お金持ち、撃たれる
車を走らせる。街の明かりが流れていく。
「順風満帆だ」
一切の不安もない。眠るときは次の日が来るのを待ち望んでいる。
これも商売が順調だからに他ならない。
まあ商売と言っても、他人に言えるようなものではないのだが。
法律のグレーゾーンをかいくぐるようなことばかりしている。
だが確実に資産は増えていく。金が金を呼ぶ。借金で雪だるま式に増えていくと言われるが、資産もまた雪だるま式に増えていく。
「くふっ……笑いがこぼれるな」
足に少し気分を乗せる。周りの景色がさらに加速して流れていく。
気分の良さと相まって、柄にもなく鼻歌を歌いながら家路へとついた。
自宅のガレージに車を停め、車から出る。
「ん……?」
普段見ない車が停まって――と、思った瞬間だった。
空いた車の窓から光が数回、瞬いた。
「がぁっ……はぁ、はぁ」
腹部に激痛が走る。痛む所を触ると手には大量の血が付いた。
車に乗った人物の顔を見ようとしたが、エンジン音とタイヤの焦げた匂いを残すのみだった。
「はぁ、はぁ……くそっ、くそっ……!」
痛みで視界がゆがむ。
とにかく助けを呼ぶため、電話を手に取るが手元がおぼつかない。
救急車――と思って電話を掛けたが間違って警察に電話をかけてしまった。
とにかく自分がいる場所と何者かの襲撃を受けたこと、電話をかけなおして救急車を自分で呼ぶことが難しいことを伝えた。
電話を切ることもせず、そのまま力なく地面に全ての体重を預けた。
痛みが段々薄れてきた。体が熱い。銃で撃たれたのだろうか。誰から襲撃を受けたのだろうか。心当たりはある。俺のやり方が悪かった。恨まれるようなやり方をしてしまった。
徐々に視界が狭まってきた。思考もまとまらない。
少しだけ寝よう。
次の日は来るのだろうか。
不安の中、俺は暗闇へと意識を落としていった。