪を一生背負って生きていかなきゃいけないんだと。
そんな時、俺はある人に出会った。その人は、いわゆる殺し屋だった。「誰々を殺してください」という依頼を受けて、その人を殺し、お金を受けとる、そんな商売をしている人だった。
俺はその人が率いる組織に入り、殺しの技術を叩きこまれた。やがて俺はその人と共に仕事をするようになった。仕事の対象は、家族に暴力を奮う親、学校でいじめている子供や教師、会社でいわゆるパワハラをやっている奴ら、闇社会のドン、汚職政治家など、何かしら悪事を働いている、親父みたいなクソ野郎ばかりだった。そいつらを始末していくのは、とても気持ちがよかった。いわゆる正義の味方になれたような気持ちだった。
しかし、組織に裏切り者が出た。あの人はそいつのせいで亡くなった。俺はいままであの人に教わったことを生かして、その裏切り者を殺した。この時俺は悟った。この世界はクソであふれかえっている。いや、この世界自体がクソなんだと。
組織をなくした俺は、一人で独立して仕事をするしかなかった。ある時俺は、仕事の最中に罠にはまり、命を落とした。まだ一人で戦うほどの実力がついていなかったようだ。
ああ、クソみたいな始まり方、クソみたいな続き方、そしてクソみたいな結末。俺の存在も、人生も、この世界も、全てがクソだった。