生きし屍
彼は落ち度がないように生きてきた。
それはとても悲しい生き方だった。
少年時代、彼は孤独であった。
両親の趣味は他人の粗探しであったため、少しでも落ち度があればすぐさま餌食となり、怒りを買うこととなった。
やがて怒りは暴行へと形を変え、幼い彼を襲った。
毎日の暴力で変色し、皮膚の剥がれた醜い身体を同級生は拒み、彼は他所でも一人だった。
そんな彼を教師もまた面倒な問題の一つとして扱い、彼には救いを求める先すらもない。
そのうち、彼は気が付いた。
自分に悪い点があるからこんな目に合うのだと。
そして彼は変わった。
人の怒りを買わぬよう努めて生きた。
日の流れと共に彼の肌からは傷が消えていった。
しかし、同時に彼は己を殺してしまった。
今も尚、彼は一人、人の顔色を見て生きている。
いや、そう錯覚している。